2010年2月15日月曜日

組織の中の政治力はどうやって生まれるのか?(その2)

影響力、政治力、権力の源泉は、何なのでしょうか?じつは、色々な議論をみてみると、大きく分けて二つの潮流がありそうです、というのが以前のエントリ:



主張1:影響力、政治力、権力の源泉は、その人のポジションである

主張2:影響力、政治力、権力の源泉は、その人のキャラである



さて、主張1を明確にうたっているのが、この分野の古典、Jefferey Pfeffer教授の「MANAGING WITH POWER Politics and Influence in Organizations」でしょうか。マキァベリの「君主論」の現代版とも呼ばれている本ですが、日本ではそこまで有名ではありませんね。



原著:





日本語訳もあるようです。オリジナルは、1992年発刊ですが、なんと日本版が出たのは去年!いままで訳されなかったのがおかしかったくらいですが、やはりテーマがテーマだけに、なんというかダークな感じがして、今まで訳されなかったんでしょうか?



訳書:





“Our tendency to overemphasize the causal importance of people and their characteristics, and underemphasize the importance of situational factors”

“Although individual attributes are important, my view is that being in the right place is more essential”



と、明確に主張1、すなわち、ポジションが大事と言い切っているわけです。



彼、曰く、ポジションに関わる権力の源泉は次の3つ:



1) リソースのコントロール:予算、設備、仲間を得ることのできる地位

2) 情報に対するアクセス:組織内で何が起きているか、だれが何を考え、何をしているか

3) 権限:組織の中でright placeにいること



さに、そうした影響力、権力、政治力を上手に使うための方法についても、本書では指南しています。



1) 人間のもつ心理効果を使え

2) タイミングが命~やめさせたければ意図的に遅らせよ、やりたければ先制攻撃をしかけよ

3) 情報を政治的に上手に活用せよ

4) 権力を集約できるように、組織を変えよ

5) 権力の象徴として、セレモニー・儀式も重要



具体例がアメリカの政治ばっかりで、日本人の僕にはイマイチピンとこないものの、生々しいアドバイスがぎっしり。



Pfefferが言いたかったことを、乱暴にまとめれば:

  • 何かを成し遂げるには権力、影響力、政治力=パワーが必要!
  • ところが、みんなパワーの話しをセックス以上にタブー視しているが、それではダメ!
  • はっきりいうと、パワーの源泉は、ポジション!
  • そのポジションを獲得し、上手にパワーを行使し、良いことを成し遂げていこう!



みなさんは、どう思われたでしょうか?なかなか、説得力がありますね。そのうち、もう一方の主張もみていきたいと思います。

2010年2月12日金曜日

「感化」が人材育成の鍵ではないか!(その2)

感化されることが大事。




そんなことを目的に、先日は、BBT大学の「世界中からトークセッション」シリーズで、「世界で活躍する若手ビジネスウーマンの実像」というテーマで、オンライン・セッションを日本人若者向けに企画。



動画配信プラットフォームUstreamで映像をリアルタイムで流し、フィードバックはtwitterでリアルタイムで受けるという、BBT大学のユニークな試みです。



ゲスト・スピーカーは、このテーマにぴったりの友人ジュリーにお願いして、今までの活躍っぷりをたっぷりと語ってもらいました。



そもそも、日本にいると、若手プロフェッショナル、それも女性が実際、海外でどう具体的に活躍しているかなんていう情報はなかなか入ってこないのではないかと思っているわけです。



個人的には、議論のファシリテート、同時通訳、Ustream、Twitterへの目配せで忙しい1時間でしたが、なかなか面白い話しが聞けました。私の感化ポイントは、次の3つ!



感化ポイント1:今ある専門知識を組み合わせて希少性をつくり、次を切り開く



「獣医は毎日の繰り返し、もっとチャレンジングなことをしたい」



そう思った彼女は、幼い頃に習った中国語のスキルと、獣医のスキルを組み合わせて、中国における乳製品市場研究プロジェクトを自ら企画してしまう。



企業からのスポンサーを取り付けて、中国に飛び込み、プロジェクトを成功裏に終わらせたことから、製薬会社の国際マーケティングマネージャーの仕事のオファーがきたというわけです。



今ある、専門性を組み合わせて、新しいことを産み出し、切り開いていく力に感化!



感化ポイント2:Open-minded and Flexibleで異文化を受け入れる



異文化があることを受け入れるためには、自分がOpen Mindedにならなくてはいけないね、という指摘。先入観をもってもだめ。その場所を訪れて、あるがままに受け入れる、観察すること、それをまねることからはじまる、と言っていました。



こうした異文化の理解、市場毎のニーズの理解を踏まえて、各国毎に全く異なるマーケティングキャンペーンを推進していくのに感化!



感化ポイント3:女性は女性らしいリーダーシップスタイルがある



Empowermentという言葉を使っていましたが、彼女のいうところのリーダーシップは、男の人のそれとは違っていて、やる気にさせることがもっとも大事なのだといいます。



番組のあと、よくリーダーシッププログラムのフィードバックで、「もっと、こうしなさい、こうしましょう」とバシバシと決めて、指示した方がいい、とも言われるそうですが、彼女にとっては、「それは、私にとって全く意味をなさない」とバッサリ。



女性であれば、女性らしさを生かした、あなたらしいリーダーシップを発揮すればいいに感化!

「感化」が人材育成の鍵ではないか!

内向き志向で元気がないとは、最近の日本人、とくに若者に形容される枕詞のようになっていますが、そうした閉塞感を打開する鍵は、「感化」にあるのではないかと最近、思っています。



こうすべし!と「教育」するのではなく、「感化」される機会を提供する。たとえば、数百年からの江戸時代の鎖国から、一気に近代化の道に突っ走れたのも、西洋のとてつものあい技術力に危機感とともに、「感化」されたから。



また違った例を考えてみれば、ビジネススクールのひとつの大きなメリットは、この「感化」。教授から学ぶこともあるけれども、もっと大きく、かつ重要なのは、ビジネススクールという良質なコミュニティに属しているからこそ、得られる仲間からの「感化」。



そして、人間には、「社会的証明」という原理も働くのは、みなさんご存じのとおり。すなわち、「これが社会的には普通なんだと思えば、それに従おう!」というもの。周りに感化され、社会的証明の後押しで、人は新しいことにチャレンジしていく。



よく、日本はもう世界大国2位になってしまって、ロールモデルを失ったことから、日本の停滞がはじまっているといいますが、これは個人のレベルで考えれば明らかに間違い。



こちらにきてしみじみと気付いたのですが、日本人が学ぶべきロールモデルはゴロゴロといるわけで、そうした存在が日本には知られず、若者がそうした人に感化されていないことが、ひとつのボトルネックになっているのではないかと思うわけです。



自己啓発がブームですが、自己を啓発するのではなく、他人に啓発される機会が、今後の人材育成の鍵ではないかと思うわけです。



ロールモデルを追いかけるのが得意なのが日本人だとしたら、今後のロールモデルをどんどんと紹介し、「感化」をしていく仕掛けが必要です。

組織の中の政治力はどうやって生まれるのか?

民主党の小沢幹事長の振る舞いを観ていると、どこはかたとない気持ち悪さをだれもがどこかで感じ、それが、小沢幹事長退任の国民支持に結びついているような気がするのです。



このどこか気持ち悪さ感というか心のザワツキ感は、何なのか冷静に考えてみると、政治力の威力というか凄さが背後にあることを我々が知っているから、といえます。



というように、政治力といったときに、暗黙の前提で、それはどこかでやましいこと、いけないこと、表向きではしゃべってはいけないこと、という印象はぬぐえない。



とはいえ、ビジネスの世界でも、この政治力、もっと広くいえば、権力や影響力は厳然として存在するわけで、人を動かす上ではこの上ないパワーを発揮する。



そう、絵に描いた餅にならないのは、この手の「力」がどこかで働いているわけで、効率に物事を成し遂げていくには実にプラス。



企業や組織の中で、「あの人は権力があるよね」「あの人の言うことなら」などというときの力は、ときには、影響力とも呼ばれたり、政治力とも言われたりしますが、組織行動の学問では、立派に研究されていたりするわけで、面白いものです。



その研究成果は、ビジネススクールでも、Politics and Powerや、Influence、LBSでもPaths to Powerとして授業が提供されていますね。



そこでは、権力なんてそんなダークなこと、腫れ物に触るようなうしろめたさなく、堂々と表街道をつっぱっしるように、この手の権力をいかに獲得し、いかに有効に行使していくかが議論されるわけです。



さて、この手の影響力、政治力、権力が、とても大事で重要で、物事を実行するのに必要という認識にたったとき、このパワーの源泉を理解することもこれまた大事。



影響力、政治力、権力の源泉は、何なのでしょうか?



じつは、色々な議論をみてみると、大きく分けて二つの潮流がありそうです。



主張1:影響力、政治力、権力の源泉は、その人のポジションである






主張2:影響力、政治力、権力の源泉は、その人のキャラである



主張2が、その人に内在する性格、リーダーシップスタイル、「っぽさ」がパワーの源泉であるといっているのに対して、主張1はもっと外的なもの、つまりその人のおかれている状況がパワーの源泉といっているわけです。



戦略論を少しでもかじったことのある方だとすぐ気付くかと思いますが、どこか、企業の利益は、主張2:その企業のもっている能力で決まるか、主張1:その企業のいる業界で決まるという議論と似ていますね。



というわけで、みなさんの考えは、主張1に近いでしょうか?それとも主張2に近いでしょうか?



このブログでは、(そのうち)それぞれの主張をみていって、そのあとは個人的な考えを書いていくことにしましょう!