2008年12月20日土曜日

Inside Malta

マルタ島は、地中海に位置するマルタ共和国の中心的な島です。北にはシチリア島があり、南にいくとすぐアフリカ大陸、リビア、チュニジアにぶつかります。マルタ共和国の人口は40万人で、その国面積は淡路島より少なくおよそ300キロ平米と、超小国です。同じくくらいの人口のある国としては、超小さいですが、立派に「国」として運営しているのですから大したものだと思います。

では何でこの国は生きているのか?このクラスの小国だと、最近何かと金融危機で騒ぎとなっているアイスランドが30万人、ルクセンブルグが40万人です。これらの国は、やはり金融が一大産業になっていて、そのおかげで、一人当りGDPもトップクラスで日本より大きいわけですが、それに対して、マルタ共和国はというと、一に観光、二に観光、三に観光で、そして農業が少しという感じです。一人当りGDPは、およそ1万5,000ドルとほぼ日本の半分くらいでした、そんなに大きくはないですが、途上国よりは大きいという、まあまあのサイズです。

今回、4,5日という短い滞在でしたが、その間、現地に人や、現地の新聞などを読んで、感じるのは、マルタ人は、マルチーズとしての独立心は、人一倍大きいということです。一方で、EUの一員にならなければ、小国として生きていけないのもどこかで分かっていて、今回の旅行では、その狭間で揺れる複雑な心境を垣間見たような気がするのです。

マルタは歴史的にみれば、他の被支配国と同様、多くの国家の支配下に置かれました。古くは、スペインやオスマン帝国、また、フランスの支配下にいたこともありました。そして、もっとも大きな影響を与えたのは、第二次世界大戦、およびその後を支配していたイギリスでしょう。今ではすでに、イギリスからも独立を果たし、共和国として独立していますが、イギリス連邦の一員になっています。

しかし、とくに年配の人の、これらの支配国に対する感情のアレルギーは今でも深く根ざしているようです。我々をナビゲートしてくれた、50歳半ばの男性ガイドも、このあたりのイギリスとの関係の話しになると語気が強まります。今でもたまにイギリス人がマルタに訪れてくると、マルタ人を「猿」呼ばわりすることがあったり、または、イギリス人がマルタ人のサービスに不満があったりすると、「指を切るぞ」と言ったりすることがあるそうなのです。その度に、ムカツク思いをすることを、チラリと会話の端々にのぞかせます。この手の話しになると、楽しげなガイドも、妻と私は顔を見合わせ、ちょっとだけ空気が凍りつくのです。

また、フランス人は、プライドが高いとも言っており、フランス人とは、心理的に距離感をおいているように感じられました。じつは、マルタの公用語は、フレンチ、ドイツ、イタリア、アラビア語がミックスされたマルタ語、および英語であることから、じつは、かなりの多くの言語を理解できますし、話せるそうです。このガイドもそうで、マルチ言語を操れるのです。ガイドをするときも、必要に応じて、何カ国語で複数話すらしいのですが、フランス人は、英語を理解できるのにも関わらず、英語は分からないと知らないふりをし、フランス語のガイドも求めてくるので、「なんとプライドが高いのかと、同じことを2回もしゃべらせるな」、そんな風に話すのです。

やはり、マルタ人は、どこかで、大陸の国々とは、距離感をもちたいと思っているようです。

しかし、一方で、マルタ共和国は、2005年にEU加盟を果たし、今年2008年にはユーロに加盟し、大陸の国々との距離感を、政治的、経済的には急速に近づけています。今の与党である国民党が、自由主義経済、近EU主義によるものだからです。

このような方針を掲げる政党が与党であり得るのも、そうなのです、国民は、経済的には、EUと一体化した方がいいと、どこかやはり思っているのです。脱EUを標榜している野党である労働党は、政権をとれていないわけです。そして、国民党が与党でいられているのも、実は僅差の勝利です。ここにも、マルタ人の微妙な心理がみてとれると思います。 実際、こうした動き-近EU政策-に対して、マルタは昔のような被支配国に成り下がると、やや極端に懸念して悲観している人々もいるようです。

そして、今年の1月にEU単一通貨、Euroを導入しました。いたるところで、まだ現地通貨Lmと、ユーロが併記されている状況です。このユーロ導入には一悶着がありました。国民選挙した際、開票結果は、ユーロ導入否決であったが、数日後、「やはり間違いだった、ユーロ導入の方が過半数を越えていました」と政府からアナウンスがあり、国民は、みんな「なんだよそれ」としらけてしまい、笑うしかなかったとのこと。いずれにしても、きわめて微妙などちらに転がってもおかしくない結果だったのです。

ユーロ導入後は、やはり、物価があがったようです。ガイドの話しによると、お金持ちはいいが、大工のような職業の人には生活に相当にインパクトを与えていて、本当にユーロ導入はよかったのかねぇ、などと話しをしていました。

しかし、今の金融危機に鑑みると、EUそして、さらにユーロという安全網にマルタが入っていたのは、大正解だったと思います。小国の通貨は、このような荒波の中では、アイスランドの事例のように、操縦不可能になる可能性がきわめて高いからです。そして、今のマルタの経済は、他のEUの国々比べても、そこそこ安定しています。足下の経済成長率は、EU平均に比べてややいいとの新聞報道が載っていました。もし、ユーロを導入していなかったら、こう安定していたかどうかは分かりません。

マルタ人は、過去の歴史的な経緯から文化的には独立心はツヨイが、経済的な側面を考えるとEUと一体化しなければいけないと思っている。そんなマルタ人の横顔が見えたマルタ旅行でした。

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