2009年1月30日金曜日

マネジメント2.0 (その1)

“Management2.0”というなんともキャッチ-なタイトルで、LBSでカンファレンスが開催されたので、参加してきました。

このカンファレンスのテーマは:

“How Web 2.0 and Generation Y are changing the way management work is done”

“Web2.0とジェネレーションYは、どのようにマネジメントのやり方を変えているのだろうか?”

なにやら高尚なお題にみえますが、民間の企業に限らず何らかの組織に属している人だったならば、誰でもが関係してくる、超身近なトピックだと思います。マネジメントといっているから、敷居が高いのですが、ニュアンスとしては、「働き方」と言って方が正確かもしれません。

どういうことかというと、

1. Web2.0という新しいツールの登場で、マネジメントのやり方を向上させる「機会」があるのではないか?
2. 1980年以降に生まれた新人類-ジェネレーションYが会社に入るようになってきて、彼らに対しては今までとは違ったマネジメントのやり方をする「必要」があるのではないか?

という問題意識が議論されていました。個人的にはかなり面白い論点だと思います。たしかに、このような2つの切り口から,会社内での働き方や、マネジメントのやり方を工夫する余地は大いにありそうです。より詳しい記事やケースはこちらから、Mlabのウェブサイトからみることができます。
http://www.managementlab.org/

大事なのは、この点の論点をきちんと議論しておく、そのアップサイドの可能性に注意を払うと言うことが大事だと思います。

なぜなら、今のシニアマネジメント以上(40代以上)の感覚からすると、無視する、もしくは、その論点の重要性を過小評価する嫌いがあるのではないか危惧するからです。結果として、みすみす改善のチャンスを逃してしまうのではないでしょうか。

なぜなら、たとえば、Web2.0的な技術のユーザーは主に若い世代で、今の経営陣層の世代がどれほど使いこなしているかどうかはかなり疑問です-もちろん一部の例外は除きますが。Facebook, youtubeなどを筆頭としたサービス群は私でも、ついていっているかどうか、という感じですから。

もうひとつは、今なお経営層、もしくは中堅マネジャーが、ジェネレーションY世代への理解をどれほどしているか、というところです。この世代は、価値観、行動様式、モチベーションが、その上の世代、ジェネレーションX、ベビーブーマーとは大きく違うため、今までどおりのマネジメントの仕方では、彼らのポテンシャルを引き出せない可能性があるというものです。

彼らの生態系に根ざした新しい管理の方法が問われているのですが、「今の若者は、すぐ会社を辞めてしまう」といったように、若者がダメという表層的な論調で片付けられることが多いように思います。

***

さて、このカンファレンスをホストしていたのがJulian Birkinshaw教授。彼は、Duputy Deanでもあり、いわば、企業でいうところの、Chief Operational Officer(COO)といったところでしょうか。

London Business Schoolのweb2.0とGeneration Yへの取り組みはどうなのか、と聞いたところ、「じつはまだまだで...」などと苦笑していましたが、なんだか紺屋の白袴状態になっているわけですが(笑)、ビジネススクールとしても、web2.0の活用や、Generation Yへの対応については、大いに改善の余地がある、もしくは何らか新しい取り組みをするチャンスのある領域なのは間違いないでしょう。去年あたらいから、ちょうどGeneration Y世代がビジネススクールに入学し始めていますから。

2009年1月28日水曜日

マーケティングの授業は「心理学的」

今期、来期と2学期にまたがって、マーケティングの授業があるのですが、いわゆる「正統的な」マーケティングアプローチとは違って、「心理学的な」アプローチからマーケティングを捉えようとしている気配が感じられます。

実際、消費財メーカーでプロダクトマネジャーをやっていたクラスメイトは「俺がやってきたマーケティングとなんか違うんだ!」と言っていましたが、個人的には、味わい深くてなかなかいい味を出していて好きです。マーケティング絡みは、実務でもかなり取り扱っていたので、そうした過去の経験を振り返りつつ、新たな視点で物事を考察していくのはとても面白い。

それも、そのはず。このマーケティングの先生は、修士では社会心理学を専攻し、ドクターコースでも、マーケティング専攻といいつつやはり人間の判断といった心理に根ざした領域を研究していて、今でもこの領域を専攻していることから、色濃く心理学的なアプローチがこのマーケティングの授業に反映されていると思います。組織行動学の授業に近い。

先生のスタイルも、いかにもマーケティングをやっていました!という華やかなタイプでは決してなく、木訥とした感じで、若干暗い面持ちでしゃべり、マーケティングという科目のイメージとのコントラストも手伝って、なかなか良い味を出しているように感じます。また、題材も、育毛剤や不動産といった複雑な顧客心理/感情が絡む商品を取り上げたりしているのも特徴的です。

また毎週、授業の前日の夜に締め切りがあるオンライン調査で、クラスメイトの意識調査があります。これが、そのまま、われわれがどのような認知を行うのかといった、授業の素材に生かされていくのも、教育方法としてアリだと思います。一般の人がこう思っているというよりも、身近なクラスメイトがこう思っているという調査結果の方が、関心度は高いですから。

いくつか覚えておきたいメッセージをメモしてみると:

「認知」の重要性

ネスレのインスタントコーヒーと、ひいた豆から作ったコーヒーを、ブラインドテストすると、けっこうの割合で、インスタントコーヒーの方がおいしいと答えるのにも関わらず、インスタントコーヒーと聞いた瞬間、人間はとたんにネガティブなイメージをもつというもの。ということなので、インスタントコーヒーを知りつつ、試飲テストをすると、いい結果は出ない。ブラインドテストの欠点ということなのだが、ここでの示唆はそれ以上にあるのではないでしょうか。

クラスで行った調査で、ある主婦のショッピングリストをみて、その主婦がどんな人かを当てるという調査がありました。ショッピングリストは二つあり、ほとんど同じ。どちらも、ハンバーガー、ニンジン、ベーキングパウダー、などなどが記載されているものの、1カ所だけ違うものがある。それは、ひとつは、インスタントコーヒーで、もうひとつは、コーヒー豆というたったひとつの違い。

結果はというと、コーヒー豆が入っているショッピングリストをみたクラスメイトのその人に対するイメージは、「とてもいい主婦、健康に気遣っていて毎日家庭料理を造っている、旦那のことを気遣っている」など理想の主婦像を描く。一方で、インスタントコーヒーが入っている方の印象はというと、「だめな主婦、健康に気遣おうとしているが結局できていないだらしのない主婦、手抜き、独身女性、子供なし、ペットで寂しさを紛らわせている」などといった、都会生活に堕落しきったダメ人間像を思い浮かべてしまう。

たったひとつの違いがこれだけの認知の違いを産むわけで、「認知」の重要性というか、パワーを改めて感じせずには居られないファクトだと思います。これだけ「認知」が重要だとするとしたら、われわれは、その重要性に見合うだけの労力を、認知設計とその消費者への形成という活動を十分にやっているかどうか、といった論点も浮上してくることになるのです。

もうひとつ。

セグメンテーションは自分自身の鏡

セグメンテーションは、あなたを映し出しているのですよ、というメッセージ。あなたが世界をみたいように、あなたは顧客をセグメンテーションをしてしまうという指摘。これはなかなか示唆深い指摘だと思いました。

私たちは、セグメンテーションというとき、自分ではなく、顧客をセグメンテーションしている、と思っている、というより、思い込んでいる。きわめて客観的にセグメンテーションをしていると信じているというか、疑いもしていない。

しかし、そこには、そういう風に世の中をみたいというバイアスが入り込むことになる。ケースで取り上げられていたのは、ある法人向け企業が、世のトレンドが低価格化・コモディティ化に向かっている中で、高付加価値サービスを提供しているが、どうしたものかというもの。ここで、低価格が欲しいセグメントと、高付加価値が欲しいセグメントという二つの顧客セグメントに分けるのですが、これはあくまで、あなたがそういう風に世の中をみたいというものであって、実際は、もう世の中には高付加価値セグメントなど存在しなくなっていることに目を向けなくてはいけないということ。

セグメンテーションはあなたの世界の見方である。それはいいことでもあるのですが、あわせて、そこには主観、バイアス、思い込みが入り込む余地があるということ。セグメンテ-ションというのは、きわめて機械的、作業的、客観的な作業に思うことがもしかしたら、適切なセグメンテーションからわれわれから遠ざけているのかも知れないというひとつの警笛でした。セグメンテーションは、あなたの頭の中にある!

2009年1月27日火曜日

London Business School MBA ranked No. 1 in the world


今朝学校に行くと、“World’s #1 for MBAs”なるロゴが至る所に掛けてあるではないですか。今朝のFinancial Timesで、今年のMBAランキングが発表されて、London Business Schoolが見事1位に輝いたというのだから、なんともうれしいではないですか。ランキングは、あくまでもランキングであって、それ自体がどうということはないのですが、やはり1位というのは気持ちのいいものです!

“European and Asian business Schools are caching up on elite US programmes”


さっそく、Financial Timesを見てみると、こんな面白い見出しが出ていました。すなわち、今年は、欧州のビジネススクールやアジアのビジネススクールのランキングが大きく飛躍した年というのです。多極化の時代というフレーズを聞き始めて久しいですが、その波はどうやらビジネススクールの世界でも起こりつつあるようです。

たとえば、Ceibsという中国のビジネススクールがはじめてTop 10入りをしました。また、6位と12位にはスペインのビジネススクールがランキングされています。またフランスのINSEADも5位とランキングを昨年からあげています。15位にはインドのビジネススクールIndian School of Businessです。ところで、残念なことに、日本のビジネススクールはTop100にはひとつもありません。

こうした変化の時代に、ビジネススクールを経営するというのも、企業経営と同じ、もしくはそれ以上に難しいと思います。なんといっても、多様なステークホルダーをマネジメントしなければいけないという事実です。ステークホルダーマネジメントは、企業経営でも最近ときどき聞かれますが、こうした非営利団体、教育団体にとっては、経営そのものともいえます。

学びにきている生徒、一国一城の主でいわば個人商店のような教授陣、企業のリクルーター、世界中にいる卒業生、などなど、それぞれインセンティブの働き方が違う生き物をひとつの組織の中に抱え込んでマネジメントしていく難しさというのはあることでしょう。また、ビジネススクールの特徴として、アカデミアとビジネスという二つの世界の狭間にいるという難しさもあるでしょう。

つい先週、London Business SchoolのDean Sir Andrew Likiermanとミーティングをする機会があって、ちょうどこの問題意識を投げかけたところ、深く大きくうなずいていたのが印象的でした。

Deanは企業経営の経験もあるようで、「企業のマネジメントの方がよっぽど楽なんだ」と語っていました。また、「Deanの仕事というのは、人がやりたくないといっている仕事をやってもらうことなんだよ」と笑って答えていましたが、なんというか、華やかな経営者のウラにある「大変さ」が垣間見えます。

このあたりのチャレンジが具体的にどういうことなのか、LBSにいる間に個人的にはもう少し紐解いてみようと思います。多様なステークホルダーのマネジメントは、まさにビジネスクールが課題先進組織として企業に先行的に直面していることであり、このチャレンジを克服する方法は、必ずや企業経営にも生きてくるように思います。

London Business Schoolの前Deanで、今はオバマ政権の経済アドバイザーをやっているLaura Tysonが、

”Like any organization in a highly competitive marketplace, business schools are adept at reinvention. They simply have to be”

と言っていましたが、私にとっての新しいこの母校LBSも、環境の変化に対応し、先取りし、Competitiveであり続けてほしいなと思います。私の中の、新たな母校心の誕生です!


2009年1月26日月曜日

テムズ河の畔にて。

早い夕方からクラスメイトの友人宅に家族で遊びに行く。

友人邸は、ダイニングとリビングルームが一体化しただだっ広い空間に加えて、コの字型に3方面の壁が全面ガラス張りという豪華なつくり。その巨大ガラスの向こうには、ゆったりと流れるロンドンの風物詩テムズ河が見渡せるという絶好のロケーションに居を構えるこのクラスメイトのフラットはうらやましい限りです。

夕暮れにあわせて、刻々と暗やむテムズ川と、徐々にライトアップされていく街並みを眼前に見据えるというのはなんとも贅沢な時間でした。

彼は、LBSに来る前には、イギリス・マンチェスタで、食品会社の経営をやり、中小企業から中堅企業へ6,7年の間に大きく飛躍させて、ある種のやり遂げ感もあって、ビジネススクールに学びにきているんだとか。そんな経験があるからか、クラスでの発言も、経営的、もっといえば、ヒューマンサイドに根ざした発言をよくする彼。

そして、経営に携わった会社が成長した暁には、自らの保有株を売却して、たっぷりとした資金があるからこそ、無給の今でも、けっこう優雅な生活ができるともいえる。そして、その昔は、プロのサッカー選手でもあり、ユースでもプレイしていたこともある彼。ユニークなキャリアをいっています。

今後は、会社を飛躍化させたノウハウと、MBAで学ぶファイナンスなどのスキルとあわせることで、投資の世界に進みたい-ちょうどPEとVCの間くらいの規模の案件を手がけるというのが彼のアスピレーション。

改めて、いろんなクラスメイトがいるものです。こうしたクラスメイトが将来どんなことをしているのだろうか。きっと、みな、様々な分野で活躍をしていくのでしょう。そういったことも考えると、ワクワクしてきますね。

さあ、明日からまた授業です!

2009年1月25日日曜日

大学のグローバル化とは?

今日はここロンドンの地で、母校の大学の集まりがありました。やはり母校は、母校。今日の参加者は、私は、誰一人として知らなかったのですが、母校というコミュニティを通じて、「昔」の思い出を暖めつつ、「新」たなネットワークが広がるのは素晴らしいことだと実感しました。学校というのは、いつだって、そうした新旧の交差点になってくれる素晴らしい存在であることを改めて気づかせてくれます。

次期総長の濱田副学長も参加されていました。現任の小宮山総長は、エネルギッシュな総長で、一番の功績は、学内関係者に「世界を意識させた」ということではないでしょうか。就任記者会見では、「世界一の大学」を標榜し、世界の有名大学と並ぶんだという決意を表明していたのを思い出します。その後、各種の出版物では、「世界の頂点を“目指す”大学」と、目指すならば誰でもできるじゃないか!という、少しヒヨった表現になってしまいましたが(笑)、新風を吹き込んだのは間違いないでしょう。

私がまだ工学系の大学院で勉強していたころは、私のいた飯塚研究室と小宮山研究室は、研究テーマが近く、ときどき合同研究会をやっていた関係で、私も研究内容を小宮山先生に見てもらったことがあったのですが、そのときの、威勢のいい、かけ声のようなコメントと批判を頂戴したことを思い出します。今となっては、その詳細な中身を思い出せないのですが。また、自身の著作(東大のこと、教えます―総長自ら語る!教育、経営、日本の未来…「課題解決一問一答」)では、これだけハードなのに給料は2000万円とコメントされたりと、衣着せぬ物言いがとても好きです。また、「グローバル」をキーワードに世界中の会議や、世界の大学の総長との交流も大事にしているように思います。

そして、今日お会いした次期濱田総長の話しを聞くと、その「グローバル化」の流れは踏襲するようです。というより、向き合わなければいけない必然の流れなのでしょうが、いったい大学の「グローバル化」とは何なのか?その意味するところは、クリアとは言えません。濱田さんもそこを考えているようでした。

海外留学生を受け入れること?
世界の有名学会誌に論文の数が増えること?
大学のランキングがあがること?
・・・

濱田先生は、どれも何か物足りないんだと言います。彼の定義するところの大学のグローバル化とは、「卒業生が世界中で活躍すること」。ハーバード、スタンフォード、オクスフォード、ケンブリッジなどの名だたる大学がなぜすごいのか?それは、世界中活躍している著名人が、こうした大学の卒業生だから、ということを説明していました。

この定義の仕方には、全く持って賛成ですが、次なる問いは、そのためには、どのような教育をする必要があるのか?どのように研究をしていくのか?この具体案がみたいところです。これについては、まさに今、組閣案の作り込みとともに4月の新総長就任に向けて急ピッチで作業をすすめられていると思います。やはり、母校は母校。今後の飛躍に期待です。

2009年1月23日金曜日

ロジカルシンキングより大切なこと その4

コンサルティングについてのトピックをあまり書いてないと思っていたら、以前に「ロジカルシンキングより大切なこと」と題して3つのポイントを揚げたのですが、その3つめをアップしていないではないですか。この3つめこそが、筋のいい仮説を紡ぎ出し、早く家に帰る一番のコツなのです!

そもそも3つのポイントとは何だったかというと:

1.バランスのいい情報収集プランを練るのがひとつ。
2.そして、素直に考えること。
3.もうひとつは、過去の経験・ナレッジを活用する。


1.は、同じ情報を与えられて、他人より深いインサイトを出すのは難しいもの。であるならば、他人とは違う(より適切な)情報源を集めてくることで、他人とは違ったインサイトを出そうというもの。他人とは違うインサイトを出すために実に有効な方法です。MBAのケース・スタディでは、みな同じケースに基づいて考えなければいけないので、この差別化ポイントを使えないのがツライ。2.は、素直に問題をとらえること-じつは疲れているときに考えた方が、無駄な雑念が入らなくて、むしろスーッと素直に考えられることの方が多いというものでした。そう、複雑に考えない、シンプルに素直に考えるのが大事。

さて、3.について。よくゼロベース思考という言葉が流行っています。白紙から考えるのがいいのだ!という思い込みのもと、ウンウンとウナっている人がいます。じつは、ゼロベース思考というのは、私の理解では、上の2.に近くて、起きている問題に対して真っ正面から向き合うその姿勢のことを指していて、決して、過去のノウハウや知見、ナレッジの活用を否定しているものではないと思うのです。

むしろ、ある程度の過去の経験・ナレッジや知見がなければ、決していい仮説やアイディアを考えることができないというのが、私の実体験です。私がコンサルティング会社一年目のときは、マネージャーに「仮説は?」と聞かれても、なかなか答えることができなかったのですが、半年ほど猛烈に特訓を受けると、急激にナレッジが自分の中で増えて、そのナレッジを上手に活用しながら、仮説を組み立てやすくなったのを思い出します。

これはどういうことなのか?

何年か前に、社内のトレーニング資料を作成するために、コンサルタントが実際どのような思考をたどるのか、各種の書籍をリサーチしたことがありました。いわゆる、ツールを説明しているものではなく、実体験に基づくもストーリーが書かれている本をいくつか、紐解いてみたのです。

“優秀なコンサルタントはみなパターン認識化した戦略の引き出しをたくさん持っていることだった。それ以来、さまざまな戦略を定石としてパターン化し、身につけるよう心がけてきた。そのなかで得たコツは、コンセプトワードを記憶の引き出しとして用いることだ。人間の頭はすべての事象をくわしく記憶することはできないので、戦略のエッセンスをコンセプトワードとして覚える。”

”実際には、コンセプトワードごとに、具体的な事例が引き出しの奥に記憶されているのだが、記憶をたどったり、パターン化された定石を組み合わせて思考していく際には、コンセプトワードレベルで考える。このほうが、記憶が容易だったり、思考のスピードアップが可能だったりするからだ。事例そのものは、必要なときにだけ頭の中のメモリーから引っ張り出してくればよい”
(戦略「脳」を鍛える、御立尚資氏)


じつは、全然ゼロベースでは考えていないのです。ある種の事象をコンセプトワード化し、そのナレッジを適材適所で活用しているというのが見て取れます。

「コンセプトワード化」するというのは、ある現象の背後に隠れているメカニズムを見抜き、すなわち現象の本質を抽出し、一段と抽象度の高いレベルにその現象を知恵として昇華させる作業を指していると私は理解しています。具体論よりも、少し抽象度の高い知恵の方が、その知恵の適用範囲が格段に広がる、という原理を最大限に活用しています。

理系的な表現をすれば、「釘を水に浸したら錆びる」という現象を覚えておくより、一段と抽象化し、「鉄と水を接触させると錆びが発生する」の方が、はるかに応用範囲が広いという原理です。

ただ単にニュースを読み流すか、逐一この作業を行い、知恵のストックを拡充している人では、時間が経過した分だけ、思考のクオリティにどんどん差がついてきてしまうのです-ああ、恐ろしい! この抽象化のやり方についてはいくつかコツがあるのですが、それについて書くと長くなるのでまたいづれ。

もうひとつ。

“収集したイメージに仮のラベルを貼るために、これらのイメージ体験から何らかの示唆を導き出すことにした。示唆の導出は、次に応用できる原理を抽出するという一般化を目的に実行したものであり、この示唆ラベルをつけて頭の中にイメージを格納する。しかし、実際にイメージを頭の中のアーカイブから引き出して使うときには、必ずしも最初に貼ったラベルにこだわることなく、切り口を無限に考えるようにした”

“こうしたイメージ・アーカイブが充実するにつれて、頭がはっきりしている状態のときは、言語を介することなく、イメージ自体が勝手に爆発的スピードで合従連衡して、答えを出してくれるようになった。創造を感じる瞬間である”
(30歳からの成長戦略 「ほんとうの仕事術」を学ぼう 山本 真司氏)

これもここでは現象の抽象化のことを、イメージ・アーカイブと表現されていますが、本質的には同じことを記述していると思います。抽象化された知恵を、イメージの形で保持しておいた方がよりパワフルとの指摘です。

じつは、一見目新しいように見える問題の中を素直かつ、冷徹な目でみると、じつは過去でどこかで起きた問題と同じ構造であることはめずらしくなく、そこを見抜き、えぐり出してあげることがキモで、そこさえできれば、過去の経験やナレッジを活用することができるというわけです。過去の経験やナレッジを活用することのメリットは、問題解決のスピードを速めるだけではなく、「適用済み」「実証済み」であるので、提言する方としても、とても安心です。言い換えれば、その解決策を実行すれば、間違いなく成果が出ます。

そんな過去の知見やナレッジばかり活用していては、全然目新しい提案ができないではないかという指摘もあるかもしれませんが、一概にはそういう風にいうことはできません。というのも、たとえば全く畑の違う業界での知見を横展開した場合には、やはりその当事者にとっては目新しい提案になるからです。

というわけで、ゼロベースという言葉を誤解し、勝手に奇想天外な解決策を産み出そうと苦しむより、過去の経験やナレッジをさっさと使い、素早く問題解決するのがいいと思います。おそらく優秀なビジネスパーソンはみなそうしているのではないかと、私は思っている今日この頃です。

2009年1月20日火曜日

Winter Wonderland; 移動式遊園地@ハイドパーク


Hyde Parkにやってきた移動式遊園地。
我が子がもっとも泣きまくり、もっとも楽しんだWonder Land..

乗りたい!と叫び、乗れば大泣きし.....


巨大滑り台は何度も滑り、大ご機嫌でした



立派なジェットコースターもやってきた!
日本ではあまりナイ発想で新鮮。


大人も楽しめるよう、ドイツの屋台が軒並み並ぶ。
そう、Winter Wonderlandはドイツのお祭りらしいのです。
********
学び1.
需要のあるところに出かけていき、稼働率を高める
-「移動式」遊園地
学び2.
表を変えることで、バリエーションを増やす
-ドイツ式屋台(表)と組み合わせてドイツ色を演出
いずれも既存の設備を最大限に活用するための施策。
固定費回収力を高めることが重要。
まさに不況の今に求められていることのヒントを得た気がします。



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2009年1月16日金曜日

子育てに学ぶ経営学 その2

「子育てに学ぶ経営学 その1」の続き。
http://london-twk.blogspot.com/2009/01/blog-post_11.html

オススメ3;ストーリーを活用する
ただ単に、「片付けなさい」と無機質に言うのではなく、感情を伴うストーリーを伝えてあげると、これもまた、劇的な効果を発揮します。

「えいじくーん、もうこの新幹線、ねむーいって、言ってるよ。ほら、つかれているよね。えいじくんもねむいとき、ベッドに寝るよね。新幹線も、ねんねさせてあげようか。このおもちゃ箱にそーっと寝かせてあげなきゃ」

「えー、しんかんせん、眠いっていってるのぉ」と言いながら、納得した様子で、我が子は片付け始めるのです。

しかし、副作用もあります。まだ遊び足りないときの子供の発言。「しんかんせんちゃん、まだえいじくんと遊びたいっていってるよー」。うーん、考えたなあ。

いずれにしても、色々と応用は可能です。おもちゃを乱暴に扱っているとき、花を乱暴に扱っているときなどは、「ああ、はな君が、痛い痛いっていってるからさ、やさーしくだよ」などというと、やさしくなで始めます。

教訓→無機質な命令ではダメ→感情のあるストーリーを伝える

**

逆にやってはいけないことは何か?

NOTオススメ;物欲に訴える
物欲に訴えるのは、短期的にはすごい効果がある場合があります。

「えいじくん、このおかずを全部食べたら、クッキーを食べてもいいよ」

すると、突然、猛烈におかずを食べ出し、食べ終わるや否や、「からっぽ!」と皿をみせながらニコっとし、勝ち誇ったように「クッキー!」とねだるのです(いつでもそうなるとは限らないのですが)

しかし、やはり物欲系は副作用が大きすぎて、最終的にはいい結果を生みません。

マルタ旅行の際、マルタの首都ヴァレッタを歩きながら巡っていたのですが、だんだんとうちの子が疲れてきてしまいました。

そういえばバスのおもちゃを欲しがっていたことが私の脳裏をかすめ、思わず、「ちゃーんと、この街を歩いたら、バスを買ってあげるよ。ちゃんと歩く?」と言ってしまったのです。

目の色がきらりと変わり、「うーん、あるくぅー」と威勢のいい声。しかし、それも全く長続きしません。

おみやげショップで、バスのおもちゃを見ると、「バス―、バス―、バス―ホシィッー」と叫び、連呼し、そこでは買ってもらえないことを知ると、さらに大泣き。そして、地べたにぺたっと倒れて、一歩も動こうとしない。強引に店を連れ出しても、ふてくされて歩こうとしないのです。

機嫌を取り直して、歩いても、また「バスは?」と聞く。もう彼の頭の中は、バス一色でして、道中ずっとだだをこねっぱなしになってしまいました。歩道の真ん中でねっころがって、わめく始末。

しまいには、妻が「ママはもうお世話しませんよ」といえば、誰よりも愛しているはずの母親に対しても「ママいらないー、バス―」といい出し、もはや冷静な判断不能な状況に陥ってしまったのでした。フー。

いやいや、これは反省でした。物欲に火をつけて、人を動かした暁には、大変なことが待っていたのでした。

教訓→物欲をドライバーにする副作用を知る→ヒトをカネで動かす怖さを知る

**

原始的な感情と欲望むき出しの3歳児の動機付けには、「理性」が使えない!

結局人は、感情と欲望でドライブする生き物。そこに人間の「本質」があるとすれば、子育てから学ぶことも多くあると実感している今日この頃です。

2009年1月14日水曜日

A Day In The Life at LBS

最近、留学を考えている方や、LBSのアプリカント、友人と話すとき、「どんな一日をおくっているのか?」と聞かれることがあります。たしかに、どんな一日を送っているのだろうと振り返ってみると、じつはかなりバラツキのある毎日です。

授業が多い、少ない、イベントがある日などによってけっこう違うのですが、押し並べていえば、仕事しているときに比べれば、自由時間がたっぷりとあり、贅沢だと感じています。

2009年1月14日(水)
7:30
起床

朝、ずいぶんと明るくなってきました。段々と日が長くなるのを感じます。いいことだ!

8:30
家を出発

まだ吐く息が白いけど、年が明けて少し寒さが和らいでいる。春が近づいてきたか。Kings Cross駅まで6,7分歩き、そこからTubeでBaker Street駅まで数駅ほど乗る。

学校に向かう途中、クラスメイトに会う。そして、日本的なモードからロンドンモードに変える-日本人的、というか私のいつものテンションだと、なんか少しかみ合わないのだ。

8:55
学校に到着

ブラックコーヒーを買いこんで(眠気覚まし!)、教室へ駆け込む。前学期は、最前列で先生の目の前でそれもよかったが、今学期は最後列。講堂的なクラスなのでクラスを見渡せ、かつ後ろのスペースが使えるのでここイイかも。座席は、学期を通して固定です。


9:00-12:00
Decision and Risk Analysisの第1回目。

Business Statisticsの続きで、定量分析にもとづいたビジネスにおける意志決定について学ぶ。先生は、スペイン人でラテン系の血が騒ぐのか、かなりひょうきん。

鉄くずからのリカバリーコストを推定するケースを一本扱う。個人的には、「定量分析にもとづいた」ではなく、「定量・定性分析にもとづいた」意志決定とすべきだとは思う。10:30頃に休憩が15分ほど挟まる。


12:15-13:45
Form Factory Training 

ウェブサーベイやウェブアプリケーションフォームを技術的に設計するためのトレーニングを受ける。普段は食堂で食べるが、今日はパイを頬張りながらこのトレーニングを受講。このトレーニングを一度受けておくと、フォーム作成ツールを使える権限をもらえる。

14:00-17:00
Marketingの第1回目。

前半は、牛乳パックで有名なテトラパックを扱い、後半コカコーラを扱う。先生は、トルコ人で、午前中のスペイン人に比べると、一見おとなしく見えるが、きわめて議論が活発になったクラスであった。

それにしても、テトラパックがディープに新製品の提案やマーケット調査、収益改善コンサルティングをやっているとは知らなかった。それをすべきかどうかの是非なども議論。

17:15-19:00
CASE COMPETITION PREPARATION

去年末から取り組んでいるビジネスプランを競うコンペティションが順調に進んでいるので、そのためのミーティング。けっこうやることがあるぞ。インドには市場進出しやすそうなのだが、中国への進出プランが難しい。

19:45-21:00
MEET ENTREPRENEURS AMONG CURRENT STUDENTS

ケースコンペティションのチームメンバーが企画したイベントに参加。同級生にもけっこう起業した経験を持つ人もめずらしくなく、同じスタディグループメンバーの一人も今年はロンドンにビザレストランを開くといっていた。たいしたものだと思う。

そんな人達を何人か集めて、「ぶっちゃけ、起業ってどうなの?」と聞くイベント。どうやってビジネスを考えたのか?大変だったことは何か?もう一度やりたいか?お金の心配はしなかったのか?やっぱり賄賂は使ったの?MBAを卒業したら何をしたいか?などの質問を通して本音を聞くというものでした。

21:30-
帰途へ

元気のある人達は、近くのパブへ繰り出していました。


22:00-

自宅でゆっくり。
明日のケース二本を読む。ロブスタービジネスと、男性版ゼクシービジネスの事業を評価せよ、というもの。学習逃避がてらにブログを書く。明日はこのDiscovering Entrepreneurial Opportunitiesの一コマだけだ!


そんなわけでして、こんな日もあれば全く何もない日もあり、そんなときは貯まっている課題をこなしたり、旅行に行ったり、就職活動やネットワーキングにいそしんだりと、みな思い思いに時間を過ごしています。

London Business Schoolの成功要因は何か?

London Business Schoolは他のビジネススクールと比べると若い学校ですが、その短い歴史の中で目を見張る躍進を遂げてきました、とウェブサイトで紹介されているとおり、じつは最近できた学校なのです。

“London Business School is young compared to its competitors, but it has accomplished a phenomenal amount in its short history. The School has achieved praise for its rigorous and influential academic work, while being rated as one of the world's top business schools for its degree and non-degree programmes.”
http://www.london.edu/theschool/keyfacts/history.html

その設立は、1965年。まずはエグゼクティブ向けのプログラムなどから始まり、フルタイムのMBAプログラムを開始したのはわずか1987年からでした。そして、その後あっという間に、トップスクールの仲間入りを果たすことになるのです。

ビジネススクールは、いつも変化するビジネスに合わせて進化を遂げなければいけませんが、このわずか短い歴史の中で、ここまで成果を出せたのはなぜなのでしょうか?じつに、不思議なことだと思います。その成功要因はどこにあるのでしょうか?

秀逸なプログラムでしょうか?キャリア支援サービスでしょうか?これらは、ビジネススクールの間で多少の差こそあれど、他社を圧倒的に出し抜くほどの差別化要因にはならないでしょう。教授陣でしょうか?たしかにトップクラスの教授はいるのですが、むしろトップスクールになったからトップクラスの教授陣が集まってきたのでしょう。因果関係が逆です。

ロケーション?ロンドンという地の利が、ランキングを底上げしたのでしょうか?たしかに、ロンドンは最高のロケーションですが、であるならば、ロンドンにある他のビジネススクールとの差をどのように説明すればいいのでしょうか?

周到に計算された戦略?崇高なビジョン?ロンドンビジネススクールのビジョンは、Becoming the pre-eminent global business schoolというもので、まあフツーでしょう。

もしくは、そのDiverse Student bodyでしょうか。マジョリティがいない、マイノリティだけのクラス環境が差別化要因になったのでしょうか。たしかに、強烈なセリングポイントなのですが、欧州系のビジネス・スクール全般のセリングポイントでもあります。

では何がカギだったのでしょうか?

私はそのネーミングにカギがあるのではないかと思っています。

“London Business School”

そう、このネーミングです。

Londonという言葉が内在的にもっている「意味」をまさに、学校のブランディングにレバレッジさせたことが最大のgood pointなのではないかと思います。

ロンドンと聞いた瞬間に人は何を思い浮かべるでしょうか。

サッチャー政権によって、ウィンブルドン現象とも揶揄された、シティやカナリーウォーフに代表される、トップバンク・投資銀行がひしめく金融街が何よりも有名です。また、なんといっても、移民を受け入れまくり、ロンドンはイギリスではない、とも言われるまで、多国籍都市になりました。

そして、美術館、博物館、演劇、音楽などのさまざまな豊かな文化・エンターテイメントの発信の地でもあります。さらには、Londonのもつ、他の都市とは違った、どこか憂い気で独特な意味深い雰囲気。

ロンドンのもつ言葉のパワーを、London Business Schoolと命名することで、拝借したのです。

そして、ここが上手だったのですが、このロンドンのイメージぴったりに、実際に学校をポジショニングしにいったことです。まずは、シティのイメージよろしく、Finance志向の学校としてのブランディングを初期のころは行いましたし、多様なバックグラウンドをもつ学生も売りにしました。もちろん、学生ですから、エンターテイメントも充実しているLondonの価値を売りにしました。なんといっても、キャッチコピーが、”London Experience, World Impact”ですから。いや、なんとも言い当てて妙なり。

たとえば、ケンブリッジやオクスフォードといったイギリスの超名門大学はいったいどれだけの長い歳月をかけて、その名を世界に轟かせることに成功したか。それはそれは長い年月です。また、ハーバード、スタンフォードといった大学も、その大学としての長い歴史を通して、その名前としてのブランド価値を高めていき、今日のパーセプションが築かれていると思うのです。

他の名門大学が何百年とかけて築いたブランド力を、Londonというフレーズを学校の名前に取り入れたことで、一夜のうちに、手に入れたといってもいいかもしれません。

London Business School. 秀逸なネーミングこそが、これだけ短期間のうちにトップスクールの仲間入りをした起爆剤になったのです。Londonのコトバのもつ意味を名前に取り込み、実際にそのコトバのもつ方向性で学校をつくっていたことが、結果として、良質な教授陣および優秀な学生などなどを集めることに成功しているのではないかと思うわけです。

たかがコトバ、されどコトバ。企業のブランディングや商品のネーミングにすぐに応用可能な学びではないでしょうか。

2009年1月12日月曜日

ほどよい罰則がいい? 理論と実践の狭間

Spring Term, Day 1

冬休みもあっという間に終わり、瞬く間に新学期がはじまりました。みなそれぞれ、母国に帰ったり、旅三昧であったりと思い思いの休みを満喫しているようでした。MBAの生活に慣れてきたこの頃から、学生の就職活動戦線もはじまり、何となく学内はせわしない空気も流れているように感じます。まさに学生と企業の出会いの舞台として、ビジネススクールが機能し出しています。

さて、新学期1発目の授業は、Managing Organisational Behaviour。

理論
その中で取り上げたれた理論が、Dissonance Theoryというもので、簡単に言ってしまえば、ヒトというのは、「思考」と「行動」に不協和が続く環境には絶対に耐えられないというもの。そうした不協和が芽生えたときには、何らかその不協和を解消する動きをするということです。ずっとイヤな感じに我慢ができないことが実証されているそうです。

たとえば、ナチスドイツのホロコーストにおいても、彼らは、「ヒトを殺したくない」が、命令に「殺さなければ行けない」という不協和を、内面に抱えるわけで、これでは長く続きしない。彼らはどうしたかというと、ユダヤ人をヒトとは思わないようにし、「ヒトを殺したくない」という思考自体をかえたわけ、という紹介がされました。

応用例

その応用例の紹介:

“子育てで、ある行動をやめさせるとき、叱りすぎるのはダメで、ほどほどがちょうどいい”

たとえば、子供が乱暴をするとき、あまりきつく叱りすぎると、恐怖心からその行動をやらなくなるだけ。ほどほどに叱ると、乱暴はダメという認知がうまれて、乱暴するときに不協和をうみ、その不協和を解消するために、乱暴をしなくなるというもの。

なるほど~。

実践:3歳児の子育て体験談
まるでその通りになりません。

私も今までいろいろ試してみましたが、ほどほどに叱ると、まず効き目がありません。ニヤニヤしながら、楽しそうに乱暴を続けです。こおそらく、叱りすぎることの弊害-親がみてるときだけ乱暴しない-は正しいでしょう。ただ、ホドホドに叱ったところで、乱暴が悪いという認知は生まれるとは思いません。これに関しては違う手を考えないといけません。

ことほど作用に理論と実践にはギャップがつきものです。

ビジネスでも同じでしょう。しかし、ギャップがあるからこそ、実践者としての工夫の余地や、改良のしがい、ノウハウの創出につながっていくわけで、このギャップこそに宝の山があると思うのです。

その昔、新しい在庫手法を考案したときも、理論と実際のギャップを埋める作業を進めた結果うまれたものでした。経営コンサルティングというのも、ある程度の理論を押さえた上で、ものすごい労力を使って現実解をひねり出していくわけで、ある種の理論と実践の架け橋役ともいえます。じつは、そのひねり出す努力から新しいコンセプトや考えが生まれてくることもしばしばです。

理論と実践にギャップがあるときは、じつはチャンスなのではないでしょうか。

2009年1月11日日曜日

John Lewis; 伊勢丹とヨーカ堂を2で割った店

ここロンドンでは、スーパー、百貨店などの小売りプレイヤーの種類とそれぞれのポジショニングが、東京のそれとは違うので、色々な発見があります。たとえば、有名なハナシでいけば、コンビニがここにはありません。

今日は、ロンドンの繁華街Oxford StreetにあるJohn Lewisで買い物したのですが、ここはけっこう気に入っています。



John Lewis is a chain of upmarket department stores operating throughout Great Britain and popular amongst the British middle class for its high quality goods.
(Wikipedia)

アップマーケットとWikiでは紹介されていますが、いわゆる安売りショップに比べればアッパーということであって、日本でいうところのデパートに比べれば、かなりカジュアルです。John Lewisは、雰囲気としては、我らが大衆の見方、イトーヨーカ堂と、百貨店の代表格、伊勢丹のちょうど真ん中あたりのポジショニングをしているのです。

ロンドンで百貨店というと、ハロッズ、セルフリッジなど、日本のいわゆる百貨店よりさらに格が上の高級デパートがごろごろしているので、こうした店と、安売りショップの両方と差別化しようとしたとすると、John Lewisのようなポジショニングが考えられたのでしょう。

John Lewisの品揃えは、化粧品、衣服、家具、食器、家電製品などひととおり、何でも揃います。店内は広々としていて、白を基調としたシンプルなデザインで統一されていて、心地よく飽きがきません。商品も、けっこういい品質のモノをおいています。価格は、サービス、店舗雰囲気に比べると、割安感があります。というか、家電などはArgosといった安売り店で買うより安い場合すらあります。



日本にいると、イトーヨーカ堂だとダサそうで買いたくないなあ、でも百貨店に行くほどでもないしなあ、というときに、John Lewisはぴったりの存在なのです。ヨーカ堂とミレニアムリテイリングの西武百貨店は、今や同じグループなのですから、John Lewisのような陣の取り方を実験してみてもいいかもしれません。

ちなみに、金融危機の煽りをうけて、アッパーセグメントという認知をもたれているJohn Lewisの売上げは、昨年の11月にガツんと10%以上、下落したといいます。この時期は連日のように金融危機の報道がされていましたから、まさに潮が引くように、サーっと、顧客が逃げてしまったわけです。

これを受けて、John Lewisはクリスマス、年末年始とかけて、激しくディスカウントをしかけ、すべての価格を競合と合わせに行き、正月明けの売上げはけっこう手応えがあったようです。とはいえ、売上げはあったとしても、ディスカウントをしているので、利益がどれほど痛んでいるかは、決算を閉めていないとわかりません。

しかし、面白いことに、低価格帯のスーパーであるTesco-やや安かろう悪かろうなところあり-が、業績堅調かというとそうでもないんです。4大スーパーの中では、ビリという惨憺たる状況になっています。むしろ、もう少しアッパーなセインズベリ-というスーパーが対前年比で、伸ばしてきています。

この現象をどうみるか?

要は、顧客の目がどんどんと厳しくなっていきているといえるでしょう。安いだけではダメで、消費者は、シビアに費用対効果を見極めて買ってきているといえます。浮かれてパッパパッパと買うのではなく、しっかり一品一品見定めるようにして買う、そんなスタイルに急速に移っているように思います。

ロンドンの小売り戦線はまだまだ続きそうですが、その中でもJohn Lewisは個人的には応援したいと思っています。じつは、うちの近くの食品スーパーである、Waitrose-このブログでもよく出てきますが-も、John Lewisのグループ会社です。

子育てに学ぶ経営学 その1

経営の要諦は「人を動かすこと」。

であるとするならば、子育ては、「人を動かす」原理原則を学び、実践するのにぴったりです。というより、この冬休みは、朝から晩まで子供とべったり付き合っていたので、「人を動かす」原理原則を、実践せざるを得ないというのが現実というところでしょうか。それにしても、パパよりももっと長く一緒にいるママというのはすごい存在です。

何が大変なのか。

うちの子でいえば、おもちゃを散らかし放題遊びまくったあとに、「おもちゃを片付けなさい」と言ったところで、全く効果はなし。輪を掛けたように、レゴやら、電車やらを引っかき回しながら遊ぶ始末。

さらに、怒鳴って「片付けなさい!」といってもダメ。今度は、泣き出して、もはや全く片付ける気配がなく、ごろごろところがるばかり。嗚呼、これだったら、しからない方がまだましだったのに。子供と向き合うというのは、ああ、なんとも体力と気力が必要だと実感させられる瞬間なのです。

そう、「言って」子供を動かそうなどと思ったら大間違い。わんぱく3歳児には、「命令」はまったく役に立たない現実を突きつけられるのです。

では、どうするのか?

リラックスした冬休みも、もう明日で終わりそうなので、今日はそのあたりを振り返ってみたいと思います。

オススメ1;一緒にやってできたら、褒めまくる

まずは、小さなレゴのピースを一緒に手にとってあげて、ゆっくーりと、おもちゃ箱にしまいます。そして、できた瞬間に、「すごーい!上手に片付けられたね!」と、テンション100倍、かつ繰り返し褒めちぎるのです。はい、また褒めるのにもエネルギーが必要です。

でも、これが実るのです。あら不思議、次は自分で、次のレゴのピースを片付けようとするではないですか!そして、それも少し手伝ってあげて、おもちゃ箱にしまう。そしたら、また褒めまくる!この繰り返しをすると、うちの子は、ちょっと得意げな表情になりながら、片付けをを終えることができます。子供と争わずに、ハッピーに。やはり誉めることは大事なのだと痛感している日々です。

教訓→「やつてみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」(山本五十六)


***

オススメ2;恐怖心を煽る


ずばり、「おばけ」の活用です。

「ほらほら、片付けないと、おばけが出てきちゃうよ。あぁ、もうこのあたりに、片付けないとえいじくんをたべちゃうおばけがきてるー」

と、少しホラー映画の解説者になったつもりで、語りかけるわけです。

すると、うちの子は、はっと我に返ったように反応し、遠くをみつめたあと、そそくさと、おもちゃの片付けをはじめるのです。ちょっと罪悪感にかられながらも、そういった素直な反応をみると、かわいい。

これは、劇的な効果が多くの場合あります。歯磨きをしないとき、早く寝ないとき、言うことを聞かないときと、かなり広範に活用できます。

しかし、やはり、効かないときもあります。チエがついてくると、「おばけ、いないでしょっ」とあっさりと、かわされるときもあります。

友人のブログで、「大人の事情」のおかげで、おばけは、全然なくならないとコメントしていますが、いや、全くまったくそのとおり、同意です。おばけがこの世からなくなってしまったら、世界中の両親の苦労は大幅に増えてしまうことでしょう。おばけを教える絵本もそろっているのもうれしい限り。こうして、代々脈々とおばけは受け継がれていくのですね。

教訓→恐怖心も使いよう

***

(続く)

2009年1月9日金曜日

Natural History Museum, 自然史博物館

7000万点以上ものコレクションを納める超巨大博物館で、一歩足を踏み入れたら最後、なかなか外に出てこられません。私はおそらく2,3時間ほどいたと思いますが、おそらくその1割も見ていないことでしょう。自然に関わるモノだったら、とりあえず何でも所蔵していると思わせるほどのバカでかさです。



まずは、地球成り立ちの歴史から。



生命館では、動植物ありとあらゆるものとご対面できます。
くじらがこれほど大きいと初めて知りました
百聞は一見に如かず!



恐竜。
それにしても、恐竜はキラーコンテンツです。
ここだけ長蛇の列。
映画、グッズ、書籍、おもちゃなどなど
恐竜ビジネスは枚挙にいとまがありません。



そして忘れてはいけないのが重厚感溢れる外観。

もともと学問とは、ものごとを分類することからはじまるという。
ひたすらありとあらゆる何らかの地球のpieceを
分類し続けて展示しているだけなのだけど、
ここまで徹底して見せつけられると、
やはり人類の叡智を感じずにはいられません。

自然史博物館を出た頃には、すっかり日が暮れていました。
クリスマスのライトアップの中、
威風堂々とした自然史博物館を後にしたのでした。
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2009年1月8日木曜日

経済を「見える化」した!

Londonは、うれしいことに、あの大英博物館を筆頭にして博物館が多くあります。とりわけ、South Kensington駅は、Victoria & Albert Museum、Science Museum、そしてNatural History Musemuと、巨大博物館が3つ隣接している、なんとも贅沢なスポットです。それも、どれも無料というから驚きです。

***


Science Museum, 科学博物館。


産業革命発祥の地、イギリスだからこそ語れる産業の歴史展です。子供が好きかなあと思い、まずは足を運ぶことにしましたが、ちょっと早かったかな。

これは面白いと思った展示物;The Phillips Economics Computer




The Phillips Economics Computerは何かというと、別にコンピュータというわけではなく、お金の流れを、水の流れになぞらえて、経済を「見える化」したという画期的な機器なんです。収入、貯蓄や、消費などのタンクに水が流れていき、最後は、国民総生産というアウトプットとして水が下に輩出される。また、税率などのパラメータは、弁をいじることで調整することができるようになっています。


これはなんだかよく分からないマクロの経済を理解するのに役立ちます。 まさに「見える化」の威力といえると思います。実際、大学の経済の授業で、教育用ツールとして活用されていたそうです。

もともとこれを開発した、Bill Phillips氏は、 エンジニアから経済学者に転じた人で、工学と経済学両方の知見を併せ持っていたたまものでしょう。1949年のころです。これをみた、同僚の経済学者もびっくりしたそうです。

一方で、この現代版をつくれるのだろうか?

国境を跨ぐお金や、レバレッジの聞かせた投資、などの影響で、昔に比べると今の経済ははるかに複雑になっていて、なかなか「見える化」がしづらくなっている世の中になっています。全体像が見渡せない社会になってきています。

じつは、ここに今回のサブプライムローンによる金融危機の根源的な理由があるように思います。だれも、自分が行っているお金の動かし方が、最終的にどう世の中にインパクトするかに思いをはせる、思いをはせる術もなく、お金が巡りに巡っていく。違う言い方をすれば、知の専門家が進みすぎている弊害といえるかもしれません。知の専門家が進めば進むほど、統合化が難しくなる。

こんな今だからこそ、今の経済をより分かりやすく「見える化」する術を考えないといけないのかもしれません。Bill Phillips氏が、工学という異分野のエキスパティーズを持ち込んで、当時の経済を見える化したように。

2009年1月7日水曜日

旅にはExpedia

何かと旅行好きなLondon Business Schoolの学生にとって、オンライン旅行代理店のExpediaは欠かせません。

Expedia, http://www.expedia.co.uk/

"Purchase airline tickets, make hotel reservations, find vacation packages, car rental & cruise deals at the travel agency rated #1 in customer satisfaction"

"世界最大級の海外旅行予約サイト-エクスペディア。世界8,000都市, 40,000軒のホテルと格安航空券を最低価格で今すぐオンライン予約・決済可能"

航空券からホテルの予約、ツアー、レンタカー、クルーズなど、オンライン上ですべて予約ができるというすぐれものです。我が家もExpediaにはここ数回お世話になっています。妻も、いまは、Expediaをひらいて、なにやらいろいろと検索をしています。見ていて、いじっていて、なかなか楽しいサイトです。

若干、検索がしづらかったり、サイトがおもかったりと、改善の余地はあるものの、やはり、Expediaは旅行を劇的にしやすくしたとおもいます。

その最大の功績は、「気楽にクリックするだけでオリジナルな海外旅行の予約があっけなく終わってしまう」ということでしょう。

海外旅行するのに必要なパーツ、すなわち、ホテル、飛行機、レンタカー、現地ツアーなどなどのパーツをひとつずつ、クリックしながら選択していけば、ひとつ、パッケージ旅行のできあがりです。その場で予約と決済が完了です。

そして、ホテルに関しては、細かな条件検索、たとえば、ベビーシッターはいるか、ネット環境はあるのか-が行えるし、実際のお客さんのレビューコメントもみることができます。

飛行機に関しても、ライアンエアーなどの格安航空会社がいいのか、それとも伝統的なきちんとした航空会社がいいのか、選べるし、飛行機の時間帯も選べます。これも、予算や都合にあわせて臨機応変に選べるので便利です。

あとは、クレジットカードで決済すれば、すべておしまい。すぐに確認メールがくるので、それを1枚プリントアウトすれば、それを見せれば、飛行機にも、ホテルにも泊まることができます。

きわめて短い時間の中で、かなり高度な意志決定を支援してくれるツールです。はたして、これだけのアドバイスを、日本の旅行代理店の窓口担当者ができるかというと、かなり疑問です。

それから、どんどんパーツを買い足していくように、レコメンデーション機能もしっかりとしています。

たとえば、こないだはトルコのイスタンブールに行きたいとおもいながら、Expediaで調べたことがありましたが、その後しばらくして、リコメンデーションメールをありがたく頂戴してしまっています。

タイトルは、”Our latest deals to Istanbul” イスタンブールへの旅行が調べられるサイトへのリンクがベタベタとはってあります。そして、
Alternative destination suggestions

If you are interested in Istanbul, you may also like Larnaca, Mallorca or Marrakech.
とも。イスタンブールに似たいくつかの旅行先もオススメしてくれているわけです。

オススメ機能ということでいえば、そもそもどこに行こうかなあと、ぼんやりとしか考えていない人には、”BE INSPIRED”という各種の機能があります。たしかに、旅行したいときというのは、明確な旅行先が決まってないときが多いモノですよね。

BE INSPIREDのTravel Calenderというところでは、少なくとも旅行する月は決まっているでしょ、ということで、旅行する月を入力すると、その時期にオススメのスポットが、世界地図にプロットしてあらわれてきます。世界地図のプロットをクリックすると、そこまでの飛行時間や気温などが表れます。

もうひとつ、なかなかチャレンジングな取り組みだとおもったのは、Inspiroscopeという機能。これは、直観に働きかける、右脳的なレコメンデーション機能です。Inspiroscopeをポチっとクリックすると....

心地よい波しぶきの音とともに、旅行にまつわるキーワードが、スクリーン一面に漂い始めます。たとえば、Relaxing, Socialising, Swimming....とかです。で、気の任せるままに、気になるキーワードをクリックすると、まるで雑誌を見開いたかのようなスクリーンがあわわれて、おすすめの旅行先とちょっとした解説がみられるという仕掛け。

ネットいうと、最安値の提示、レビューランキング、など左脳的な、ロジカルなレコメンデーションが多かったですが、情緒に訴えようとする面白い試みだと思いました。

もちろん、Expediaだけでなく、OPODOやLastminute.comなどもオンライン旅行サイトとして、使われているようです。

OPODO, http://www.opodo.co.uk/
Lastminute, http://www.lastminute.com/

旅行しようと思ったとしても、本当に旅行の予約を完了するまでには、いくつもの、物理的、精神的なバリアがともなうものです。たとえば、一体どこに行こうか?からはじまって、ホテルはどうしよう?飛行機のチケットはとれるのか?などなど。

そうしたバリアをExpediaは低くしてあげていることが、最大の提供価値なのではないかと思います。購買までのプロセスの顧客への負担は最小化すべし、ですね。

食文化の違い;スーパーの風景

近所の食料品スーパーwaitroseにて。
欧州を感じます。


棚一面チョコレート。さすがチョコレート文化



棚一面チーズ。さすがチーズ文化

棚一面、オイル。さすがオイル文化

そして、棚一面パスタ。さすがパスタ文化


こうして、棚一面に並べられた食材は、とてもおいしいのです。
種類が豊富ということは、それだけ「深み」もあるということ。
日本のスーパーで、棚一面米が並んでいるのと同じです。
まずいモノばかりのイギリスではありません。

欧州の食文化は、日常に密着したスーパーで感じ取ることができます。
けっこうスーパーの探検も面白い。
Posted by Picasa

2009年1月6日火曜日

世界遺産の街,エディンバラ

スコットランドの首都、エディンバラにきています。



イギリス人のクラスメイトに、国内で小旅行するとしたらどこがいいかと相談したところ、エディンバラを強く薦めてくれたのがきっかけです。



Edinburgh - my favourite city and personally I think best going during the winter, esp. around Christmas time....



....the highlight for me is just wandering around in the cold crisp air between very snug and cosy pubs/restaurants with the amazing castle in the background.



なかなかいいではないですか。


Londonの気温が0度くらいなので、そのさらに北にあるエディンバラは、とうてい寒くて行かないでしょう。こういう現地の人からのヒトオシがあると、よし行ってみよう!となる。



ヒースローから1時間ほどのフライトで、夕方ころにエディンバラ空港に到着。市街に入った頃にはすっかりと日が暮れていて、まだクリスマスのころの装飾とライティングが至る所に残っていました。エディンバラ城をはじめとした数多くのモニュメントがうっすらと暗闇の中に浮かび上がっている風景は、城塞都市にきたことを実感させます。


翌日は、イギリスにはめずらしく、真っ青な空の下、ぴりっと寒い空気の中を、エディンバラの街を散策です。




急峻な斜面を利用した造られたエディンバラ城からの眺め。石造りのしっかりとした城から、工業都市、荒涼とした山々、その遠くには海、が見渡せ、力強さのある街だと感じます。



石畳のRoyal Mileと呼ばれる通り沿いに多くのモニュメントが建ち並びます。前方にSt. Giles' Cathedralを望みます。


Scott Monument. 作家Scottの記念碑。


The Palace of Holyroodhouse.

ホリルードハウス宮殿。今でもエリザベス女王が夏の避暑地として使ったり、多くの公式行事が行われる現役の宮殿です。このとき、我が子は「落ちて」くれて、館内をゆっくりと巡ることができました。

イングランド国王ジェームズ一世の母親、女王メアリーが住んでいたのもこの宮殿。メアリーは壮絶な人生をおくる-2歳で女王に即位し、15歳でフランス国王と結婚するも2年後に死亡し、スコットランドに戻り、ダーンリと再婚。しかし、ダーンリは、メアリーの付き人を、メアリーの目の前で暗殺してしまうのです。こうした人生の荒波を生きているからなのか、館内にあるメアリーの肖像画は、どこか陰鬱な雰囲気が漂うのです。


Holyrood Abbey. すでに荒廃してしまった修道院。

石造りの建物や、多くのモニュメント、そしてエディンバラ城に囲まれていると、どこか、歴史の生々しい一面をゾクゾクと感じてしまいます。一方で、こじんまりとしたレストランやパブも建ち並び、美しく街並みもライトアップされていて、華やかさもあわせもつ。そんなアンバランスさの中にこの街の魅力があります。すっかり虜になりました。

2009年1月5日月曜日

“COMMUNITY”

私が留学前に、社会人向けマネジメントスクールで担当していたクラスの受講生のみなさんが、自発的に集まって、勉強会や懇親会などを、クラスを跨いで開催しているコミュニティがあります。事務局のメンバーや参加されているメンバーのみなさんの貢献があって成り立っている本当にありがたいコミュニティです。

こないだは、女性下着業界という、普通ならばあまり、取り扱わなさそうな面白い業界をピックアップして、議論をしました。下着業界の雄ワコールと、下着業界の急先鋒トリンプインターナショナルの戦いがテーマでした。私は、物理的に参加できず、残念でしたが、事前のケースや議論結果などには目を通し、それはそれは勉強になりました。

***

コミュニティの共通の価値観もありまして、それは、「お互いから学びあう」というとてもシンプルなものだけど、まさにこれからますます大事になってくる価値観というか、スキルだと思います。

それも、こうした異業種間での交流だと、なお学びが大きいと思います。ただ、交流というと、「カルイ」ですが、上のような具体的なテーマにもとづいて、きめられた時間内で、intensiveに議論をすると、はじめて見えてくるモノがあると思います。

少し深いところまで議論をして、はじめてお互いの「違い」が見えてくる。多くの異業種交流会は、このちょっと「深い」ところまではなかなか行かないのではないでしょうか。結果として、自分、もしくは自分自身の思考スタイルに気づくことができますし、井の中の蛙にならずにすみます。

さらには、自社で生かせそうなアイディアの気づきとして、メリットが出てくるのではないでしょうか。自社内とか業界内のチエやノウハウを知っても、多くの人が知っている可能性があるので、あまり差別化できないですが、他業界のチエ、ノウハウを自社に置き換えて使うネタは、差別化できるチャンスは極めて大きいです。コンサルティング会社が火比較的短納期でアウトプットを出せるのは、この原理によるところも多分にあると思います。

***

「お互いから学びあう」
簡単そうでいて、ちゃんと実践しようとすれば、じつに奥深い価値観だと思います。でも、そうだからからこそ、身につける価値が多分にあるとも思います。

なぜ奥深いのか?それは、お互いにお互いをRespectしなければいけないから。

相手を敬う気持ちがなければ、そもそも相手から学ぼうという気持ちなど起きるはずがないわけで、したがって、尊敬というと少しおおげさですが、英語でいうところの”Respect”の精神がとても大事になってきます。もしくは、だれに対しても、謙虚になる、という言い方でもいいのかもしれません。

一方で、当然ですが、メンバーの個々人も、Respectされるような人物でなければならない。というわけでして、メンバーそれぞれの、姿勢や価値観、スキルなども、それぞれが高めていく努力をしていく必要があると思うのです。

そういった意味で、「お互いから学びあう」価値観をもつコミュニティというのは、やはり実現するには、それなりの努力が必要になりますが、その暁には多くの果実が待っていると思います。

***

と、ごちゃごちゃと書いてきましたが、ようは、こうしたコミュニティを通じて、そこのメンバーが何らかの形で、楽しくなれれば最高だと思います。私たちはみんな、いくつもの長期的なコミュニティに属しています、たとえば学校の同窓会、もしくは、いまの会社とのつきあい、趣味の仲間など。そうしたコミュニティにもうひとつにこのコミュニティをメンバーのみなさんが増やしてもらって、楽しく長続きできれば、うれしいなと思っています。

2009年1月4日日曜日

EasyCafeに学ぶプライシング術

年末から年始にかけて、インターネットにつながらず、浦島太郎状態でした。いまだに自宅のネット環境は復帰しないままなのですが、今日はイギリスの北部、スコットランドの首都エディンバラにきまして、ようやくホテルのネットにようやくつなげた、というわけです。たかだか、何日かですが、ネットにつながらないと不安に思うのは病気でしょうか。

さて、今日はすこしプライシングについて。

経済学の授業で取り上げられたケースで、easyEverythingがあります。イギリスに本社のあるインターネットカフェチェーン店です。ライアンエアーとシェアを競っている格安航空会社easyJetのグループ会社でもあります。もともとは、供給曲線についての理解を深めるケースなのですが、プライシングの点においても、学ぶべきところがあると思います。

ここのインターネットカフェの一時間あたりの料金は、その店のお客さんの埋まり具合、すなわち、占有率に応じて決まってきます。埋まり具合が少なければ、料金は破格の値段ですむし、混み出すと、料金が上がっていくのです。それも、可変ポイントをたくさんもっていて、ほぼ連続的を価格を動かしています。真夜中は、限りなく安く、昼間それも昼休みや夕方は価格が高くなっていくわけです。



店のキャパシティが一杯に近づくにつれ、すなわち占有率が1に近づくにつれ、価格が急激に高騰していくのも、まさに供給曲線にならっています。これは、資源価格などがある段階まで高騰すると、それ以降、急激に高騰していくのと同じ原理ですね。これは資源には限りがある(という前提が機能している)からこそ、乱高下しているのです。


おお、すごい!これで、売上げアップで、利益を押し上げる!というと、そう単純でもないのがこのハナシの面白いところです。占有率が低いときには、価格を落とすわけで、結局売上げが落ち込み、結局利益上昇にはそんなにつながらないというのが、easyCafeのマネージャーのはなしなのです。なんだ、やる意味がないではないか。

じつは、ライアンエアーがやっているような、可変型プライシングとは少し事情が違うところがあります。航空会社の座席は、同じ商品(同じ時間の同じ便)であって、申し込み時期によって、もしくは顧客セグメントによってプライシングを変えられます。すなわち、同じ商品に対して、価格の差別化ができます。航空券は、かなり前段階で予約すれば安く買えるし、日程が近づくにつれて価格はあがり、最後余った席は、空気を運ぶよりましということで、また安くなるといった感じです。

一方で、このインターネットカフェの場合、その時間帯のすべての席の価格を動かさなければいけないのです。言い換えれば、Price Discrimination(価格の差別化)ができにくいんです。たとえば、真夜中でガラガラのネットカフェで、もっと値段を払ってもいいという人がいたとしても、その人は破格の値段を払うわけで、本来とりえる利益もすべて吹っ飛ばすわけです。

では、そうだと知りつつ、easyCafeはなぜ、こうしたプライシングをしているのか?

その答えは、占有率が高いことに別の価値をもたせているからです。これは学びになります。PCを立ち上げたときに、いろいろなさまざまなバナーが出るようになっていたり、店内が広告スペースになっていたりします。価格をダイナミックに変えることで常に占有率をある程度高くしておくこと可能で、その結果として、広告収入が増えるという仕掛け。占有率が高いということが、また別の価値を生んでいるのです。ここをとりにいくために、可変型プライシングを取り入れているということでしょう。

単純化してまとめると、
 価格の差別化ができないときに、単に可変型プライシングをやってもだめ。
 価格の差別化ができるならば、積極的に可変型プライシングを検討してみる価値あり。
ということになりましょうか。

***

コンサルティングで、プライシングのお手伝いをするときによくクライアントから出る声として、こんなのがあります。価格は、需要と供給で決められるから動かせないとか、商品の開発にコストにこれだけかかっていて、社内ルールで利益率がこれこれで定められているので、価格はこうでなければいけない、といった声が聞かれます。一言でいえば、プライシングに工夫の余地はないと暗に言いたいのだと思います。

しかし、上に書いたように、可変型のプライシングなどはまだその一端ですが、プライシングは、その他にももっともっと工夫の余地があります。たとえば、アンバンダルといって、今まで一体でうっていたモノをバラバラにして、一見安く見えるようにしつつも、じつはまとめて買えば、今まで以上の額になるといった方法もあります。

プライシングはかなり企業側の「色」を出せる奥の深いマーケティング上の重要な施策だと思います。

2009年1月1日木曜日

謹賀新年

あけましておめでとうございます。

昨年は、個人的にも、社会的にも変化の大きな一年でした。会社を休職して、ロンドンに留学のために移ってきたのが、5ヶ月前。新鮮な気持ちでアカデミックな世界で勉強しはじめました。多くの気づきとともに、新しい友人・知り合いが急速に増えていく5ヶ月でした。と同時に、金融危機が一気に顕在化して、それに伴い政治、経済が世界同時テロのように混乱状況に陥り、結果として、実体経済へもそれ相応の影響が出始めました。

なんといっても、ロンドンにきたときに、1ポンド=220円だったのが、急降下をたどり、今や130円前半を彷徨っているのです。今までならばある程度客観的にみられたのが、今回は、生活コストにもろにインパクトを与えるため、この経済の激変を肌で感じることとなりました。きちんと通貨を分散して貯蓄して、為替変動からのリスクを回避しておくことの重要性を理解しました。

それにしても、何とも揺れ幅が大きくなってきた世の中になったものだと思います。80年代後半の米国の株価下落、90年代後半のITバブル崩壊、そして今回のサブプライムローンを発端とした金融危機と回を追うごとに、そのインパクトの範囲も深度も増してきました。

しかし、危機とは、よく表現されたコトバだと思います。「危」と「機」。そう、「危」であると同時に「機」であるのが「危機」。すなわち、危機とは「機」=チャンスでもあるわけです。たしかに、過去の金融・経済危機においても、その後にIT経済の出現、新興国の台頭などと、大きなチャンスもひろがりました。

こうした、振幅の激しい時代とつきあっていくためには、個人としては、今まで以上にしなやかに生きていく必要があるなあと感じています。キャリア力が問われてくるのだろうなと思います。すなわち、どんなところでもやっていける、カルチャー的にも、スキル的にも、すぐ柔軟に対応できるような能力、適用できる能力、学習できる能力が確実に必要だと思います。しなやかさを身につけるべく、LBSでの様々な機会を引き続き楽しんでいきたいと思います。

ひきつづき、日々の出来事を実況中継したり、考えたことの備忘録としてアップしたりと、気になったことをとりとめもなく書いたりと、ゆるくやわらかくブログを綴っていきたいと思います。

今年もみなさま、どうぞよろしくお願いします。

2008年1月1日