2009年9月29日火曜日

中国人が名前を変える本当の理由はグローバル化

日本人ならば、中国人に対して、誰もが何となく疑問に思っていることがあります。それは、中国人の「名前」です。どういうことでしょうか?

じつは、ロンドンビジネススクールはそれほど中国人が多いわけではないのですが、クラスメイトの名前をあげてみると:

ヘンリー、ウィリアム、ウィルソン、ソフィー、マイケル・・・・

これ、全員、中国人の名前です。これらの名前だけ聞くと、一体どこの国の人の名前かと思うのですが、そう、中国人がこう名乗るんです。

彼らは、親から授かった名前とは、全く異なる、もしくはかろうじて発音が似ていると思われる、ネイティブの名前、それもとびっきりポピュラーな名前にさくっと変えているということなのです。

個人的には、ヘンリーやウィリアムから勝手に日本人的に創造する顔のイメージとは、かけ離れた本人を見るつけ、一体なぜなんだろうかとふつふつと思うわけです。

しまいには、twkも何で名前を変えないのか、といわれるわけです。私の名前は、Tadahiroなので、そうだ、Heroがいい、そう言われるわけです。

これは、一体、なぜなんでしょうか?何人かにぶっちゃけて聞くと、どれも同じ答えが返ってきます。

それは、ずばり、「就職」のためなのです。

すなわち、中国人の本名はきわめて、発音がむずかしてくて、覚えにくい。また、表記と発音がとても異なる。たとえば、Xiaで、「シャ」と発音したり。

就職、転職の際、履歴書やカバーレターに、こうした複雑怪奇な名前を書いても、スキップされて、全く呼ばれなくなってしまうというのです。であるならば、それこそ、誰でも知っている、分かりやすい名前に改名してしまえ、ということらしいのです。

わかりやすさ。それが目的なために、マイケルだとか、そういった超シンプル、かつ誰もが知っている名前に振り子を振るわけですね。

でも、そこまで、極端にやらなくても、たとえば、表記が難しいならば、それを緩和したらどうだろう?たとえば、Xiaをシャと発音するのが難しいから、いっそのことShaと表記したらどうだろう?

そう提案すると、いやいや、Shaだと発音が全く違うから、ダメなんだという。このあたりの微妙な発音の変化は許せないみたい。

世界どこへ行っても会うことのできる中国人。彼らが生きていくための術、知恵、ノウハウが、シンプルネームへの改名へと駆り立てる、というわけです。やはり、物事は、シンプルが一番、ここでもシンプルの法則にのっているということでしょうか。

ウィンザー城の勇姿

ウォータールー駅から小1時間ほどでウィンザー城へ。要塞として建造されただけあって、外壁はとても勇ましい。"王族"のものだけあって、敷地はバカ広いし、内装は豪華絢爛。その並々ならぬ迫力と威圧感は、やはり多くの観光客を魅了しているだけあります。

それは、王の威厳、権力、権限を誇示する役割もあるのであって、その徹底ぶりは、合理性を越えているとしかいいようがない。室内は、写真禁止なので、ここにアップすることはできないのですが、何が何だか分からなくなるほどの迷宮、それも激しく絢爛な部屋の一群になっているのです。

そしてだからこそ、逆に、今のようなある程度合理性が求められる、資本主義をベースにしたこの現代社会においては、この手の傑出物は、もう生まれにくいだろうなあと思ってしまう。そう考えると、この資本主義というのは、人間の可能性にキャップをはめてしまっている面もあるのだろうとも思えてきます。





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2009年9月27日日曜日

世界の小売りから学ぶ「何気ない斬新さ」

何気ないんだけど、日本人からみるとすごい斬新。海外にいると、そんなアイディアにけっこう出くわすものです。そんな出会いのたびに、凝り固まっていた思考回路を柔らかくしてくれるようで、とても楽しい。そう、何気ないんだけど、現地の人にしてみたら、当たり前なんでしょうけれど、新鮮だったり、意外だったり。そんなアイディアをいくつかご紹介です。

マクドナルドとコンビニの真ん中を狙ったポジショニング

この写真は、なにやさんでしょうか?

その答えは、セブンイレブンなのです。そう、スウェーデンのストックホルム中央駅付近によったセブンイレブンです。でも、レジがコンビニのように見えないところがミソ。レジ周りは、まるでマクドナルドのようなのです。コーラ、ポテト、サンドウィッチなどのセットメニューがずらりとならび、まさにマックお得意のやり方。一方で、店内はもちろん、所狭しと商品が並ぶコンビニそのもの。

まさに、日本のセブンイレブンとマクドナルドを足して2で割ったというよりは、がっちゃんこしました、という感じなのが斬新。何も全く新しいものを創造しているわけではないのですが、既存のモノを組み合わせる妙というか、そんなところが素敵です。日本では、小売りのカテゴリー、ジャンル、形態は、ここ何年も変わってないですが、こんなアイディアを見るにつけ、まだまだ小売りのイノベーションってありそうと予感するわけです。



コンビニとスーパーを同居させる

次は、このブログでもよく出てくる我が家近所の大型スーパーWaitrose。これも、何の変哲のない話しです。どういうことでしょか?

店の入り口をくぐり、右側にいくと、次の写真の光景が広がります。



そう、コンビニなのです。サンドウィッチ、弁当(寿司も売っている!まずいけど・・・)、小さめのスナック、などなどがところ狭しと並び、小さめのレジで顧客を待ち受けるわけです。

ところが、店の左側に入っていくと、こちらがメインなのですが、そう、まさに大型の食料品スーパーなのです。どこまでもどこまでも、食品が並んでいます。


話しとしては簡単で、食品スーパーの一角をコンビニっぽくした、ということなのです。そして、それ用のレジを別に仕立ててあるわけです。一角にあるコンビニはそもそも、食品スーパーとして入荷した商品を再編成しただけなので、そんなお金もかからないはずです。

とはいえ、そのインパクトは大きい。なんといっても,コンビニ的客層をスーパーの顧客に重ねて吸引できてしまうのですから。スーパーに行って、大量に買い物するまでもない、そんなニーズをこのちょっとした一角コンビニが拾っているといえます。


なんとも簡単即席ATMマシン

もうひとつ、このスーパーの話しを続けましょう。私がはじめて、このスーパーに買い物に行ったとき、レジでこう言われました。

店員: "Any Cash Back?"

私: (キャッシュを戻してくれる?ってこと?・・・・これはどういうことだ?)

と、私は混乱したわけです。

どういうことなのか?

タネあかしをすると、この店員は、人力ATMマシーンだったのです。そこで、「はい、20ポンドください」といえば、デビットカード決済する際、買い物代金に20ポンド上乗せしてくれ、そして20ポンドのキャッシュをレジから取り出して渡してくれるのです。

はたからみたら、なんであの人は買い物をしてお金を払わなければいけないはずなのに、お金をもらっているんだ?となるでしょう。

日本では、セブン銀行をはじめ、多くの設備投資をもとにコンビニATMが普及していますが、これは既存のインフラを最大限活用して、いとも簡単に人力ATMを実現したというわけです。

週に何度も買い物をする主婦などは、この仕組みさえあれば、もう本当のATMに行かなくてOK、ということになります。



今日の学び:既存のモノの組み合わせや活用を考える

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2009年9月25日金曜日

格好良すぎるTOWER BRIDGE

ロンドンのテムズ河に架かる橋の中でも、ダントツに有名なのがタワーブリッジでしょう。今日は、久々にロンドン市内散策をし、改めてタワーブリッジのかっこよさをたっぷりと堪能しました。その佇まい、威厳、バランス。タワーブリッジは、とにかく、格好良い。


ゴシック調の両塔をはさんだ悠然とした橋は、ロンドンの青い空に見事に溶け込んでいると同時に、その存在感を凛と私たちに誇示しているかのよう。誰もが、テムズ河のほとりで、しばしこの橋を醸し出す見事なハーモニーに見入っているのもうなずけます。


この橋を心ゆくまで楽しむならば、テムズ河沿岸にあるレストランで食事をしよう。ひとつオススメなのがDim-T。ここは、センスのよい店内で、点心を楽しむことができるのです。点心が西洋化しすぎているのはご愛嬌。夜は、ライトアップされたタワーブリッジを見つつ、ロマンチックな雰囲気に包まれるのでしょう。


橋を渡れば、目前に迫る二つの塔を感じ取ることができます。そして、青と白の骨太な鉄橋を間近にみることで、ああ、この色のおかげでタワーブリッジは、ロンドンの青空を最高の背景にできるわけだと気付く。

そして、橋から見える風景は、ロンドンのモダンな近代的な建物と、歴史的な建物の双方を同時に俯瞰することができ、そのコントラストを楽しむことのできる最高の場所でもあります。




タワーブリッジが教えてくれること:
ハーモニーとコントラスト

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2009年9月20日日曜日

輝くためには(その1)

日本に先日帰国した折に、ひとつの勉強会を開催しました。そのテーマは、“一人一人が企業で輝くためには、どうしたらいいのだろうか”というもの。フィンランドを旅行してからというもの、このテーマで議論しなければいけない、そんな切迫感にも似た気持ちがこみ上げてきていたのです。

日本、アメリカ、イギリス、イタリア、フィンランド。この4カ国を一人当りGDP順に並べるとどうなるでしょうか?一人当りGDPとは、いってみれば、一人当りの産み出している富であり、豊かさの指数として使われます。勉強会でも、このクイズを出したのですが、じつは正確に答えられた方はいませんでした。そう、難しいのです。

2007年の最新の統計によると、1位がフィンランド(46,518ドル)。さすが、北欧パワーをみせつけられます。2位がイギリス(46,121ドル)。次はどこでしょうか?日本?いえいえ、次は、アメリカ(45,489ドル)。次は日本?イタリアよりは多いでしょう。いえいえ。次はイタリア(35,430ドル)で、最後が日本(34,326ドル)。参考までに次がスペインです。金融危機によって、為替等の多少の変化はあれど、ザッとこんな感じです。

みなさんのもっている感覚とこの順位は一致しているでしょうか?そう、先進国の中で、全然、豊かな方ではないことに気付かされるのです。

フィンランドはといえば、フィンランド豊かさのメソッド (集英社新書、堀内 都喜子著)でも紹介されているように:

平均的なフィンランドの人々は夕方4時になると仕事を終えサッサと家に帰る。
土日は基本的に仕事をしない。
社会人でも夏休みは4週間以上とっている。
日本では「ゆとり教育」が問題になっているが、同国の学校の授業数は日本よりもはるかに少なく、塾もない。

一方、日本といえば、みなあくせく働いている割りには、年収300万時代、フリーター、ニート、減収減益、高齢化などといいニュースが聞こえてこない。

この差は一体何なのか?こんな勤勉でまじめな国民が、なぜ一人当りGDP低下の一途を辿っているのか?なぜ?そんな素朴な疑問がふつふつと浮かび上がるわけです。

この問題意識を持っていた折に、London Business SchoolのLynda Gratton教授の主張が目にとまったのです。彼女曰く、企業にHot Spot(アツイ場)をつくり、一人一人がGlow(輝く)環境をつくることが、今求められているというのです。


ここで紹介されているフランクとフレッドの逸話はとても面白い。英語は平易で分かりやすいので、ぜひどうぞ。

たしかに、今の日本では、Gratton教授がいうところの、Hot SpotやGlowできる環境というのは減ってきているのかもしれない。経済が成熟してしまい、プロジェクトX的な熱くなれる場所、燃えることのできる場所が減っているのかもしれない。

もしそうだとすると、輝くために、個々人ができること、企業ができることがあるというGratton教授の主張は、日本にとって、大きな意義をもつことになるような気がするのです。彼女は、壮大なことを主張しているわけではなく、ごくごく「そうだよね」と思えることを言っていますが、その内容はまた今度。(続く)

2009年9月19日土曜日

マーケティング理論が企業変革に使える本質

マーケティングも、企業変革も、結局は「人の行動を変える」ということ。マーケティングは、消費者に自社の商品を買ってもらうための一連の企業活動のことですから、言い換えれば、買うという行動を引き起こすこと、と言えます。

ターゲティング、セグメンテーション、ポジショニングや、各種のコミュニケーションなどは、行き着くところ、顧客に商品を買ってもらう、その行動をとってもらうため、といえるわけです。

企業変革はどうでしょうか?環境が変化して、企業のビジネスモデルを抜本的に変えなければいけない。そういう状況下で、社員には今までとは違うことをしてもらわないといけない。すなわち、社員が行動を変えていく必要があるわけです。

マーケティングもより多くの人を動かしたらカチ。企業変革も一部の社員だけが新しい戦略に即して行動を変えるだけでは全く話しにならなくて、全社一丸となった行動の変更が必要になってくるという意味でも本質は全く同じです。

という本質的な共通点に気付くと、マーケティングの考え方も企業の変革に大いに役に立つといえます。

British AirwaysのSimon Talling-Smith氏は、LBSでのスピーチで、まさにこの点について具体的に触れていました。彼は、イギリスのフラッグシップキャリアである巨艦British Airwaysで、“e化”を成功裏に進めた人物。

インターネットを通じたチケットの申し込み率100%というチャレンジングな目標を掲げ、官僚制の権化のような会社で、多くの抵抗に合いながらも、e化の取り組みを進めていきました。

そのときに、Simon Talling-Smith氏が肌身をもって感じたのが、マーケティングで有名な“イノベーションの理論”だというのです。

イノベーションの理論とは:
http://www.jmrlsi.co.jp/mdb/yougo/my02/my0219.htmlより)

イノベーター理論とは1962年に米・スタンフォード大学の社会学者、エベレット・M・ロジャース教授(Everett M. Rogers)が提唱したイノベーション普及に関する理論で、商品購入の態度を新商品購入の早い順に五つに分類したものです。

イノベーター(Innovators:革新者):
冒険心にあふれ、新しいものを進んで採用する人。市場全体の2.5%。

アーリーアダプター(Early Adopters:初期採用者):
流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断する人。他の消費層への影響力が大きく、オピニオンリーダーとも呼ばれる。市場全体の13.5%。

アーリーマジョリティ(Early Majority:前期追随者):
比較的慎重派な人。平均より早くに新しいものを取り入れる。ブリッジピープルとも呼ばれる。市場全体の34.0%。

レイトマジョリティ(Late Majority:後期追随者):
比較的懐疑的な人。周囲の大多数が試している場面を見てから同じ選択をする。フォロワーズとも呼ばれる。市場全体の34.0%。

ラガード(Laggards:遅滞者):
最も保守的な人。流行や世の中の動きに関心が薄い。イノベーションが伝統になるまで採用しない。伝統主義者とも訳される。市場全体の16.0%。


イノベーションの理論で、アーリーアダプターを重視する考え方があります。というのも、彼らを取り込むことによって、そして彼らが商品に満足してくれたならば、彼らが他の消費者に影響力を行使して、さらに商品の普及が進むから。

Simon Talling-Smith氏が言うには、これはまさに変革するときにも忘れてはいけないというのです。

  • 企業変革の際、社員の巻き込みは必須。そのときに、アーリーアダプターをまず巻き込め。アーリーアダプターを味方につけることができたら、彼らは周りの社員ももっと巻き込んでくれる
  • ダメなのは、すでに変革を十分に理解してくれているイノベーターに働きかけてしまうこと。彼らと話すのは心地よいが、もうすでに理解してくれているのだから、働きかけるだけ労力のムダ
  • もう一つ犯してしまう失敗は、抵抗してくる社員を説得するのに、必要以上に労力を割いてしまうケース。彼らは、イノベーション理論でいうところの、ラガードで、変革の初期のときに説得しようとしても難しい。

これは、重要なことを言っていますよね。まさにその通りで、コンサルティングの実際においても、一体だれを巻き込んでいくか、そしてそのシンパをどのように増やしていくか、これが肝だったりするわけです。

マーケティングも企業変革も「人」を扱うことには変わりはないということがよく分かります。MBA的な科目は、マーケティング、リーダーシップ、ファイナンス、などと縦割りで教えていきます。しかし、その科目たちの底流にある、有機的なつながりこそに、本来のマネジメントの本質があるように思います。そのつながりは、私たち自身が自分なりに抽出し、身につけていかなければいけない、そんな風に思います。

2009年9月14日月曜日

遠隔教育の老舗、Open Universityで若者急増中!

ここのブログでも何度も書いているように、教育の方法は、ただ単に教室で先生の話を聞くだけのものでなく、もっともっと多様になっていいと思う。

これは、e-learningが対面の教授法より勝るというのではなく、いろんな手段を駆使した方がいいよね、という話しです。

たとえば、移動する手段は、それこそ「徒歩」「自転車」「自動車」「新幹線」「飛行機」などと様々。

ここで、飛行機の方が新幹線より速いから飛行機の方が優れている、という議論がナンセンスであるように、どの教育手段が優れているかという議論はけっこう不毛で、むしろ、目的達成に向けて多様な手段を試してみる、ということに価値があるのではないかと思うのです。

そこで、このニュース。
Open University sees surge in younger students
http://www3.open.ac.uk/media/fullstory.aspx?id=16754

イギリスの遠隔教育の老舗でありかつパイオニアであるオープン大学で、若者の学生が急増しているというのです。これこそ、まさに、新しい教育方法が普及しつつあることの証左なのではないでしょうか。

オープン大学は、イギリスの国が支援している大学で、その生徒数はなんと20万人を越す大規模のもの。遠隔教育のメリットを生かして、働きながらの学生が7割ほど。

また、驚くことに、教育品質ももの凄く高い。高等教育品質機関(Quality Assurance Agency for Higher Education)からはExcellentと評価され、学生満足度でも過去2度も1位を取得しているほどのロイヤリティの高さ。

そして、ニュースというのは、18歳から21歳のフレッシュな大学生の入学が増えてきているのがトレンドで、とくに去年はそれが顕著で3割以上の上昇であったというのです。これはすごいことです。

もちろん、財務的なサポートがあるから、安くすむからオープン大学に来るというのはあります。また、リーマンショックによって職がないから、大学に流れているという話しも分かります。

しかし、だからといって、ここ最近の“上昇トレンド”を説明していることにはなりません。

私は、これはひとつの転換点を示す現象なのではないかと思っています。

私たちが大学というと、物理的なキャンパスに行って、学生と交流して、しゃべって、ときにははじけて、というのを想定しますが、じつはそういう世界観をもたない学生が増えてきている、その現象の現れ!ということです。

新しい価値観をもつ学生が出現して、新しい教育方法への受容性が高まってきています。

そういう視点でこのニュースは重要です。

2009年9月13日日曜日

ロンドン庭巡り;Hampton Court

Hampton Court Palace.

ロンドンのウォータールー駅から鉄道で30分ほど行ったところに、この巨大な宮殿があります。すっかりとロンドンの「庭」にはまっているtwk一家の本日の行き先は、Hampton Court Palace。庭園巡りはまだまだ続きます!

もともとHampton Courtは、トマス・ウルジー枢機卿のものだったそうですが、時の国王ヘンリー八世がそのあまりの美しさに魅了し、そして嫉妬し、果てには彼から奪い取って、自分の住居にしてしまったほどのパレス。さて、そこまで人間を狂わせたHampton Court Palaceとはいかほどのものなのか。

宮殿。これは東側のファサード。

南側に広がるどでかい池、湖?

手入れの行き届いた小さな庭園がそこらかしこに。まさに庭園に囲まれた宮殿とはこのこと。

宮殿内の王室の寝室-ではなく、着替えの間。

++

欲しいモノを何としても手に入れる人間の欲とはスゴイものです。

昔、「欲しいと思って手に入らないモノはない。手に入らないのは、本当に欲しいと思ってないからだ」と聞いたがありますが、人間の欲のパワーに改めて恐れ入るともに、我々もこのパワーと上手に付き合って、豊かな人生を築いていきたいですね。

ディケンズは、庶民のヒーロー


<ディケンズの家の入り口。>

日本でも「クリスマスキャロル」などの著作で有名なディケンズの住んでいた家が近所にあります。普通の住居と見分けがつかないくらい、看板のなければ、道標もないけれど、よく見ると、「ディケンズの家」と書いてある。他人の家ではないだろうな、とおそるおそる思いながら、ベルを鳴らすと、ドアが開き、通路の奥に小さなディケンズストアを見ることで、「ああ、ここでよかったんだ」と思うわけです。

さて、このディケンズ氏は、1800年代の産業革命とともに、大衆から支持されて、一世風靡した作家です。じつは、その理由は、もちろん、その作風が庶民の心を掴んでいたというのもあると思いますが、ディケンズ氏そのものヒーローストーリーによるところも多いと思います。すなわち、作者力とでもいうのか、そのディケンズの経歴そのものが浮き沈みが激しく、彼が紡ぎ出すストーリーに鮮やかさを添えていると、そんな風に思うんです。

ディケンズは、もともとは、中流階級の生まれですが、父親のビジネスの失敗により、どんどんと生活は困窮していくわけです。ディケンズの家で見ることができるショートビデオでも紹介されますが、家を転々とし、その度に家の広さが狭くなっていく。しまいには、借金の背負いすぎで、父親は罪に問われ家族で牢獄生活をするというところまで落ちるわけです。ディケンズは、その少年時代をロンドンの裏路地で、街の闇を見ながら過ごしていくわけです。

そんなディケンズも、新聞記者として活躍し、そして小説を執筆することで、イギリスの表舞台に返り咲いていく様は、当時の一般大衆、庶民には大きな励みになったのではないかと思うわけです。もちろん、地獄を見た経験から大衆生活を見事に描き出したコンテンツ力もすごかったと思いますが、ディケンズ自身がある意味で大衆のヒーローであったのではないかと思います。

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<ディケンズの家。地下の書庫>

ブレークしているモノには、そのモノ自体がもっているコンテンツ力に加えて、そのコンテンツ力を増幅させるストーリーが伴っていることが実に多いものです。

王立植物園で楽しむロンドン休日

Hampstead Heathに続き、この王立植物園もただ者ではない。ロンドンから地下鉄で30分ほどのところに、通称Kew Gardenと呼ばれる王立の植物園があります。

もともとは、テュークスベリーのケープル卿の庭だそうで、庭にしては広すぎる100ヘクタール以上(東京ドーム25個くらい?)。その後、いろいろな顛末を経ながら、国立の植物園へとなっていったようです。

植物園とはいえ、ちゃんとした研究施設でもあり、植民地からもってきた植物の研究、それらの品種改良をせっせとやっていたのがここ。そう、やはり大英帝国だけのことあって、世界中を制覇して、世界中から植物をとってきて、それを最高の技術でもって、この庭に植えまくったのがキューガーデンというわけです。

その伝統を大英博物館と同じく、今でもきちんと引き継ぎ、それこそ莫大な数の植物と花を楽しむことができます。 ユネスコ世界遺産。

   植物館が敷地内にいくつか点在。


緑の芝と青の空のコントラストが鮮やか

マニアックにコケそれぞれに細かく名前が。さすが植物研究機関!

過去の蓄積を生かし、そして世界有数の研究機関とも活躍し、それでいて市民にもこうした「植物園」という形でその便益を提供しているこのコンセプトがなんだか新鮮で、そして心地よく感じられた日でした。
やはり、ロンドンは、“園”に強いようです。まだまだ訪れるべきところはたくさんありそうです。地道に回っていきながら、イギリスらしい庭園を味わっていこうと思います。
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2009年9月11日金曜日

ロンドンにある巨大な荒野、Hampstead Heath

Russell Squareからバス168で北へ15分ほどゆくと、そこは、Hamsteadと呼ばれる閑静な住宅街です。そこには、twk Jr.と年頃の同じ子どもをもつスペイン人家族が住んでいて、「我が家の近くには、子どもも楽しめる森があるからおいでよ」と誘われて、行ってみることに。 Forestというから、何と大袈裟な、と思っていたのですが、ロンドンにあったのですよ、森が。これはびっくりしました。

Hampsteadの表通りを、通り抜けると、 その“森”と呼ばれる、Hamstead Heathに足を踏み入れることになります。

そう、そこには、広大な原野が広がっているのでした。じつに、東京ドーム70個分!の敷地を誇るHamstead Heath。ここは、長らく歩いた果てについた丘の上。遠くに見えている建物は、金融センター、シティの一群です。

何ら制約もないところを、思う存分駆け巡る子どもたち。転んだり、虫を見つけて騒いだり、ボール遊びをしたりと、精根尽き果てるまで遊んでいました。オトナたちもジョギングしたり、ピクニックしたり、カップルはのんびりとデートしたりと、おもいおもいに時間を過ごしているようでした。



Hamsteadの住宅街にあるパブ。けっこういいみたいだ。それにしても、このあたりの住宅は、かなり富裕層が住んでいる佇まい。シティで稼ぐようなビジネスマンなどがここらに住んでいる模様。どの家も威厳がありながらも、中はモダンな内装になっていて、その中を誇らしげに外に見せている家もたくさんあって、まるでショールームのよう。

おそるべし、Hamstead Heath。
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2009年9月10日木曜日

バカ受けの日本レストラン、Hare & Tortoise

Hare & Tortoise。

それは、近所のショッピングセンターのかどにある和食系レストラン。



Always very busy and usually a long queue seen outside, underlying great value and popularity of our dishes.

Open 7 days a week,
Mon to Sun 12noon to 11:00pm
11-13 The Brunswick, London WC1N 1AF
Tel: 020 7278 9799

(HPより)

と自ら宣伝文句に書ききるほど、たしかに、平日、休日を問わず、昼と夜のピーク時は、行列ができるレストランと化しているのです。

このロンドンで、ここまで繁盛している和食系レストランは、見たことがありません。というか、和に限らず、ここまで繁盛しているレストランは、見たことがない、と言い切ってもいいかもしれません。ピークの時間帯は、いつも混んでいます。(じつは、テイクアウェイもできるので、混んでいるときはこれが便利。電話して予約しておいて、できたときにピックアップに取りに行くのが賢い利用方法です。)

プライスレンジがきわめて、リーズナブルなせいか若者に大人気。6,7ポンドくらいでラーメンやカレー、または寿司といった一品が食べられるのですから。

そして、ちょっとモダンな内装は、全然を「和」を感じさせない。そもそも、店名が「和」を完全に捨て去ってしまっています。Hare & Tortoise、そう、ウサギとカメですから、だれもJapaneseを連想させないでしょう。

その上、日本の店員は、ゼロ。90%が中国系で、残りの10%がイギリス人の若者といった感じでしょうか。

和食レストランなんだけど、全然和を感じさせない、ちょっと新鮮な感じななのです。おそらく、このレストランを指揮している人は日本人ではないかと思えてきます。日本人だったら、ここまで「日本風」を捨てることは難しいですから。

で、このレストランが何でうけているかというと、もちろん、内装だとかなんだとか、といった点もあるのですが、結局は、「おいしい」からなんです。うちの近所さんも、この店の大ファンですから。

では、なぜおいしいのか?

私流の分析でいうと、外国人が日本食で「おいしい」と感じる部分を徹底的に「誇張」した料理作りをしているから、ということになると思います。

外国人が日本食で「おいしい」と感じる部分の読み切りと、その誇張の方法が、実に上手。としかいいようがない。そこに、このレストランの何よりの成功要因があるのではないかと思います。

僕ら日本人は、外国人が日本食のどこにうけるのか、そこは意外と分かってなかったりします。どうしても、本物を出そうとしてしまったりということもあるでしょう。

たとえば、すしのネタでいえば、こちらの人は、サーモンが大大大大好きなのですが、だからといって、↓のようなメニューを考えつくでしょうか?これは、スゴイメニューです。まさにサーモンづくし。

サーモンボックス(HPより)

2 salmon nigiri, 1 salmon temaki, 6 salmon maki, 3 salmon sashimi - 12 pieces


サーモンの刺身に、サーモンの手巻きに、サーモン寿司に、サーモンロール。ここまで「誇張」するからうける。

この話しは、マーケティングやブランディング上もものすごく大事で、提供している商品やサービスのどこの部分が顧客にうけているのかが見えなくなるケースというのは往々にしてあります。

顧客が感じてくれている価値が見えなくなれば、当然、企業としても、何にフォーカスして今後活動していけばいいのかも分からなくなります。そうすると、当然、商品、サービスも漫然としたモノになってきてしまいます。

それから、もっとパーソナルに、個人に置き換えても全く同じことが言えると思います。

このレストランを通りすぎるたびに、これらのことを考えることの大事さを思い出すのです。

2009年9月9日水曜日

企業リストラクチャリングの勘所

前回のエントリーで、「変化を受け入れるのには時間が必要」ということを書きました。たとえば、全社に渡るような人員整理を行わざるを得ない場合、それこそ、どうやって、その変化を納得してもらうか、そこがまさに企業変革のキモ中のキモ。

私がコンサルティングで携わったケースで、非常に印象的だったのは、足もとの業績はそこそこよかったのだけど、将来を考えると今組織をスリムにせざるをえなかったケース。そのインパクトは、組織の人員を三分の四に1年以内にするというもので、その規模といい、スピードといい、かなりしんどかった。

そこでも、やはり次の理論は生きていました。その理論とは、変化を受け入れるには、次の4つのフェーズがあるという説。

1.ショック
2.保身
3.承認
4.適合と変化

今、思い起こしても、この4つをだれもが通っていったと思います。これらのフェーズを通貨するスピードに大小はあれ、誰もが通っていたと思います。

じつは、このプロジェクト、このテーマで半年以上続いたのですが、そのプランづくりは、わずか6週間で完了しているのです。かなり生々しいですが、どこのコスト構造からいくら減らし、どの部署から何人削減し、大きな方向性としてこう事業のやり方を変えるというところまで。

この手のプロジェクトの場合、語弊をあえて恐れずにいうと、正直、緻密に分析することはあまり意味がありません。分析をすれば、するほど、組織をスリム化することができない理由がどんどんとみつかり、結局何もできなくなってしまうのです。

たとえば、この人を異動させると、あの人にも異動してもらわなければいけなくなり、そうすると、この人員が足りなくなって・・・と途方もないジグソーパズルを作り上げる作業に陥り、にっちもさっちもいかなくなってしまうものです。

プロセスを効率化する場合もしかりで、緻密にプロセス分析をすればするほど、できない理由が集まってきて、「効率化できませんね」で終わってしまいます。そこそこいけそうなアイディアがでてきたら、「ガツン」と試してみる、につきます。

ここは、LBSのリチャード・ジョリー氏も言っているように、組織は、「チャイナ・ショップみたいにもろくはなく、ガーデニングみたいなものだ」のとおりで、少々大胆にやるくらいが丁度良い。というか、そういうメンタリティじゃないと、何もできなくなってしまう。

というわけで、話しはながくなりましたが、プランは6週間。残りの5ヶ月は何をやっていたのかというと、まさに、先の4つのフェーズへの対応でした。

1.ショック
2.保身
3.承認
4.適合と変化

やはり、1から3まで、どうしても3ヶ月はかかります。その過程で、さまざまな抵抗、政治的な駆け引き、純粋な吐露などに出会うわけですが、そこはやはりきちんとコンサルタントが受け止めて上げる必要があり、そこがコンサルティングの付加価値だったのだと振り返って思います。

当時の統括パートナーは、「僕らの仕事は、サンドバッグ」と皮肉っていましたが、言い得て妙なりで、まさにそのとおり。そう僕らは、サンドバッグ。その抵抗の矛先がある期間どうしても必要なのです。

だから、僕らは毎日、プランをひっさげて、いろいろと非難の声を浴びさせながら、朝は、A事業部長、午後はB事業部長、夕方はマーケティング部長とミーティングをしながら、とにかく話しを聞き回っていました。

ある時期からまさに潮の目が「ガラッと」変わったかのように、ウソのように、その改革はテイクオフしていったのです。そう、臨界点を越えたのでしょうね。そして、この企業の場合、もちろん問題は少し残しながらも、売上を犠牲にすることなく、見事にこの大胆なプランをやり抜いたんですよね。

教訓:
抵抗へのケアが改革の原動力

2009年9月4日金曜日

我が家のご近所スナップショット

我が家はロンドン大学の家族寮、International Hallにあります。ここは、ピカデリー・ラインのRussell Square駅の近くで、有名スポットとしては、大英博物館や、ディケンズ博物館が側にあり、ロンドンの中心部に位置しています。中心部とはいえ、緑が多く、落ち着いている雰囲気もあり、なかなか住みやすいエリアです。

家族寮向かいの公園
ああ、もうこの緑もそろそろ終わり
しっかり楽しんでおかないと、あっという間に冬だ
そう、ロンドンの冬はあっという間にくる
BRUNSWICK CENTRE
ショッピングセンターとフラット-ここに住みたい!
ここにスーパーなどが入っていてなかなか便利

公園に隣接している子どもの保育園、トーマス・コラムズ


近くにあるハイストリート、Millman Street
小さなストアが立ち並んでいて、歩いていても楽しい


その通りにあるちょっと有名なイタリアン

週末になるとよく賑わっています!

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企業変革の被害者からの視点

Managing Changeの授業もそろそろ、終盤戦。今までの必修科目に比べて、選択科目のクラスの雰囲気はガラッと変わり、それそれは新鮮です。

というのも、このクラス、MBA2年生に加えて、Executive MBAの学生、さらに四分の一くらいが交換留学生が交じっているため、一段と議論が活発、面白いものになっていると感じます。とくに、Managing Changeのようにヒト系の科目の場合、シニアなExecutive MBA生がいるというのは、きわめてプラスに働いていると思います。

この授業は、Changeについて、トップによる変革、ミドルからの変革、大企業における変革などさまざまな角度からChangeについて理解を深めていきます。

その中で、とくに面白いのは、変革を受け手からみる視点。 正直、これはスゴイ視点です。

変化、変革というと、多くの場合、どう組織を変えるか、どう業績を上向かせるか、どうリストラをするか、という変化を「起す」側からの論考が多い。でも、誰もが経験するように、じつは、変革の受け手、被害者になることも、多い。というか、こちらの方が個人へのインパクトとしては大きい。

たとえば、リストラされるとか、政治闘争に負けたとか、事業が売却されそう、とか左遷されそう、など変化に伴うことによって、個人がウケル影響は決して小さくないし、さまざまなケースで起こりえます。リーマンショック以降の今、そしてアメリカの失業率が10%に届きそうな今、スペインの失業率が20%な今、普通なことです。

さて、そんな変化を受ける側の視点について、まとめているのが、ハーバード・ビジネス・スクールのTodd D. Jick教授。

Note on the Recipients of Change
Professor Todd D. Jick

http://harvardbusiness.org/product/note-on-the-recipients-of-change/an/491039-PDF-ENG

ひとことでいえば、「変化を受け入れるのには時間が必要」ということ。変化に対するリアクションは、いくつかの段階を経るのだと指摘しています。いくつかのフレームワークが紹介されています。

たとえば、

1.終了フェーズ
2.中立フェーズ
3.開始フェーズ

とか、

1.ショック
2.保身
3.承認
4.適合と変化


といったもの。私たちは、「さあ、変わってください」といって、「はい、分かりました、変わります」とは絶対にはならない。そこには、まずショックがあり、そして、ディフェンシブになり、ときには抵抗したり、もがき苦しみながら、ようやく状況を飲み込んでいって、新しい世界を模索するようになるというものです。

これは、よく分かります。自分自身も、所属しているコンサルティングファームが買収されて、新しい会社に変わったときも、新しいカルチャーになじむのに、というよりは、受け入れるのに「ある時間」が必要でした。今から考えると、何でもないのですが、なぜかそのときは時間が必要でした。

企業変革のコンサルティングをしているときもしかり。クライアント側のトップが合意したとしても、チーム、組織の従業員が理解してもらうためには、ある一定の時間-これは、ときには大きな抵抗勢力にあったり、なだめたり、話しを聴いたりと大変ですが-が必要です。

逆に、もし変革を起すといって、「抵抗」が何もなければ、それは本当に変革なのか?と疑わなければいけないとも、教授は指摘しています。

こうした人間の心理的変化を踏まえて、マネージャーとして何をしなければいけないのか?この記事では、

Rethinking Resistance-抵抗を考え直す

ことを対処策としています。抵抗というのは、自然なこと、抵抗というのは変化に対する原動力になること、抵抗というのはエネルギーの源泉になること、変化に必要なこととしています。

何もこの考え方は、企業の変革に影響を受けるケースだけでなく、キャリア変化、転職、昇進などそんな場合にもあてはまると思います。

MBA2年間のプログラムは、はじめのタームが極めて忙しくストレスフルと言われます。これは、上記のモデルに照らし合わせれば、全く新しい環境に適合するための移行期であるが故に、そう感じるのかも知れません。

変化の受け手側を深く理解することによって、自分がその立場に立たされたとき、また自分が変革を主導するとき、そのどちらのときも、より効果的に動けるようになるのだと思います。

Tipping Point Leadership~臨界点を越えよ!

MBAの授業の多くでは、いくつかの再度リーディングを課されていきます。

その授業で扱うケースを補完したり、新しい視点を提示するために使ったりと、その目的はさまざまですが、教授が厳選しているだけあって、このサイドリーディング、けっこういい記事が含まれているのです。 また、色々と調べ物をする中で、いい記事に出会ったりもします。

というわけで、個人的に面白いと思った記事で、紹介に値すると思ったものを、このブログでもたまに取り上げていこうかと思います。

Tipping Point Leadership
By W. Chan Kim and Renee Mauborgne

http://harvardbusiness.org/product/tipping-point-leadership/an/R0304D-PDF-ENG

あのブルーオーシャン戦略を世に送り出したW. Chan Kimによるチェンジマネジメント論。この論考が鋭いのは、やはりTipping Point、すなわち“臨界点”という概念に注目したことでしょう。

企業は変わろうと思ってもなかなか変わらない、だれもがそう思うのですが、あるクリティカルマスを越える人間が本気になった途端、まるでウィルスが伝染するかのように、企業はあっという間に変わる、そのことを書いています。

“In any organization, once the beliefs and energies of a critical mass of people are engaged, conversion to a new idea will spread like an epidemic”

これは、まさにその通りで、私もいくつもの変革プロジェクトでこれを経験しました。そうなのです、はじめは様々な抵抗に会うのですが、改革派のシンパがある水準に達すると、組織が動きだす。そうなれば、もうコンサルタントは不要です。逆に、いつまでも改革の実行フェーズでも、多くのコンサルタントを投入せざるを得ないのは、このTipping Pointなる概念を理解していないということになります。

誰もがなんとなくそうだよね、と思っていることをTipping Pointという一言にのせて世に問うているところが、Chan Kim氏の凄いところでしょう。ブルーオーション戦略という言葉しかり。

途方もなく大変に見える改革であっても、いくつかの急所を押さえて、ある臨界点を越えさせることが、リーダーの仕事というのです。

著者らが、提案しているその急所というのは、次の4つです。この4つを乗り越えることで、Tipping Pointを越えることができるというのです。これら4つの考えを、この記事では、治安が悪化したニューヨークを転換させた、当時のニューヨーク市警長官William brattonの実例を使って、鮮やかに描きだしています。

Cognitive Hurdle(認識の壁)
経営幹部を問題に向き合わせることで、問題を心底理解してもらう。問題を説明するのではなく、問題を体験させる
例:幹部の車での通勤を廃止。みな、危険なニューヨークの地下鉄を利用させる。身をもって治安の悪さを実感する

Resource Hurdle(リソースの壁)
本当の問題にフォーカスすることで、リソースを捻出する
例:ニューヨーク市民はたまにおきる暗殺といった大きな事件ではなく、もっと些細だけど頻繁に起こっている強盗などにおびえている。そうした些細だけど頻繁に起こる事件にリソースをあてる

Motivational Hurdle(モチベーションの壁)
キーパーソンにスポットライトをあてる。モチベーションの問題だからといって、すぐにインセンティブ制度を変えようなどと思ってはいけない。それは途方もなく時間がかかり、結局意味をなさない
例:ニューヨーク市警の地区長に全員の前で何がうまくいって、何がうまくいってないかを発表させることに。うまくいっている地区長は、スポットライトを浴びる!

Political Hurdle(政治の壁)
やはり、政治はいつでも必要。政治力学を上手に活用せよ
例:些細だけど頻繁に起こる事件を取り上げるのに反対していたのは、裁判所。なぜなら、さばく事件の数が莫大に増えるから。ニューヨーク市長を見方につけて、裁判所を動かした

企業変革の際、もしくは部署の方針を変える際、この「臨界点」を意識することで、大きなヒントを得られるのではないでしょうか。

2009年9月2日水曜日

日産V字回復の成功要因は、ゴーンさん就任前にあり

今日のケースは、少し古いケースになりますが、日産のV字回復のケースを使って、トップダウンによる企業変革を学ぶというもの。1999年に破綻しかかっていた日産を救済するために、ルノーが資本を入れ、カルロス・ゴーン氏がCEOとしてやってきたのは、10年前とはいえ、多くの人にとって記憶に新しいのではないでしょうか。

そして、瞬く間にNissan Revival Plan (NRP)を掲げて、見事に目標達成したということで、今でも一定の評価を得るに至っています。

このケースの最大の学びは、この手のトップダウン型改革では

“就任前が命”

であるということです。ゴーンさんが、日産の就任前にやっていることを並べてみると:

1.人事権を含め一切の権力をもつことを条件にCEOになる
企業再生に請われてCEOになったけれど、ほとんど人事権もなく、ただ用意されたプラン通りに改革を実行しなくてはならず、結局失敗なんていうのは、よくあるパターンです。しかし、ここはゴーンさん、ぬかりなく、全権を掌握することを条件にCEO職を得ています。でなければ、迅速な意志決定、大胆な意志決定などできるわけがありません。

2.自動車メーカーにとっての要の研究開発と製造の現場に足を運んでいる
就任数ヶ月前に、現場に足を運んでいる。おそらく、すでに日産の問題をこの時点で把握していて、その検証のために、肌感覚を得るために、現場に足を運んでいる。就任前から、現場感のある解決策を頭の中に組み立てることが大事。でなければ、就任後3ヶ月で、NRPを発表できないことになります。

3.経営陣のキーポジション、ファイナンスと製造は外部の人材を登用する
日産は、ほぼ財務的に破綻。だからファイナンス、財務は超重要。ここは、グリップの聴かすことができる外部の人間を登用。また、工場閉鎖などの痛みが伴うことが想定される製造のトップも外部人材を登用して、情がわいてしまうことがないようにする配慮をしている。必要なところには、外部から経営陣とガツンと連れてくることがキモ。

ということは、この手のCEOは、就任前にあらかたの問題の在りかと処方の仕方が分かってなければならず、それにもとづいて、自分の権限、経営陣を決めていかなければいけないというのが、日産ケースの学びということになります。

2009年9月1日火曜日

リチャード・ジョリーの「企業変革八つの真実」

リチャード・ジョリーは、ロンドンビジネススクールでリーダーシップ・組織系の授業で教鞭をとる一方で、Stokes and Jollyという組織系のコンサルティングファームを経営。今とっている、Managing Changeもリチャード・ジョリー氏で、テンポのいい授業で飽きさせません。

そんな彼が提唱する「企業変革8つの真実」とは?どれも、どこかで見聞きしたモノなので、なんだと思うかも知れません。しかし、この手のリストは、それを8つという形でまとめたところにその価値があると思います。

真実1:成功は慣性を生む
いわゆる、成功の復讐に気を付けよ、というものですが、やはり組織の慣性というのは、いつでもどこでも恐ろしいものですね。うまくいっているときはいいけれど、環境の変化と整合しなくなった途端、恐ろしいことに。

真実2:ビジョンは、変化を引き起こさない
将来の青写真をつくればいいというわけじゃない。ひとりひとりに訴えかける、アンビションでなければいけないというもの。

真実3:変革には、恐怖と希望の両方必要
組織は、いつだって安定をもとめるもの。ある種の均衡状態に陥ってしまうのですが、変化が必要のときは、それを打ち破る必要があります。その時のドライバーが、将来への良い状態に対する希望と、それをしなかったときの恐怖の二つ。このバランスを絶妙にとる必要がある。いわゆる、アメとムチ

真実4:マインドセットは変えない限り変われない
もし、企業が安定状態にあるのなら、一度、ガツンと組織を揺さぶることをしてから、移行し、新しい状態を定着させよ。Unfreeze→Transition→Refreezeという手順をとらなければいけないというもの。

真実5:単にデータにもとづいて手をうったとしたら、いつだって手遅れ
そう、悪いという症状が顕在化してから、手を打つのは遅い!いつだって、業績が上方調子のときで、バラ色というときに警戒しなければならない。本当に悪化してから手を打つのは日産のようにかなりリスキー

真実6:人とプロセスは両方大事
人などのソフト系、プロセス・組織構造などのハード系は両方大事。多くの変革のケースで失敗するのは、どっちかに偏るから。これは、リーダーのキャラクターに多々依存してしまうから、自分がどういう性格かをよく分析した上で、この手の偏りをなくす努力をしなければいけない

真実7:いつだってコミュニケーション不足
コミュニケーションをしすぎることはあり得ない。Kaplan & Nortonの研究によれば、95%の従業員が、企業の戦略を理解していないのだから。95%が理解していないとは、驚きの数値。人は、しゃべるのは得意だけど、人の話を聞くのは苦手。とくに、シニアのポジションになればなるほど、人の話に耳を傾けるのが難しくなる。自戒をこめて、頭にたたきこんでおこう

真実8:組織は、陶器屋ではない
陶器がズラリと並ぶ店のように、ガラス細工のように組織はもろくない。むしろ、有機的な生命体で、もし傷つけてしまったとしても回復する、そういうもの。これは、本当にそう思う。以前、人員削減のプロジェクトを経験した際、組織の回復の早さをまざまざと見せつけられ、組織って生きてるんだ、強いんだということを強く実感。組織はサバイブする。