2009年6月25日木曜日

フィンランドに学ぶ「産業ポートフォリオの大転換」

クラスメイトに「どうしてフィンランド行くの?」と聞かれることもしばしば。「北欧の国に行きたかったんだよ」とさらりと答えているのですが、じつは私には、フィンランドに行きかった本当の理由があるのです。

コンサルティングファームに入社すると、遅かれ早かれ、ある種の「洗礼」を受けることになります。それは、ロジカルシンキング的な思考体系を、強制インストールされるのです。脳の思考回路を強烈にチェンジさせられる、そんな儀式です。

私にとってのこの儀式が、フィンランドに関する調査だったのです。だから、何とも思い出深く、そして苦しい、今から思い返すとほろ苦い思い出のするプロジェクト。そのプロジェクト以来、いくつか、フィンランドに行きたいと思っていて、ようやく実現したわけなのです。

そのときのプロジェクトのクラインアントはある政府機関で、IT関連の国家政策をもとに、日本にとってのIT政策の示唆だしをするというものでした。

まだ、北欧ブームの前でしたし、もちろん、日本と北欧との産業的なつながりもそれほど強くないため、情報も集まりにくい。その上、当時、私は、ベンチャー企業のような独立系のコンサルティングファームにいたので、海外ネットワークが使えず、今のように海外オフィスからヒョイヒョウイ情報をとってくることもできなかったのを思い出します。
だから、それこそ、足を棒にして情報をかき集め、フィンランドのありとあらゆる機関にメールを出しまくり、電話したのも、今ではいい思い出です。

フィンランドは、1980年代後半に未曾有の金融危機を経験するも、その後、国の国際競争ランキングで、トップ5に入るまで、大躍進を遂げているのです。フィンランドは何をやったのか?

一言でいえば、フィンランドの産業のポートフォリオを大改造したのです。その中身は、IT産業を創造したことにつきます。フィンランドの伝統産業は、紙・パルプです、なんていったって、森の国ですから、木材が一杯とれます。それからゴム。これも樹木系ですね。そんな森の国が、IT路線に大胆に舵を切ったのが1990年代頭です。

フィンランド発で有名な企業とえいば、NOKIAでしょう。そう、ノキアです。ノキアの出自はゴム屋さんですが、もちろん今の主力事業は通信機器です。これこそ、フィンランドの大改造を象徴している企業といえます。

そして、フィンランドは、今や、見事にITに強い国のひとつとして数えられるようになりました。ここで、面白いのは、従来型の産業もしっかりと残っていることです。今でも、フィンランドでは、紙・パルプは主力産業のひとつです。それに加えて、「IT産業」も創造されたため、結果として国のGDPは増加したわけです。

振り返って、日本は、どうでしょう。今日の日経のニュースでも、JALの支援策が発表されていました。さまざまな企業への公的資金注入も報道されています。要は、日本は、既存産業を維持しようとしているのです。今の産業を維持しようとする日本、新しい産業を加えたフィンランド、そんな違いが明確に見えてきます。

私のコンサルタントとしての、初めての洗礼は、企業へのコンサルティングではなく、政府のお仕事でした。でも、そこで学んだ仕事のやり方はもちろん、何が国家方針のカギなのか、その原理原則-たとえば、どうやって新たな事業をつくるかなど-は、そっくり企業経営に応用できるもので、その後の私のコンサルティング・ライフの礎を作ってくれたプロジェクトでした。

そんなことを思い出しながらのフィンランド旅行でした。

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