2010年5月29日土曜日

Harvardによる自己否定の書~Rethinking the MBA

ハーバードビジネススクールの教授陣による、ビジネススクールの課題を浮き彫りにしたかなりの意欲作。



こうした自己反省の研究をし、それを世に問うというのは、ビジネススクールを代表するハーバードならではだと敬意を表したいと思います。


今のビジネススクールの立ち位置がよく分かります。









ビジネススクールの学長ら数十人、企業のエグゼクティブ、各ビジネススクール在校生へのインタビューを通して、MBAプログラムの何がダメなのか、トップビジネススクールはそれらにどう対応しているか、今後ビジネススクールは、どうすべきかを語っています。



また、Chicago Booth、INSEAD、CCL、Havard Business School、Yale、Stanfordについては、詳細なケーススタディも書いてありますので、これからMBAを検討している方にも面白く読める内容です。





(著者の一人がRethinking the MBAを語る)





さて、この研究が明らかにしたMBAの8つの課題とは、以下のとおり。



1.Gaining a global perspective

国をまたいだ経済や文化の違いに直面したときのマネジメントスキルを身につけさせるべき



2.Developing leadership skills

もっともっとリーダーシップをみにつけさせるべき。とくに自らをしる、実践が弱いね



3.Honing integration skills

マーケティング、戦略などと機能毎に学びがちなMBAだけど、もっと分野横断的なスキルを身につけさせるべき



4.Recognizing organizational realities and implementing effectively

ドロドロした組織を実際にどう動かすのかを身につけさせるべき。分析だけでは組織は動かないよ



5.Acting creatively and innovatively

分析もいいけど、もっと発想豊かに、ブレークスルーするようなソリューションを紡ぎ出す力をみにつけさせるべき



6.Thinking critically and communicating clearly

MBAって、コミュニケーション下手。やっぱりロジカルにクリアに意見を述べる力をもっと磨いてほしい


7.Understanding the role, responsibilities, and purpose of business

ここから二つのポイントは、金融危機以降出てきた課題。利益以外の企業のゴールも意識すべきとかそんな話し



8.Understanding the limits of models and markets

前提をつねに疑うことでリスクについて常に考えるべき。現在のモデルの限界を知るべき。



という八つ。



さて、この8つの領域は、多かれ少なかれ、この書籍でも語られているように、どこのビジネススクールも取り組んでいるものばかり。今のビジネススクールの取り組みを正当化している書ともいえなくもない。



というわけで、ここで取り上げられている課題は、改めて新しい課題かなぁという気もするけれど、膨大な定性データにもとづいて、系統立てて課題を整理したところにこの研究の価値があるのでしょう。



じつは、MBAの本当の課題は、あるとすれば、もっと別なところにあるのではないかというのが私見。それは長くなるので、また別途投稿していきます!

2010年5月28日金曜日

学びは21世紀、最高のエンターテイメントに

どうやら、私は「学び好き」のようです。



友人の中にはもう1年半以上も授業を受け続けて、「授業疲れしちゃったよ」という人もいますが、私の場合は、いまだにMBAの授業も楽しんで受講していて、なんで選択科目の受講数に上限があるんだろうと思っているくらい。



実際、「学び」は21世紀最高のエンターテイメントであり、レジャーではないかと本気で思っているわけです。



なんと、馬鹿な、と思うかも知れません。



しかし、このトレンドは、じつはこう考える人は、急速に世界に広がっていて、私のような少数派だけ、とはいえない、21世紀の経済を考える上でとても大事な大事な地殻変動です(大袈裟な!)。



たとえば、例を挙げましょう。



すでに多くの方がご存じの「ハーバード白熱教室」。



ハーバード大学のMichael Sandel教授が繰り広げる哲学の授業が日本を含めて世界中で大人気。



Michael Sandel教授 "Justice"
http://www.justiceharvard.org/







"What's the right thing to do?"を真っ正面からあつかった講義。でも、哲学の授業ですよ!哲学がここまで注目を浴びるのもすごい。若い学生の目が一人残らず、キラキラしている。



実際、彼が紡ぎ出す全く無駄のない、研ぎ澄まされた講義は、私たちに知的遊戯と興奮を与えてくれます。これぞ、21世紀型、最高のエンターテイメントの真骨頂だと思うわけです。



それから、言わずと知れたTED
http://www.ted.com/



-TED is a small nonprofit devoted to Ideas Worth Spreading -- through TED.com, our annual conferences, the annual TED Prize and local TEDx events.





20分のショートプレゼンに人々が拍手喝采を浴びせる、そう、知的興奮がエンターテイメント化している、実際に!



楽しみながら「学び」、自らを成長させていく-いやいや、なんとも、素晴らし時代ではないですか。

ダニエル・ピンクから学ぶ「それ、もう知っているよ」から「やっぱりそれ、大事だよね」への変換能力の価値

書きとしゃべりの天才で、ゴア副大統領のスピーチライターをつとめた、ダニエル・ピンク氏が話題のビジネス書、「Drive: The Surprising Truth About What Motivates Us」を出版しました。いかに今の企業が人のモチベーションについて間違った理解をしているか、人は何にモチベートされるかを語った本。











本を読まないまでも、内容のエッセンスは、彼の名スピーチはYoutubeで観ることができます。20万回以上も再生されている人気動画のひとつ。TEDのページへ行けば、日本語字幕でも観ることができます。

(http://www.ted.com/talks/lang/eng/dan_pink_on_motivation.html)



もちろん、内容は素晴らしく多くのメディアでも取り上げられていますが、この本の驚くべき重要な示唆はもうひとつあると思うのです。それはなにか。



ひとことでいえば、ここに書かれている内容は、アカデミックの世界ではすでに50年前に知られている内容だということです。それを、大衆に分かりやすく伝え直していること自体がとてつもなく大きな価値になっていることをこの本は知らしめているように思うのです。



この本のひとつの強いメッセージは、「クリエイティビティが要求される仕事には、内的動機が効果的で、アメとムチ的な動機は害になる」というもの。でも、なんだかんだいって、企業ではアメとムチ的な動機を使いがち、もしくは内的動機にあまり注意を払ってはいない。



もっといえば、そんなことアカデミックの世界でも分かっているし、ビジネスパーソンであればどこかで聞いたことのある話。当たり前の話しでしょ、と片付けられる程度のメッセージかもしれない。でも、実際の企業現場をみると、実践できていない。



こういう話しは世の中にたくさんあるわけで、他にも、「顧客志向は大事」とはよく言うし、それを知らないビジネスパーソンなど今世界のどこをみてもいないでしょう。でも、実践できているか、いつもそのことを意識しているかというとそれは疑問。



すでに既知の内容だったり、なんとなく知っている内容で普段ならあまり注意を払わないような内容を、「あ、そうだよね!それ、やっぱり大事だよね」と思ってもらえるような、既知コンテンツ翻訳能力の価値の威力を、ピンク氏の本から感じるのです。



今は知識ならばグーグルで検索すればおしまい-そう言われて久しいです。だからこそ、「あ、それ、もう知っているよ、聞き飽きた」から、「あ、そうだよね!それ、やっぱり大事だよね」と言わせる既知コンテンツ翻訳能力がますます大事になってきているのではないかと思うわけです。



そして、教育-とりわけビジネススクールのような社会人教育-は、いかに「あ、それ、もう知っているよ、聞き飽きた」から、「あ、そうだよね!それ、やっぱり大事だよね」という変化を起させるかが大事。

2010年5月16日日曜日

イギリス版 モン・サン・ミッシェル~St. Michael's Mount


イギリス版 モン・サン・ミッシェルこと、St. Michael's Mount

モンはMount、サンはSaint、ミッシェルはMichale
だから名前も同じ!

フランスのモンサンミッシェルと同じように
潮が満ちているときは島になり(上の写真)、
潮がひいたときだけ、陸続きになる



潮がひいてくると、鮮やかな緑の苔が姿をあらわす



そして、Michael's Mountへ続く道を歩くことができる

一日の中でストーリーがあるから人を惹きつけるんでしょうね!
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暖かいもてなし:MOUNT HAVEN HOTEL


One of the world's top 20 hotels on a budget...Sunday Times

ローカルの人に教わったこじんまりとしたホテルで週末を過ごす
日本でもフィガロに紹介されて、日本人で訪れる人が多いんだとか

春をたっぷりと堪能した、ああ、気持ちのいい週末でした


小さな庭園に鮮やかな色彩が目を惹きます
うちの子は、くるくるとこの庭を走り回っていました

ラウンジから見渡す海とSt. Michael's Mount
そう、ここはイギリスの最西端にあって、海はすぐそこに

ここでいただく夕食はアタリ
食材の味を生かした日本人好みのテイストです


内装はどこかアジアン
日本人画家のIzumi Omoriさんの桜をモチーフとした絵が春を演出

ぬくもりを感じさせる暖かいプチホテルでした
おすすめです
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2010年5月10日月曜日

英語をしゃべれるようになるための「10歳の法則」

猫も杓子もグローバル、国際化と叫ばれて、英語の必要生はますます高まっている風潮の中で、「ああ、ネイティブのように英語をぺらぺらとしゃべれたらなぁあ」と思う人も多いのではないかと思います。いわゆる、バイリンガル(日本語も英語もぺらぺら)への憧れです。

じつは、英語をぺらぺらにしゃべれるようになるためには、「10歳の法則」なるものがあるのです!

まず、その一。帰国子女はだれもがみな英語をぺらぺら、バイリンガルかと思っている人もいるかもしれませんが、じつは、必ずしも正しくありません。

たとえば、私も3歳から7歳イギリスに小さい頃住んでいましたが、残念なことに、バイリンガルではありません。発音は、きれいだねぇ、とよく言われることはありますが、本人としては、断然日本語の方がしゃべりやすいわけです。

でも、今でも憶えていますが、7歳の私は、日本語よりも英語が得意で、むしろ日本語の発音に問題があったくらい。日本に帰国したときには、小学校のともだちによく笑われたものです。

10歳より前に日本に帰ってくると、日本語の環境にあまりにもすぐ適応して、あっさりと英語を忘れてしまうわけです。そうなのです、10歳をまたいで海外に住まないといけないのです。

さて、その二。10歳以降に海外に住み始めた場合どうなるでしょうか?

もちろん、日本で英語を勉強するよりは、確実に上達します、間違いなく。ところが、発音の面などで、完全にはネイティブにはなれない。やはり言語を学ぶ能力は、10歳を越えて少し衰えるらしいのです。

ここでもやはり、10歳より前から現地に住み始めることが重要そうです。

みなさんの周りにいるバイリンガルを思い浮かべてください。その人は、何歳のときに海外で生活をしていたか?

そう、10歳は大事な歳なんですね。

海外に移り住むとまでは言わないまでも、この意味するところは、言語を学ぶには、10歳をまたいで、継続的に学習することが鍵といえそうです。

英語が堪能な国民は、この10歳の法則をじつにうまく使っています。たとえば、フィンランド人は、かなり英語が流ちょうですが、彼らは9歳で英語の学習をスタート。インド人は5歳でスタート。さて、一方、日本は、12歳でスタート。この10歳の法則を見事に違反しているといえそうです。

英語をしゃべれるようになるための「10歳の法則」。まったく学術的な裏打ちはないけど、信憑性高いと密かに思っている仮説のひとつ。

2010年5月9日日曜日

LBSの組織行動は何が学べますか?

LBSの組織行動は何が学べるか?というご質問をコメントにいただきました。

LBSの必修科目では、

Global Leadership Assessment for Managers
360度評価やセルフアセスメントをもとにしたリーダーシップ・トレーニング
Global Leadership Development Programme
コミュニケーションを中心とした実務的なトレーニング
Managing Organisational Behaviour
いわゆる組織行動の基礎を学ぶと同時に、実際のプロジェクトを通じて理論を適用

選択科目で、OB (Organisational Behaviour、組織行動)と言われているのは、次の科目があります。

Leading Teams and Organisations
“The course was successful in equipping me with a toolbox to proactively lead my team and organisations in the future.”
“One of the best aspects of this course was splitting into teams to be able to get the opportunity to become a leader and get 360 feedback.”

Managing Change
“A key challenge for senior managers is managing the process of change in organisations. This elective, that has proved popular for many years now, looks in a practical way at how to lead that change.”

Negotiation and Bargaining
“Very interesting, informative, lively. Really loved the course. I’ve learnt a lot. Really practical, useful and confidence building” (student)
“This course is a vital part of business life and should be considered almost compulsory” (student)
“Should be a core course. One of the most valuable 30 hour investment I’ve made at LBS.” (student)

Family Business: A guide for owners, managers and advisors
“There is a duality to family firms. On the one hand they regularly outperform non-family businesses - both listed and unlisted – and on the other, they seem especially vulnerable to death, difficulties and damage from a range of hazards. We shall explore how firms can capture the benefits whilst avoiding the pitfalls. It will be an intensely practical programme, with a substantial but unobtrusive theoretical underbelly.”

Paths to Power
“If you don’t take up your power, you can be sure that others will. Their aims may not be as worthy as yours. If you are not careful, you can become a victim of the power of others. Understanding where power comes from and how to take it up are critical skills for success in organisations, as well as successful organisations.”
Shadowing Project

そのほかに、OBといわれる分類ではないけれど、関連する科目が、Managing Corporate TurnaroundsManaging the Growing BusinessStrategic InnovationAchieving Strategic AgilityStrategies for Growthあたりです。どれも、変化をどう先取りし、どう対応するかを考えます。

個人的には、組織行動関連の科目は、もっとあってもいいのではないかと思いますが、面白い教授陣も多くいますので、そうした人達のプロジェクトに混ぜてもらうのもひとつの学び方です。

私は、Future of Workの研究をしているリンダ・グラットン教授の研究に興味をもっていたので、それに参加させてもらっています。研究の進め方自体もユニークで、巨大なオンラインコミュニティに、各国から実務家が議論をしていく中で、未来の働き方をあぶり出していくというものです。毎回、このコミュニティにログインする度に個人的にも新しい発見があります。

また、私の場合、修士論文もある意味で、組織行動論的なトピックを選びましたので、それを通しても、学ぶことができます。

というわけで、LBSの組織行動は何が学べるか?というもとの質問に戻ると、上記の必修科目と選択科目にあわせて、自分でプロジェクトに参加、組成することで、いかようにも学びは広がると思います。

LBSビジネスプランコンペのファイナリストへ!

ここ、LBSで学んでいることの一つの柱が、組織・教育だとすれば、もうひとつの柱は、起業家精神(アントレプレナーシップ)です。ヒト系アントレ系、この二つ。

じつは、アントレについては、ビジネススクールに来る前は、柱といえるほどプランに入っていなかったのですが、自分でふたを開けてみてびっくり、LBSの風に吹かれているうちに、それをLBSでの専攻のひとつとするほど、力を入れている分野となっています。

この数ヶ月取り組んでいたのが、ビジネスプランを書きあげること。

LBSの恒例、ビジネスプラン・コンペティションに応募したところ、運良くファイナル5組に選ばれることになりました。

このコンペは、12th London Business School Entrepreneurship Conferenceの一部で、ファイナリストに選ばれると、VC、エンジェルを含め、数百人の聴衆の前でプレゼンができるというもの。
http://www.londoneconference.com/index.html

残念ながら、優勝はできなかったのですが、そのプロセス自体と、多くのフィードバックを受けたことが、面白く、かつ大変学びになりました。

ひとことでいえば、最近はVCやエンジェルから資金を集めるためのハードルが高まっているということ。彼らの興味を少しでもひきたければ、やらなければいけないこと:

ビジネスプランよりも、もう始めていること
顧客調査やパイロットよりも、すでに顧客がいること
ポジショニングよりも、しっかりとしたオペレーションを回せること
商品の説明も大事だけど、やはりマーケティングも大事
投資家へのピッチは、ユーモアと真剣度のバランスが大事


優勝チームは、アフリカからの送金ビジネス。このチームを率いるリーダーは、自分がテロリストと間違えられ送金できなかったユーモアのあるエピソードを交えて、顧客ニーズを説明するとともに、そのビジネスを実行するのに必要な技術・スキルを十分アピールしていました。

さて、MBA生活も最後の学期となりましたが、残りの期間も、組織・教育論はより深める、起業家精神は試してみる、というのりでいきたいと思います。