通常、ブランドには、「音=ことば」とそれを象徴的に体現する「ロゴ=マーク」があると思います。たとえば、Macで有名な会社は、アップルという音ともに、りんご模様のロゴがあります。
ブランドというものが、一般的には、”A name, term, sign, symbol, or design that identifies and differentiates the products or services of one seller from those of other sellers”といった風に定義されるのだとすると、サインやシンボルだけを使ったブランディングというのはありということになります。
具体例-マーケティングのクラスでブランディングをあつかったときのケースは、ユニリバーのアイスクリーム事業。ユニリバーはブランドの買収に次ぐ買収を繰り返し、ヨーロッパではシェアトップのアイスクリーム事業をもっています。
しかし、課題はなんといっても、そのブランド数の多さ。なんとも、1,600もの大なり小なりのブランドを抱えてしまっている始末。ブランドの統合をするといっても、食料品のブランドはきわめてローカルに密着したものであって、そうヤスヤスとは変えられない。
一方で、こんなにもブランドを抱え込んでしまっては、たとえば広告ひとつとっても、規模の経済を効かせられないというデメリットがあります。有名なサッカーの試合でスポンサーするにしても、統一されたブランドがないので、広告の打ちようがない。
そこで、ユニリバーが考えたのは、ブランドの名前はそのままにするものの、ユニリーバ-のアイスクリーム事業ですよ、とシグナルを出すために、共通のロゴを商品につけることにしたにしたそうです。今でも、ハートマークのロゴがすべての商品についていて、このロゴを見ることによって、消費者がイイ認識をもってもらうというもの。
たとえば、これは学校の売店で売っているアイスリームですが、こんな風にしてマグナムというアイス名にそっとロゴがあしらわれているのが分かります。 (MAGNUMという商品名の上にハートマークがある)
別の例ではこういう感じ。ある雑貨店の前にかざってある看板で、これは別の商品ですが、また同じくユニリバーのアイスクリーム事業に属するので、このハートマークがあしらわれています。
今でコソ、授業で取り上げられたので、このロゴマークに気づきますが、それまで半年間住んできて、一切認知せず、です。また、広告宣伝などは、すべて商品名をベースにして行われているので、そのハートロゴの存在にそれほど気を止めないのが実情なのではないでしょうか。
そもそも、人間がブランドを認識するときは、仮にそれがロゴを頭の中にイメージしていたとしても、やはり言葉=音が必要なのではないでしょうか。われわれが知っている有名ブランドは、そのロゴを容易に想像できるのと同時に、そのロゴがもっている音もあわせて理解しているのが通常です。
これは、思考と言語が密接に関連している人間の脳の構造に起因していると思います。
一方で、先生の方は、私のこの見方にやや消極的で、「ほら、Nikeをみてごらん。彼らは、あのマークしかTシャツとかのせてないではないか」とは言うものの、やはり、あのマークをみた瞬間、われわれは「ナイキ」という言葉を想起する。
Nikeのあのマークは、音をもっているということになります。実際、Nikeは過去には、名前とロゴをあわせて宣伝していたときもあるようです。
そういったわけで、いまだにユニリバーのアイスクリーム事業が行っている“名無しのブランディング”は、一体どれほどの効果があるのだろうかと思っているわけです。ブランディングにおけるロゴやシンボルの意義というのは、面白い研究分野でしょうね。
2 件のコメント:
こんにちは先日スカイプでお世話になった広告代理店勤務のものです。なにやら興味深い話題だったので思わず。
結局のところブランドマークに意味があるかないかは、消費者のパーセプションに依存します。「ナイキのマークの認識」⇒「ナイキのブランドアセット(ファッション性、ステータス、高品質等)の想起」⇒「購買意欲の喚起」となるわけです。
マークを露出すれば意味があるというのはやや短絡的ではないでしょうか、そのマークに何を連想させるか、ということこそ必要な視点だと思います。
結論としては、一生懸命ハートのマークを露出することにはなんの意味もないでしょう。それが、たとえば「おいしい」「安全」などの価値を連想させる戦略があれば、音声を伴わなくとも十分に意味はでてくるかと思います。例えば、ハイグレードラインナップにだけつけるとか。
NSさん
早速コメントをいただいて、貴重なご意見、ありがとうございます!
そうなんです、まさにおっしゃるとおり、「ナイキのマークの認識」⇒「ナイキのブランドアセット(ファッション性、ステータス、高品質等)の想起」⇒「購買意欲の喚起」となればいいわけなんです。
で、ここで私のひとつの仮説は、ナイキのマークの認識→ブランドアセットの想起という思考プロセスを経る過程で、「ナイキ」という言葉そのものが重要な媒体となっているのではないかというものです。もし、ナイキという音がなかったとしたら、今ほどの効果があったかどうかという問題意識。言葉自体がブランド形成に一役をかっているのではないかという問題意識。
ところで、ユニリバーも、ハートマークに対して、Indulgenceという価値を想起させるようなプロモーションを打ちました。しかし、そのイメージは、さりげなく露出するハートマークと関連づけられるより、マグナムといった商品名の方にむしろ関連づけられてオワリというのが私の印象です。
教授とも少し議論してみましたが、今のところの定量的な議論は彼の知るところないようで、いろいろ試す価値はありそうです。
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