2009年12月7日月曜日

Eメールを上手に書けますか?

みなさん、Eメールを上手に書けるでしょうか?

私たちは誰でも、何気ないEメールをもらっては喜んだり、何気ない励ましの言葉がうれしかったり、はたまた、メールでドキッとさせられたり、怒ったりとしているのではないでしょうか。誰かからの返答を長らく待ったり、きつい依頼分を送ったり。

メールは実に私たちの日常の喜怒哀楽といった感情と密接になってきていると思うのです。

ビジネスにおいてもメールは重要で、マネージャーならば、最低1割、多い場合では2,3割の時間、もしくはそれ以上の時間をメール処理に使っているはずです。最近はブラックベリーやiPhoneが出てきたおかげでもっと増えているかもしれませんね!

この時間の多さは半端な量ではありません。私たちは、莫大な時間をメールに注ぎ込んでいるといえます!

でも、これだけ、私たちの生活にインパクトがあるにも関わらず、この「メール」という響きが軽いのか、こちらのマネジメントの教授に聞いてみても、まだそういう分野(すなわち、マネジメントにおけるメールの効果的な使い方とか)はまだまだないのだそうです。

日本から送った1冊にこんなのがありました。ぱらぱらと読んでみると、これがスゴイ。じつによくできているんです。



つまるところは、英文のメールの書き方なのですが、タダ単に例文が並んでいるのではなく、相手との人間関係におけるパワーバランスや、依頼する内容、礼儀などに応じて、事細かに例文が分析とともに掲載されてあるのです。

とくに巻末の「状況別」依頼表現100 (100 ways to ask)は圧巻です。“フレーズは、ソフト(丁寧)な表現から徐々にキツイ表現になるようリスト化されている”とのこと。

「FastPACK(架空の配達サービス名)で送ってください」という依頼が100通りに並んでいるのです。

たとえば:

非常に丁寧
Do you think you will be able to send it by Fast PACK?

丁寧
I hope you’ll be able to send it by FastPACK.
I wonder if I could ask you to send it by FastPack?

ソフトかつポジティブ
I would be grateful if you would send it by FastPACK.
Could I trouble you to send it by FastPACK?

礼儀正しいがちょっとキツイ
I think we need you to send it by FastPACK

礼儀正しいが相手にノーと言わせない
Would you send it by FastPACK?

直接的な命令
We expect you to send it by FastPACK.
I advise that you send it by FastPACK.

というわけで、この本、読み物としても面白い。
改めて、コトバは、表現豊かになりうることを再認識させられた一冊です。

話しは戻って、メールのビジネスにおける重要性は高まってきているように思います。この本のようなノウハウがもっと共有されてもいいかと思っています。何かおすすめのサイトや本などがあったらぜひ教えてください。

輝くためには(2)

以前のエントリーの続きです。かなり前になってしまいましたが、続きを綴っておきたいと思います。

以前のエントリーから一部抜粋

“今の日本では、Gratton教授がいうところの、Hot SpotやGlowできる環境というのは減ってきているのかもしれない。経済が成熟してしまい、プロジェクトX的な熱くなれる場所、燃えることのできる場所が減っているのかもしれない。

もしそうだとすると、輝くために、個々人ができること、企業ができることがあるというGratton教授の主張は、日本にとって、大きな意義をもつことになるような気がするのです。彼女は、壮大なことを主張しているわけではなく、ごくごく「そうだよね」と思えることを言っていますが、その内容はまた今度”

さて、その輝くための3つの原則とは、コレ。

協力する力
異なる世界から学ぶ力
やる気に火を灯す力


さらに、この力が、

あなた自身にあるか?
あなたのチームにあるか?
あなたの組織にあるか?


というように、3つのレベルでチェックすることを進めています。この3×3のマトリックス、すなわち9つをチェックすることで輝き度とその処方箋が分かるというのです。詳しくは、ぜひこの本を手に取ってみてください。時間があれば、ぜひ訳したいくらい。



さて、さっきの3つの力に戻ります。当たり前のようでいて、自分の反省を込めて考えてみると、仕事が忙しくなってきたり、疲れてきたりすると、意外とできなかったりするもの。たとえば、こんな具合に。

協力する力
→何とか自分で問題をねじ伏せようとしてしまうが、結局時間がかかってしまう
異なる世界から学ぶ力
→切羽詰まっているので、何とか身近にあるノウハウで処理しようとしてしまう
やる気に火を灯す力
→心身ともに削りながら、とにかくこなす、終わらせることに終始する

と、こう書くと、じつはこういう症状の日本企業は多い気がしてきてしまうのです。しかし、悲観していても始まりません。

Good Newsは、この3つの力を企業「外」に求める活動が若手のビジネスパーソンを中心に広がっているのではないかというのが私の勝手な仮説です。これは、この夏に短期的に日本に戻った折に感じた印象です。

たとえば、勉強会ブーム。たとえば、ビジネススクールブーム。たとえば、他企業への自主的なコンサルティング。たとえば、NGOへの活動。たとえば、ボランティア。

10年も不況というニュースが長らく続くと、どこかでその憂鬱な雰囲気を鬱憤すべく、こうした活動に繋がっているのではないかと思ったりするわけです。

問題は、ここが肝心なのですが、それがなぜ企業内に起きないのか?ということなのです。この3つの力を発揮したいと願っている、そういう場を求めている飢えたビジネスパーソンはいるんだけど、その場が社内にないのが問題なのではないか。

だとすると、この当たり前に思える3つの力の重要性に再認識させられるのです。

2009年12月5日土曜日

ビジネススクールからみた日本(その2)

World Economyの授業で、日本はどう紹介されたか?の続編です。前回はこちら

当日は、Tokeo Hoshi教授 (University of California)もクラスにコール・インをして、1時間ほどレクチャーをしていただきました。

なぜ、日本はこんなに停滞が長引いているのか?二つの考え方が示されました。

一つ目は、基本的に次の3つの失敗によるというもの。
1. 財政政策の失敗
2. 金融政策の失敗
3. 不良債権処理の失敗

財政政策に関しては、景気がまだよくなっていない97年の時点で緊縮財政路線に少し切ったのが失敗だったというもの。金融政策も同じようなロジックで、まだ回復していない段階で、金利を少しあげたのがダメだったというもの。不良債権処理は着手が遅すぎたというもの。

もう一つ、紹介されたのは、東大のHayashi教授の考え方。Total Factor Productivity(TFP、生産性)が落ちているという考え方。

経済の成長には、資本、労働、TFP(技術など)が必要ですが、日本はこのTFPがずっと低下してきている、ということです。そもそも、生産性が低い、すなわち金融の問題ではなくて、構造的な問題を抱えているという指摘です。

たとえば、銀行システムが機能していなくて、いまだにゾンビ企業に融資しているとか、労働の流動性がないために、なかなか新しい産業に人がいかないとか、そういう話しです。しかし、これらの改革は遅々として進んでいないというのがもっぱらの見方です。

明らかに二つの理由のうち、後者が本質的な理由だと思いますが、マクロ経済の弱いところは、問題解決の段階になると、急激に無力化するというか、具体論にかけるというか、そんな印象をもちます。

そして、こんな講義資料にはこんなコメントも:
“Amazing that a country that in many ways remains at the frontier of new technology has struggled so much in achieving productivity growth”

技術立国の日本が技術や生産性で悩む何て、不思議だねぇ、という指摘。やはり、ここはミステリアスであるようです。前回の冒頭の話しに戻りますが、ここに成熟社会の難しさの本質がある見え隠れします。

2009年12月2日水曜日

ビジネススクールが見る日本とは?

World Economy and Future Prospectsのクラスの最終回は、Japan。この授業は、全10回に渡って、各地域のマクロ経済状況や、最近の経済的な話題を概観するというもの。

カバーしたエリアは、ユーロエリア、アメリカ、南アフリカ、中国、インドなど。その他のトピックとしては、グローバリゼーション、金融危機など。一応、まだ世界第二位の経済大国だからかどうかは分かりませんが、有り難いことに、一コマ日本が入っているという感じです。

それでは、ビジネススクールは日本のことをどう見ているのでしょうか?

日本への関心は?


このクラスは、出席をとりません。したがって、そのクラスの出席状況を見れば、おおよそそのテーマへの関心度が分かるというものです。このクラスの出席状況はどれだったでしょうか。私がザッと見るところ、出席率は50%といったところです。驚異の低出席率!

さて、次回以降、日本は一コマ維持できるでしょうか?考えようによっては、日本をはずして、アジア全域で語ったり、ロシアにもっとフォーカスしたりとか、色々とクラス・ポートフォリオの組み直しはできそうですが。

さて、低出席率に話しを戻すと、たしかに、最終回でモチベーションが下がってきている、試験で忙しいという理由も考えられなくもないですが、この意味するところは何でしょうか?

経済・政治という側面からみた日本への関心度は極端に薄れていることを実感するともに、このクラスのFuture Prospectsに対しても憂慮したい気分にさせられるのです。一方で、文化・食に対する関心は明らかに高いように思いますので、全てがダメなワケではないのが救い。


日本はミステリアスな国?

冒頭のクラスメートの質問:

“日本は、イノベーションを次々とやり、テクノロジーはすごいし、日本に行くと、ありとあらゆるものがよくOrganiseされているし、きれい。一方で、ニュースを通して聞こえてくる日本は、失われた10年、長期低迷などGloomyなものばかり。この矛盾は何なのか?”

なるほど。

週に何回かコンサルティング・ファームの模擬インタビューを日本企業を題材にケースを出しているのですが、ほぼ100%の学生は、「日本は、Technologically advancedな国だから・・・」という枕詞をつけてくるので、そういうパーセプションなのでしょう。

にもかかわらず、たしかにFinancial Timesなどから聞こえて来るニュースは、ここ最近いいいものを見たことがあまりない。ここが外国人にとって、日本のミステリアスな部分なんですね。

教授の回答は、Good question。難しい質問がくると、先生はこういう傾向があります(笑)。たしか、言っていたのは、これはDeveloped Countryの直面するチャレンジで、西欧諸国も参考にしないといけない。均衡点に達してしまったので、Total factor productivity(技術、生産性など)を押し上げる構造的なリフォームをしないとダメかもしれないというもの。

まとめると、スゴそうなんだけど存在感がない国、という感じでしょうか。

次回は、クラス内容のポイントについて。

(続く)

2009年11月30日月曜日

「信頼力」とはリスクをとること

元ボストンコンサルティングファームで、今はドリームインキュベータを率いる堀紘一氏は、「今の若者は信じる力は弱い」と言い切ります。すなわち、最近の傾向として、信頼する、そういった力が弱まってきているというのです。

ビジネスにおいては、信頼=TRUSTが大事。そう言われます。でも、一体信頼するとはどういうことなのでしょうか?また、信頼がなぜ、ビジネスにおいて(いや、もちろんそれ以外でも)大事なのでしょうか?

じつは、Madan M. Pillutla教授の論文の中で、”Trust Involves Risk”というフレーズが出てくるとおり、信頼するとは、リスクをとることに他なりません。信頼するとは、相手が返報しないリスクを認識しつつも、何かを与えることといえます。

たとえば、何らか重要な情報を相手に与える際、もしかしたらその情報は漏洩するかもしれない、その情報を本来の目的に使ってくれないかも知れない、そんなリスクを抱えつつも、相手を信頼するときは、その情報を渡すわけです。

仕事を部下に任せるときも同じです。その仕事を任せたとしても、期待したとおりにできあがってこないかもしれない。でも、その部下を信頼するから、そのリスクを抱えつつも、仕事を任せるわけです。

で、なぜこの信頼することが大事かというと、信頼された相手も、その信頼の重さを感じ取って、信頼してくれた人に何かを返そう、そう思うのです。そこからいわゆる、信頼関係がはじまり、物事が進んでいくわけです。

でも、この初めのリスクをとることができなければ、何も始まらない。

冒頭の質問に戻って、なぜ信頼力とでも呼ぶべき力が落ちてきているのか?それは、昨今のリスクをとりたがらない若者の嗜好が原因で、信頼するという行為の中にあるリスクをとることを避けているからではないか、そんな風に読み解くことができます。

"Trust Involves Risk”

2009年11月29日日曜日

ロンドンで見かけた風変わりなレストラン

ロンドンで見かけるリテールの業態は、たまに新鮮で、マーケティングでいうところの新しいポジショニングってまだまだあるよね、と感じずにはいられません。新しいアイディアを出すための頭の刺激に、今日は2つのレストランを紹介します。

陶器の絵付けができるカフェレストラン~ビスケット

こんな組み合わせ、一体だれが考えたのでしょう?こんなのあり?そう思えるのがこの「ビスケット」。ファミリーセグメントを狙った、陶器の絵付けができるカフェレストラン。メニューは、子どもを想定して、ケーキ、スィーツが充実。食事は、パン、スープなどが取りそろえてあるとともに、ひとおりのカフェメニューがあります。

よく考えると、ロンドンにはファミリーレストランなるものはなく、家族が落ち着けるカフェ的空間がない。そんな隙間を埋めるかのように、このレストランはオフピーク時間の時のも関わらず、繁盛していました。






おしゃれな回転寿司チェーン~Yo SUSHI!

Wagamamaなどロンドンの日本食レストランを手がけたBruce Isaacs氏プロデュース。日本で回転寿司というと、反射神経的に「安い」と連想しますが、その反対を行くのがこの回転寿司チェーン。内装はおしゃれで少しポップ。客層もカップルなども入っていて、値段もやや高め。ハイセンスなおしゃれ系として回転寿司が位置づけられているのです。ただし、味はイマイチ。




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クリスマスらしくなってきた



近所のショッピングセンター、Brunswick Cetreは、
上品なライトアップに身を包んでいます。
あっという間にクリスマスの時期になってきました。
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経営者が考えるべきビジネスモデルの次に大事なこと

WHAT IS YOUR MANAGEMENT MODEL?
This could be your second important question you ever ask about your business. Here’s how you answer it.
Julian Birkinshaw and Jules Goddard
(クリックをすればダウンロードできます)



MIT Sloan Management Reviewに掲載された論文で、実に示唆に富む内容です。



経営者の悩みはつきません。その最たる悩みは、ビジネスモデル。だれに、何を、どのように提供し、どのように対価を回収するのか。



最近は、その悩みに加えて、そのビジネスモデル実現に向けて、どう目標を設定し、どう実行するのか、すなわち経営のやり方、すなわちマネジメントモデルも選択する必要が出てきていることをこの論文は指摘しています。



たとえば、ゴールドマン・サックスのマネジメントモデルと、Googleのマネジメントモデルは明らかに違います。オーストラリアで仕事の合間に波にのるGoogleの社員と、シティで夜中まで働くバンカー。



もちろん、ビジネスモデルは全く違いますが、それに加えて、経営のやり方=マネジメントモデルも違うことは、直観的に分かるかと思います。



では、一体、何が違うのでしょうか?マネジメントモデルが違うとはどういうことなのでしょうか?この論文は、みなが何となく認識している事実を、明示化したことにその価値があると思います。マネジメントモデルというと、堅苦しいですが、その内容は次の4つの視点です。



1.どのようにゴール設定をするのか?

 明確なゴール設定 or 遠回りなゴール設定

2.どのように動機付けを行うのか?

 お金 or やりがい

3.どのように活動をコーディネートするのか?

 官僚 or 自然発生

4.どのように意志決定を行うのか?

 ヒエラルキー or 集合知



たとえば、どのようにゴール設定をするのか?については、こちらを。ストレートにゴール設定をするのか?遠回りなゴール設定をするのか?その選択をする必要があるというわけです。



活動のコーディネーションについては、たとえば、コンサルティングファームのプロジェクトごとのコンサルタントのチーム編成では、官僚的というのは、会社側でチームを決めていくというやり方。もう一方のやり方として、会社がフリーランスのコンサルタントを抱えていて、クライアントがチームメンバーを選ぶというぶっとんだ事例が紹介されています。そう、会社がコンサルタントをアサインするというプロセスがいらないわけです。



このように、この4つの要素、それぞれに関して、大きく二つの方向性があり、経営者は最適な「方法」を選択する必要がある、というわけです。著者ら曰く、このマネジメントモデルは、経営者の間ではあまり議論されることがなく、過去の継続であったり、経営者のやり方・好みで決まっていることが多いとのこと。



今一度、このマネジメントモデルを見直すことを薦めています。さらには、このマネジメントモデルこそが、競争優位の源泉になることを指摘しています。



企業が勝ち残るためには、何らかの意味において、すごいところ=競争優位が必要です。それは、昔は、商品がすごいということからはじまり、ビジネスモデルがすごい、社員がすごいなどいろいろな「すごい」がありました。これからは、この「マネジメントモデルがすごい」というのも、ひとつの戦い方になるだろうということが書かれています。



マネジメントモデルの4つのポイントを簡潔に説明してあると同時に、それらをサポートする極端な事例も多く散りばめられ、思考が刺激されるおすすめの小論文です。来年にはこの本も出るらしく、そのPreview的な価値もありそうです。

世界を股にかけた週末@グリニッジ

今朝起きたら、ロンドンは快晴!これは出かけるしかない!

世界標準時として有名なグリニッジに行って参りました。じつは、このグリニッジ、ロンドンからそう遠くなく、私が住んでいるRussell Squareからは、188のバスに乗れば、30分ほどでグリニッジにつくことができます。

グリニッジといえば、グリニッジ天文台が有名ですが、現地の人に親しまれているのは、むしろグリニッジ・パーク。さすが、公園が自慢のロンドンとだけあって、広大な公園が見事に広がります。



さらに、グリニッジの町には、大英帝国時代の海軍を育成したその総本山、海運学校があった場所でもあります。これが、旧王立海運学校というわけです。向かって右側が、ペインテイド・ホールと呼ばれる水兵の食堂で、左側が礼拝堂となります。



ペイテッド・ホールの内部は、まさにペインテイド(Painted)というだけあって、見事に絵画が壁と天井に広がっていて、その迫力は圧巻です。このペイントには、20年近くの歳月がかけられているのだとか。さすが、大英帝国、気合いの入り方が違います。



グリニッジ・パークの中にある丘を登っていくと、そこが旧天文台となります。ここからの見晴らしは抜群で、多くの人で賑わっている人気スポットとなっているようでした。遠くに見えているのは、ロンドンの再開発地区-カナリーウォーフですね。成功した再開発地区を横目に、グリニッジにも火がついたのでしょう、ここもいくつもの再開発プロジェクトが街の至る所で見ることができました。



そして、銀色の0度線はここにアリ!そう、私は東半球と西半球を股にかけて、帰途についたわけです。世界を股にかけた日としておきましょう!
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2009年11月27日金曜日

交渉術から「人間くささ」を学ぶ

みなさんは、「交渉」をするでしょうか?じつは、広い意味でとらえれば、だれでも、だれかと、何らかの形で「交渉」していると思います。今日はだれが掃除をするか?子どもの面倒みるか?といったパーソナルなことからはじまり、仕事でいえば、営業や給与交渉、はたまた企業の買収金額の合意にいたるまで、あらゆるところに「交渉」はあるかと思います。



MBAにも「交渉」の授業があり、私もただいま受講中で、イヤイヤ、これがなかなかエキサイティングなのです。なぜかというと、なんというのでしょう、人間のバイアス、弱さ、エゴなど、そうした「人間くささ」を学ぶうえで、「交渉」は打って付けの材料なのです。



ここ最近では、グループ間での交渉を行いました。私たちは、ある学校地区の教育委員会となり、教師組合と交渉するのです。この地区は予算が厳しく、どうやっても教師連合側には、教師のカット、給与カットなどを飲んでもらわなければ立ちゆきません。まさに、気分はさながら、日航の労組交渉?



それも、5時間以上かけて、グループ間で交渉していきます。各チームとも、エクセルで精緻なモデルを作り上げ、多数の交渉項目を確認していきます。授業のための演習なのですが、Executive MBAの学生も含めた大のオトナが実際にどんどん白熱していったのを振り返ると、いやー、何とも不思議なものです。ヒートアップしたあげく、我がチームは、合意に至れず、決裂じまい。



かの名著「影響力の武器」にも書いてありますが、人間というのは、二つのグループにそれぞれ違うゴールを与えただけで、その二つのグループはお互いにいがみ合い、「やつら」「うちら」という概念をあっという間につくりだしてしまうそうですが、今回はまさに、この「やつら」シンドロームを体験することとなりました。



企業内の組織間の対立、牽制、感情的しこりなども、まさにこれ。これが人間の特質そのものなのですよね。というように、こうした「交渉」の演習を通して、人間的くささが浮き彫りにされていくというクラスなのです。



本日は、われわれの交渉をビデオで振り替えながら、何がよかったのか、何がよくなかったのかを振りかえりました。教授いわく、われわれの交渉決裂の致命的な点は、我々側の問題のフレームの仕方。



私たち側の出だしのアプローチは、赤字予算を回避するために、教師側に「お願い」するモードにうつったというのです。現状維持ありきで、それを手放すように交渉を進めたように見えたということです。「お願い、お願い」というモードだけでは、相手としては、そんなお願いばかり飲めるか!というトーンになってきてしまうわけです。



しかし、あるべきは、現状維持はまず無理で、大きな苦しみをこれから伴うことになる。その苦しみをどうやって、「最小化し、共有できるか」という議論に切り替えるべきだという指摘です。すなわち、現状維持はそもそもハナだめ!という設定をすべきだったのです。



このあたりは、プレーヤーとして話しているとそうしているつもりでも、そうはならないので、やはり第三者の冷静な立場が本当の交渉のときにも必要でしょうね。



その他、信頼やフェアネスの生まれ方、結託の仕方、論争のとり扱い方などのトピックスを扱っていきます。そういった意味で、「交渉」の授業というと、やや狭く聞こえますが、じつは、この授業は、「人間くささ」に向き合わせてくれる貴重なレッスンだと思います。