2009年11月27日金曜日

交渉術から「人間くささ」を学ぶ

みなさんは、「交渉」をするでしょうか?じつは、広い意味でとらえれば、だれでも、だれかと、何らかの形で「交渉」していると思います。今日はだれが掃除をするか?子どもの面倒みるか?といったパーソナルなことからはじまり、仕事でいえば、営業や給与交渉、はたまた企業の買収金額の合意にいたるまで、あらゆるところに「交渉」はあるかと思います。



MBAにも「交渉」の授業があり、私もただいま受講中で、イヤイヤ、これがなかなかエキサイティングなのです。なぜかというと、なんというのでしょう、人間のバイアス、弱さ、エゴなど、そうした「人間くささ」を学ぶうえで、「交渉」は打って付けの材料なのです。



ここ最近では、グループ間での交渉を行いました。私たちは、ある学校地区の教育委員会となり、教師組合と交渉するのです。この地区は予算が厳しく、どうやっても教師連合側には、教師のカット、給与カットなどを飲んでもらわなければ立ちゆきません。まさに、気分はさながら、日航の労組交渉?



それも、5時間以上かけて、グループ間で交渉していきます。各チームとも、エクセルで精緻なモデルを作り上げ、多数の交渉項目を確認していきます。授業のための演習なのですが、Executive MBAの学生も含めた大のオトナが実際にどんどん白熱していったのを振り返ると、いやー、何とも不思議なものです。ヒートアップしたあげく、我がチームは、合意に至れず、決裂じまい。



かの名著「影響力の武器」にも書いてありますが、人間というのは、二つのグループにそれぞれ違うゴールを与えただけで、その二つのグループはお互いにいがみ合い、「やつら」「うちら」という概念をあっという間につくりだしてしまうそうですが、今回はまさに、この「やつら」シンドロームを体験することとなりました。



企業内の組織間の対立、牽制、感情的しこりなども、まさにこれ。これが人間の特質そのものなのですよね。というように、こうした「交渉」の演習を通して、人間的くささが浮き彫りにされていくというクラスなのです。



本日は、われわれの交渉をビデオで振り替えながら、何がよかったのか、何がよくなかったのかを振りかえりました。教授いわく、われわれの交渉決裂の致命的な点は、我々側の問題のフレームの仕方。



私たち側の出だしのアプローチは、赤字予算を回避するために、教師側に「お願い」するモードにうつったというのです。現状維持ありきで、それを手放すように交渉を進めたように見えたということです。「お願い、お願い」というモードだけでは、相手としては、そんなお願いばかり飲めるか!というトーンになってきてしまうわけです。



しかし、あるべきは、現状維持はまず無理で、大きな苦しみをこれから伴うことになる。その苦しみをどうやって、「最小化し、共有できるか」という議論に切り替えるべきだという指摘です。すなわち、現状維持はそもそもハナだめ!という設定をすべきだったのです。



このあたりは、プレーヤーとして話しているとそうしているつもりでも、そうはならないので、やはり第三者の冷静な立場が本当の交渉のときにも必要でしょうね。



その他、信頼やフェアネスの生まれ方、結託の仕方、論争のとり扱い方などのトピックスを扱っていきます。そういった意味で、「交渉」の授業というと、やや狭く聞こえますが、じつは、この授業は、「人間くささ」に向き合わせてくれる貴重なレッスンだと思います。

2 件のコメント:

Makko さんのコメント...

こんにちは。

Makkoです。

私も今、Dardenで交渉のクラスで、クラスメートと交渉をしているので、「人間くささ」がよくわかります。

とても楽しく読ませていただきました。

twk さんのコメント...

Makkoさん

コメントありがとうございます!

Makkoさんも交渉のクラスをとられているのですね。演習を交えてやるこの手のクラスはとても面白く、かつためになりますよね。