2008年12月25日木曜日

知識の調達先:社内 vs. 社外

Strategyのクラスで面白い論点がありました。

それは、Knowledgeは、社内で調達すべきなのか、それとも社外から調達すべきなのか、という問いかけです。クラスでは、少し触れただけでしたが、実は、重要になるトピックだと思います。ちなみに、ここでのKnowledgeというのは、専門知識であったり、社内の問題に対する問題解決であったり、何らかビジネスを遂行する上での知識です。

なぜ、重要なトピックかというと、どちらの方法もあり、だからです。

このクラスで議論されたケースがデンマークの補聴器メーカー、オーティコン。この会社は、社内からの調達を先鋭的なまでに徹底しました。以前のブログでも書いたように、すべての組織体系を取っ払い、あらゆるタスクをプロジェクトベースにしました。

このやり方、すさまじいカオスが想像できます。ここでのポイントは、社内のプロジェクト競争に生き残っていく過程で、社内の良質な知識が生産されていくということです。ダメなプロジェクトチームは衰退するし、成果を出すプロジェクトチームは生き残るという競争原理が「社内」で働く仕組みです。

通常の組織体系であるならば、それぞれの役割分担が決まっていますから、そう簡単には他人の仕事領域に進入することはできません。ある意味で、競争から守られているわけです。市場の競争でいえば、A社はこのマーケットで戦い、B社は違うマーケットで戦い、といったように、価値の提供が明確に規定されているのが、組織図アプローチということになります。

デンマークのオーティコンは、この非効率さ-市場原理から照らし合わせれば非効率です-を解消するために、社内にある種の市場原理をもちこんだというわけです。ぶっとんだ発想をするもんだと思います。

一方で、社外から知識を調達することも最近はいとも簡単にできるようになってきています。もちろん、従来のように、他社と提携したり、エキスパートを雇ったり、またコンサルティング会社を雇うというのも、社外から知識を調達することになります。

クラスでいくつか紹介されたのは、Crowd Sourcingです。いわゆる、Wikipedia的アプローチというのでしょうか、大衆の英知をかき集めれば、じつは専門家をも凌駕する可能性があるという考え方です。

たとえば、InnoCentive.comでは、大企業の抱える問題を、web上にポストし、その解決策を募るというウェブサイト。解決策を提示してくれたら、事前に決められた金額を渡すというもの。このInnoCentiveを利用したら、今まで解決できないと思っていた問題が解決できたよ!などといった、声も以下のサイトでは見ることができます。
http://www.nbcchicago.com/news/local/Thinkers_Putting_Creative_Caps_On_For_Cash_Chicago.html

その他にも、この手のものとしては、TopCoder.comや、Sourceforge.netなどがあり、今は雨後の竹の子状態といえるでしょう。

Crowd sourcingの本としてよく売れた、Wikinomicsという本の冒頭では、金鉱のありかを社内の部署で調査するも不調に終わり、仕方なく、今までの調査データなどを公開し、金鉱のありかを見つけた人には賞金を出す、というように、外部から知識を調達する方式に変えたとたん、あっさり見つかったというエピソードが紹介されています。

場合によっては、社外にナレッジを求めた方が良い場合すらざらにあるのです。

では、何でもかんでも社外に外注して知識を仕入れればいいのか、というとそうでもありません。やはり「役に立つ」知識の多くは、今直面している問題のコンテクストと連携しているものですが、外部から知識を取ってくる場合、今抱えている問題との関連性を自ら考える必要があるからです。だれでも、この情報が欲しいと思って、外部の調査機関や雑誌、記事にあたっても、「これだ」と思うデータがそろわないという経験はあるのではないのでしょうか。

自社が提供している価値に密接に寄り添う形式で、社内で知識を創造、蓄積、展開することも、これまた絶対に必要な活動だと思います。

じつは、この議論、企業のバリューチェーン(製造から販売までのビジネスの流れ)上のどこをアウトソースし、どこを自社で取り組むべきかという議論に酷似しています。というより、全く本質的には同じです。

今の時代、企業のバリューチェーン上のありとあらゆる要素がアウトソース、オフショア化できます。これは逆に、企業に自社では何をやるのか?という問題を突きつけました。すなわち、企業のコア・コンピタンス(その企業のもつ競争優位たらしめている要因)はどこにあるのか、という命題を突きつけました。

ナレッジという観点でも、これが必要です。すなわち、どのような知識ならば内製するのか、どのような知識ならば外製するのか。この線べきを明確にもつ必要があるのだと思います。

0 件のコメント: