2008年9月11日木曜日

海外での日本企業の強さの秘密は日本マーケットにあり

Hondaのケースを読んで、グローバルで活躍する日本企業が海外で強い理由は、均質でかつ巨大な日本マーケットにあることにも気づかされます。これは、授業では扱われなかったのですが、個人的には気づきでした。


Hondaのケースにこういう下りがあります。


"In 1959... Honda Motor Company... entered the American market. With sales of $55 million in that year, Honda was already the world's largest motorcycle producer.."
"1959年に・・・Hondaは米国市場に参入した。本田はその時点で売り上げが$55 millionあり、すでに世界一のバイクメーカーであった"


じつは、海外市場に進出する前から、売り上げの規模で見れば、本田は世界一だったのです。これは、驚くべきことだと思います。国民もせいぜい1億人で、人口はそれほど大きくありません。だけど、売り上げは世界一。


なぜなのでしょうか?


その答えは、日本国民が戦後、みな同じような境遇だったからだと思います。みな、同質。そうみんな戦後の荒廃から、同じように富を増やしていったわけです。いわゆる1億総下流から、1億層中流へと、同質的に発展をとげていったことがひとつ肝なのだと思います。


日本の国民の人口はそれほど大きくないけど、マーケットが同質なので、ツボにはまる商品をだせば、それこそみんな!買うわけです。国内にもし、階級制度や、貧富の差があったとしたら、人口が大きくても、ある商品を買う層はその中の限られたセグメントになってしまうわけです。その点、日本は、みんなが買ってくれたことが、日本国内マーケットだけで巨大な規模になった理由なのでしょう。


Hondaが海外市場に打って出たときには、すでにバイクの売り上げ世界一のメーカーであり、その意味するところは、海外市場に進出した時点で、経験曲線を競合他社に比べて、下りきっており、コスト構造的に優位な立場にあったのでした。
*経験曲線http://gms.globis.co.jp/dic/00203.php


そして、米国市場を一気に席巻していく過程においても、つねに日本という巨大マーケットが背後にいることで、競合に比べると、加速度的に経験曲線を下っていくことができたのだと思います。


さらに、面白いことに、この日本人の同質性が、いわゆる日本的品質のよさにつながっているという指摘を、私の恩師である飯塚教授がされています。こんなコメントをウェブから見つけることができました。


http://www.unisys.co.jp/club/feature/talk_07_01.html

"中国の品質管理の高名な先生から、「国民の品質意識を高めるにはどうすればよいか?」という質問を受けました。これには「良いものをたくさん見せて、良し悪しを比較する機会をつくるべきです」と答えました。  日本人は、良いもの・悪いものの比較をたくさん繰り返してきました。その背景には、国民の80%以上が中産階級意識をもち、横並び意識が強かったことも関係していると思います。 友人や隣人、会社の同僚などと自分を見比べると、少しでも品質の良い製品が欲しくなるものです"


みなが中産階級だったことが、周りよりも少しぬきんでていたいというニーズを生み、それに日本メーカーが応えていったことが、日本の品質のよさのひとつの要因という指摘です。かくして、品質も高く差別化をした上で、コスト優位という、一見二律背反するような戦略-実際かの戦略の大御所、マイケル・ポーターはどちらか一方じゃないとうまくいかないと指摘している-を展開することができたのです。


しかし、一方で、日本マーケットが大きいからこそ、一部というか大部分の企業は、海外に進出していく必要がなかったわけで、今の日本の閉鎖的な社会の一因にもなっているのは確実です。実際、こちらにきても、日本は何となく隔離されたひとつのコミュニティという位置づけをされているようですし、実際に日本企業と仕事をしたことのある人から、「日本人は一緒に働きづらいんだよね」と言われたり、負の側面も多くあります。やはり、すべては両刃の剣なのです。


とはいえ、海外における日本企業の強さは1億層中流にあったのだと思うわけです。

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