2009年5月30日土曜日

「おばけ いしゃ」から学ぶターゲティング

息子が気に入っている本で、「おばけいしゃ」というのがあります。ご存じでしょうか?もしかしたら、子供の頃に読まれた人もいるかもしれません。こんな物語です。

閑古鳥が鳴いているあるお医者さんが、一つ目小僧の目を直してあげたのをきっかけに、おばけからの評判がぐんとアップしたのです。そこで、おばけ専門の、「おばけ医者」と名乗るようにして、次から次へのとおばけの患者さんが集まってきて、めでたしめでたし、というお話。


これぞ、マーケティングで言うところの、顧客のターゲティングの神髄を言い表しているといえます。マーケティングでは、まず、マーケットを顧客のニーズが同質ないくつかのセグメントに分割し、そのうち、どのセグメントを狙うか、選択する必要があり、この選択を、ターゲティングとよく読んでいます。

しかし、面白いことに、コンサルティングの中で、「御社のターゲットセグメントは誰ですか?」と聞くと、歯切れの悪い答えが返ってくるケースが多いように思います。

“うちはマスをとりにいこうとしているから、どこっていうわけじゃない”
“お客さんで多いのは、○○な人ですね、ただうちはそういう人に限っているわけではないから”


その根底には、マーケットを分割して、そのうちの1つを選ぶなどという作業をしたら、狙える顧客の数が減って、売上げが経ちにくくナルじゃないか!という潜在的な恐怖心が働いているように思います。絞りたくないという感情です。

それはそうです、顧客のをセグメントをして、1つを選ぶということは、その残りをばっさりと「捨てる」ことになるわけですから、なんとももったいないことをするもんだという気持ちにもなります。

特に、日本の大企業は、一億層中流の経済発展の中で成長してきているので、誰もが均質で、誰もが同じようなニーズを持っているという価値観を今だにひきづっているのかもしれません。

ここで、指摘したいのは、マーケティングでサラっと語られるセグメンテーション、ターゲティングを断固として実施するにあたって、それを拒否する「感情」を克服しないと、じつは前に進めない企業、部門、企画担当者もいるということです。

そこで、この「感情」を克服するのに、冒頭で紹介した絵本「おばけいしゃ」はとても有効なのではないかと思うわけです。そう!おばけに顧客を絞ることで、逆に商売繁盛という理屈を小さい頃からすり込めば、まずはマーケティングの第一歩をクリア。

顧客を絞ることでなぜ商売繁盛になるのか?

それは、顧客を絞ることで、その商品が誰のためかが分かりやすくなるというのがまず第一。たとえば、単純な話しで、新聞の折り込みチラシの内容は、ほとんどのみなさんは見たとしても、覚えていないでしょう。ただ、そのチラシに「30代独身男性限定!」と書いてあったらどうでしょうか。少なくともそのセグメントは、何らかの注意をひくはずです。

要は、顧客を特定してあげることで、その人向けにコミュニケーションが行えて、結果的に、その特定の顧客には認知してもらえやすくなる、という原理です。

もうひとつは、こちらの方が大事かもしれませんが、顧客を絞ることで、その顧客のニーズに即した商品開発ができるという点。百貨店が衰退する一方で、ZARAが繁盛する原理です。みんなにフィットする商品はダメで、あるセグメントの固有のニーズにフィットする商品だけが、生き残れる時代になってきたともいえます。

そして、なんと言っても、ターゲットセグメントを絞ることで、社内の求心力が高まることは見逃せません。ありとあらゆるリソースがそのセグメント一本に向けられるのですから、今までよりも確実にいいものができないわけがありません。

息子の絵本に見る、きわめてパワフルでシンプルだけど、じつは実践が難しいマーケティングのベーシックスでした。

教訓:絞るからこそ、繁盛する。

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