2009年5月7日木曜日

日本人の海外MBA留学動向から何が見えるか?

アゴス・ジャパンは、おそらく日本の機関でもっとも、MBA留学動向に詳しいと思います。各種ビジネススクールの説明会にトップ自ら出席し、地道に最新動向を集めている姿勢は、大変好感がもてます。

Youtubeで検索をしていたら、アゴス会長の横山氏のこんなメッセージを発見。私たちの代の留学生動向について、簡単にサマリーしていますが、これを聞くと、「大丈夫か、ニッポン」とまたしても思わざるを得ません。



-ハーバード、スタンフォードなどの上位20校への出願者数、入学者数ともに25%前後減少
-上位校への2007年入学者が170名ほど、2008年入学者が140名ほど -やはり減少
-出願者のボリュームと合格者のボリュームはほぼ比例する
-インド人の出願者数は日本の10倍、中国は日本の4,5倍
-この比率を考えると、日本は、出願さえすれば、合格率が高いグループ
-出願者が減って、合格率が下がった理由は:
その1.1年スクールへのシフト2年生が多いトップスクールへの出願者が減少
その2.日本人にとって難易度が増したTOEFLへの英語対策に時間がかかっている
その3.就職に通用する英語力が求められて庵、日本人に不利になってきている


経済大国2位の国にしたら、なんとも少ない。インドは、日本の10倍出願しているんです。さらに恐るべきコトに、日本独特の企業派遣という大きなバックアップがあっての話しでることは忘れてはいけません。もし、このバックアップがなかったとしてら、ますますもって、日本人は、外に出て行っていないことが分かります。(なお、2009年出願者については、2008年とあまり変らないとか)

よく、MBAはそもそもあまり役に立たないからいいではないか、という声もたしかにあります。そんな2年も仕事をしないで、どうすんの、という声もあります。いまや差別化しづらいMBAをとらなくてもいいんじゃないの?という声もあります。

しかし、私が気にするのは、これは、MBAの価値を見抜いて、日本人の留学生が減っているのではなく、ましてや少子化の影響でもないと思うからです。

単純に、すなわち、グローバル志向度が、他国に比べて明らかに低くなっているシグナルだと思うからなんです。

一方で、なんだかんだといいつつ、グローバルに対する憧憬は、いまだにもちあわせていて、たとえば、最近の書籍大前研一氏の「グローバルリーダーの条件」という本が出ると、さっとアマゾンの上位に食い込む。

別にMBA云々ではなく、グローバル志向度が落ちているというシグナルだとすると、ますます世界中の若者は世界を舞台に戦っているのにどうするというのだろうと、自戒の念をこめて思います。

最近思うのは、MBAの善し悪しの議論はとりあえず、置いておいて、世界の人と交流し、日本を外側から客観視するという、その理由だけにおいて、さっさとMBA取得を奨励するのはどうだろうかと思うことがあります。なんだかんだいって、安全な環境下で、グローバルな世界を垣間見る機会がMBAですから。

4 件のコメント:

J さんのコメント...

ご無沙汰してます。Jです。

>グローバル志向度が、他国に比べて明らかに低くなっているシグナルだと思うからなんです。
これって何か理由があって、そう思われてるんでしょうか?それとも感覚的なものですか?
ちょっと興味あります。

twk さんのコメント...

Jさん

こんにちは。

さまざまなデータがグローバル志向度の低下という仮説を支持しているのではないか、ということですね。

たとえば、海外旅行者数はここ最近は増えていないですし(もっぱら行くのはアクティブシニア)、新興国への海外転勤は敬遠されがちだと聞きますし、日本人の留学動向しかり。

個人的には、全体としてはあまり良い傾向ではないのかなあと思っています。もちろん、キャリア観は個人個人でバラバラであっていいのですが。

S さんのコメント...

こんにちは。以前より楽しく読ませていただいてます、同じくLBS在籍留学生です。

以前より日本人のグローバル志向度はアジア諸国と比べて低いのはどんなものなのかとの問題意識を持ってました。ふとしたきっかけで今日WEBを捜索していたら、ここにまたたどり着きました。

LBSにいると確かに米国・欧州系以外では、インド・中華系のプレゼンスが目立ちます。日本勢のプレゼンスが相対的に減っているとの感触もあります。(そんな折だからこそ、貴殿の活躍に期待したいところです!)

青少年白書の海外留学者数推移などを見ると、日本から外国へ留学する数はH16までの資料ながら、年間で8.9万人余りで、右肩上がりで推移しているようです。

ただ、(はっきりとしたデータは発見できませんが、)日本人MBA留学者は、減少し続けている様子が想像できます。

何が根底に流れる原因なのか?そしてこのトレンドはこれからも続くのか?
「日本の栄華」の時期が過ぎてしまい、衰退しつつあるとはいえ、ある程度稼げる仕事を(一部の層に対し)維持できる経済力を持っていて、それを変えようと思う大きな力がない限りは、この(MBA留学者数)の減少は歯止めが掛からないような気がします。

このように外部環境の変化に対し原状を変えようとせずにいる様子を(某日系コンサルは)日本の「ガラパゴス化」と比喩してます。MBA留学者数の減少もこの流れをあらわしているのでしょう。

twk さんのコメント...

Sさん

こんにちは、コメントありがとうございます!

>何が根底に流れる原因なのか?そしてこのトレンドはこれからも続くのか?

日本というマーケットがあまりにも大きいから、というのが私の現時点の仮説です。世界第二位なわけで、国内でビジネスをすれば、そこそこ大きくなれる、海外に行く必要ないのではないか、というメンタリティが生まれやすいドジョウがあると思うのです。

ではアメリカもマーケットが大きいではないか、ということなのですが、アメリカは、そもそも移民の国なので、もともとグローバル性が遺伝子に組み込まれているんですよね。もしくは、こういう見方もできるかもしれません。じつは全然グローバル化をしていなくて、アメリカ流を世界に普及させているだけ、ともとれます。

日本が幸にも不幸にもマーケットがそこそこ大きいというのが、根底の原因かなあ、と思っています。