日経オンラインの記事
金融危機の真犯人を育んだMBAの罪
HBS (Harvard Business School)の卒業生による、今のビジネススクールに対する批判的なメッセージ。この不況を招いた金融危機の真犯人を育んだのはMBA教育にあると主張しています。さらに、そうした金融危機を事前に防げなかったMBAの批を説いています。
MBAって、そんなタイソウなものだっけ?
もちろん、MBAは、個人にとっては、それこそ忘れられない時を刻一刻と過ごす、貴重な経験になると思いますが、しかし、このMBA教育が多大な影響を及ぼして、この金融危機の主犯人を育んだというのは、やや行き過ぎていまいか、と思うのは私が現役MBA生だからでしょうか。 個人の成長という機会と、金融危機のこの2つがどうも私にはまだ結びついて理解できないようです。
そもそも、MBA教育が金融危機をもたらしたのでしょうか?
今の金融危機による不況は、経済から始まって以来何度も、経験しているビジネスサイクルのひとつなのではないでそうか。
いつだって、不況はやってきて、その後景気に浮かれて、気付いてみたらバブル崩壊というビジネスサイクルは、人間の性ともいうべきものでしょう。何百年と続いている経済活動の根源的なサイクルの中でおきたのが今回の金融危機だと考えると、MBA教育の影響はとても小さく感じられます。
それでは、金融危機を阻止するのがビジネススクールの役割でしょうか?
ここは、AKさんも指摘しているとおり、“ビジネススクールに過度に期待しているような気もする”と云えるでしょう。もちろん、MBA教育で今後は金融危機などの危険性、Ethicsに対する見識などの教育はするにしても、あくまでも、MBA教育は、リーダーやマネジャーを“支援”するのがその本来のミッションです。
たとえば、マイクロソフトのWordは、ドキュメンテーションを“支援”してくれる有用な手段です。しかし、だからといって、仮に、作成した文書に間違いがあったとしたら、Wordが悪いのでしょうか?Wordはその間違いを防ぐ責務を負っていたかというと、少し疑問符。 もちろん間違いを防ぐことを志向することには異論はありません。
それから、そもそも、MBA教育の影響を過大視していないでしょうか?
MBA教育は、20代において、たかだか1年や2年の経験です。ビジネスパーソンとして、数十年働く中での1,2年です。MBA教育を軽視しているのではないですが、そのインパクトの大きさについては、冷静に、客観的に評価する必要があると思います。これは、MBAを取得した少数のトップエリートが不祥事を働いたので、そのわずかな事例から全体を推測しているという推論の過ちを行っているような気がするのです。
しかし、一方で、日経オンラインの論文が指摘しているように、MBAの価値を再考することには大いに賛成です。しかし、その場合でも、
今後はMBA教育が金融危機を引き起こさないためにはどうしたらよいか?
という問いからスタートすると、ハナシがおかしくなるような気がします。問いは、謙虚に原点に返り、より広く
リーダーになるためには、もしくは、リーダーシップの発揮を効果的に“支援”するためには、どのような場作りが必要なのだろうか
だと思います。
リーダーたるには、だれに、いつ、どのように、何を教育するのが効果的なのか。たとえば、MBA生の若年傾向があるけれど、教育する時期は適切なのか。この中に倫理的な教育の位置づけも問われるかもしれません。古典などの教養教育も含まれてくるかも知れません。また、Web2.0のようなテクノロジーの活用なども含まれるでしょう。環境の変化に応じて、柔軟に進化し続けなければいけないのは、ビジネスでも、ビジネススクールでも変わりはありません。
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