ミニ・コンがパソコンにとって変わられたように、新しい技術を取り入れた新興企業が、その業界のリーダーを駆逐していくストーリーは、枚挙に暇がありません。そのメカニズムを名著“イノベーションのジレンマ”で明らかにしたクリステンセンは、教育がまさにその状況にあることを“Disrupting Class(邦題:教育×破壊的イノベーション”で説いています。
彼の理論がここまで、爆発的に普及したのは、その理論が誰も批判することなく、傷つけることなく、明快な主張を展開していることにあると思うんです。というのは、リーダー企業が新興企業にやられてしまうのは、別にリーダー企業が怠惰だから、というわけではないと主張するのです。
いや、むしろ、リーダー企業は合理的できちんとした意志決定をしたが故に、新興企業に新しい技術で打ち負かされる、まさにそのジレンマを説いた。リーダー企業の立場を認めたからこそ、リーダー企業も受け入れられる理論となり、結果的に多くの産業、ビジネスリーダーに影響を与えるようになったわけです。
このあたりの手腕は、大いに勉強になります。そう、受け入れることで、相手を変えさせる、まるで武道の技のようなそんなしなやかさを感じさせるのです。
もちろん、この“イノベーションのジレンマ”の教育産業への適用本においても、このマジックは顕在で、前段では、従来の教育方法を大いにもちあげていきます。批判されることの多い教育業界にあっても、じつは平均スコアを見ると、努力の甲斐あって伸びていることが定量的に示されます。
しかし、現状の方法の延長線上、すなわち、持続的イノベーションでは、未来はなく、速かれ、遅かれ、破壊的イノベーションにとって変わられると言い切っています。
では、教育における破壊的イノベーションは何か?
クリステンセンは、コンピュータベースの学習、もっと端的にいうと、特にオンライン学習だというのです。この本では、そうした地殻変動がすでに起きていて、アメリカでは、着実にオンラインコースが増えていることを指摘しています。現在では、教育のコースの中で、現在は、1.5%がオンラインで提供されていて、これはこの3年間で倍増、そのスピードの加速度はどんどんついているというのです!
過去の破壊的イノベーションの普及パターンを外挿すると、2020年には、全コースのうち半分がオンラインになると予測しています。これは、びっくりさせられる数字です。そのときは、教育の風景は全く今からだと創造できない世界になっているのでしょう。ちょうど、10年前にYoutubeの出現を予測できなかったように。
London Business Schoolもウェブ的な技術や新しい技術におっこなびっくりです。授業はやはり王道をいく感じで、リアルなケースディスカッションが最適化されるように、教室、視聴覚設備が配備されています。あるディレクターと話したときは、「そういったものは取り入れたいけど、今はまだ」というようなニュアンス。最大のネックは、「教授がそういうのを取り入れるのに積極的ではない」とのこと。年代を考えてみればそれはそうかもしれない。
とはいえ、そうは言っても、速かれ遅かれ、それでは立ち後れてしまうことは明白なので、友人とこのテーマで、London Business Schoolをクライアントにコンサルティング/プロジェクトをやろうと話しています。
おっと、脱線しました。要は、学校の中でも比較的に変化に敏感なビジネス・スクールでさえ、この状況だということを伝えたかったのです。
そして、先日のブログで紹介し、私も関わらせてもらっているビジネス・ブレークスルー大学は、クリステンセンの言うところのコンピュータベースの学習を主体としていて、ああ、この大学がこれから、破壊的技術を持ち込んでいくんだと思うわけです。
2009年8月18日火曜日
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