2009年4月27日月曜日

工場見学で見た「なんちゃってToyota Way」

Operations and Technology Managementの一部として、世界的なエネルギー会社ENELの電力プラントを見学しました。そもそも、ローマに行っているのも、これが第一の目的です。

ENEL社は、トヨタのToyota Production Systemに見習って、継続的Kaizen活動に取り組むべく、Lean Manufacturing Programmeに取り組んでいます。 トヨタ工場も見学した上で、プログラムを組んでいるようで、いや、素晴らしいことです、と誉めたいところなのですが!

ちょうど先月に、トヨタのお膝元名古屋で、本家本元のトヨタ工場を見学していることもあって、それとの比較で、考えると、ENEL社の展開しているプログラムは、「なんちゃってToyota Way」という感じです。

まず第一に、このプログラムを「施策」のひとつとして展開しているということです。ログラムのコーディネートは、マッキンゼーが担当していて、コンサルティングプロジェクトとして、はい今月はこれ、来月はここで、とプログラムを展開しているのです。

もちろん、これでも成果はある程度出てくるとは思いますが、トヨタは、このTPSは宗教もしくは思想という位、気合いを入れて、5年から10年というタイムスパンを想定しているのとは、ハナシの次元が違うわけです。

本来は、TPSを導入するということは、PCのOSを取り替えるほど、ややこしいハナシで、壮大な意志決定を伴うはずなのですが、なんだかもうひとつアプリケーションを増やしました、というお手軽感を感じてしまうのです。

また、トヨタのやり方がうまくいくのは、工程に人間の作業が入り込むような、摺り合せ的組み立てプロセスなのですが、一方、電力プラントはほぼ自動化されている大型設備系。人の介在する余地が工程上にあまりありません。

したがって、TPSを電力プラントに応用・展開するためには、相当に知恵をひねって、TPSをヒネリ、カスタマイズしたり、膨大な適用上の工夫が必要になってくるはずです。しかし、そこをやりきるほど、企業幹部から熱意を感じられなかったといのが正直なところです。

このプログラムをやらないよりはマシだとは思いますが、果たして、どれほどトヨタに近づけるかは、疑問が残るところです。

3 件のコメント:

tsutsumim さんのコメント...

こんにちは。私もトヨタの工場見学に4年ほど前に行きましたが、あれは、小手先のテクニックとかスキルというレベルではなく、価値観のレベルまで浸透していると感じました。

逆に言うと価値観のレベルまで浸透しているからこそ、いくらテクニックが本で紹介されても、真似されるスピードが遅いので、競争優位の源泉になっているんでしょうね。

もちろん、価値観まで浸透させるためには、行動レベルまでその価値観を体現させる必要があり、様々な場面での意思決定が価値観をベースになされている必要があると思います。

GM@Cambridge さんのコメント...

工場見学で電力プラントを訪れる、というのは面白いですね。
私は前職で発電プラント(事業用・自家発含め)を扱っていたので、仰ることは理解できます。

確かにTPSを採用している発電プラントは珍しいですね。
発電自体を生業にしている電力会社もそうえすが、例えば製造業が抱える自家発電・売電プラントを見ても、TPSは見ないですね。
本業の製造プロセスには積極的に採用されているのかもしれませんが・・・。
電力・熱エネルギーを大量に消費する製鉄・製紙ではプロセスだけでなく、エネルギー部門にもそういう視点が必要なのかもしれません。

日本国内の一部大型発電所(電力会社など)を除けば、多くのプラントが30~40年選手であり、制御システムも自動化のレベルは相対的に低く、ある程度労働集約な部分は残っています。
TPSの入り込む余地はあるでしょう。

いつだったか、とある製鉄工場のエネルギ部門の係長さんに言われたことがぼやいていました。
「エネルギー部門はエネルギーを安定供給して当たり前としか見られない(モノ自体を生産しないから)。部門投資も好況時はプロセス側ばかりが優遇されて、不況時に多少振り返られる程度・・・。」
製造業はモノを作ってなんぼ、という風潮が、エネルギー部門のシステム的な改革があまりなされてこなかった理由の1つなのかもしれません。
エネルギー、製造業のコストの大きな割合を占めているのですが、なんとも不遇。

twk さんのコメント...

tsutsumiさん

まさにToyota Wayは価値観のレベルまで浸透しているところにその凄みがありますね。そして、アクションの節々にまでそれが滲み出ているところがまた素晴らしいです。

GMさん

そうでした、この領域は、GMさんの専門分野でした。なるほどエネルギーは不遇な時代があったのですね-とはいえ、これからエネルギーの時代ではないですか!