2008年11月9日日曜日

ロジカルシンキングより大切なこと その2

ロンドンは、すっかり寒くなってきました。こちらの紅葉も見事なものです。ロンドンは公園や広場が数多くあるので、そしてその伝統を大切にしているせいか、大木がたくさんあり、その黄色や紅に染まっている様はなんとも美しいものがあると思います。私のフラットの前の公園にも大木が幾本も並び、まるで紅葉の壁のようになっています。ここ最近は、その葉も相当と落ちて、木枯らしを感じさせる今日この頃です。

さて、前回書きかけになっていた、「ロジカルシンキングより大切なこと」の続きです。

問題解決といえば、ロジカル・シンキングなのです。しかし、実はその前に、こうなっていそう!とか、これが解決策なのではないか!という、筋のいい直観が出せなていないかぎり、ロジカル・シンキングもとても空しいものになってしまうというお話でした。実際、私も、ときどき採用面接で、インタビューイーがしきりに、ただひたすらに、ロジカルに細かく問題を分解していった果てに、何も出てこないというのも何度も経験しました。

で、前回書いたのが、以下の3つでした。

1.バランスのいい情報収集プランを練るのがひとつ。
2.そして、素直に考えること。
3.もうひとつは、過去の経験・ナレッジの活用があげられるでしょうか。

こう書くと、当たり前すぎるのですが、どれも、個人的には、超!奥が深いと思っています。まず一つ目は情報収集プランです。

なぜ大事かというと、人間というのは、与えられた情報で、ひとつの世界観を作ってしまうから、です。その世界観でしか思考ができないという当たり前の事実を無視できません。たとえば、こないだ倫理の授業で習ったように、人間というのは、いとも簡単に組織文化に染まってしまう。組織内で受け取る様々なデータや情報をもとに、人間は、組織文化というひとつの世界観を作ってしまうのは周知のとおりだと思います。

社会に憤りを感じていた野心的な若者が、フォードという大企業に入り、瞬く間にそのOrganizational Contextの中でしか考えられなくなり、人の死も、「コスト」に換算し、本来回収すべき車種を回収できなかったわけです。

ですので、ある問題を解決しようとするときに、どのような情報のインプットをするか、これが極めて大事なのです。情報のインプットこそが、私のようなコンサルタントには、ひとつ、大事な差別化要因になっているわけです。クライアントには出すのが難しいバリューは、じつはここから生まれてくると思うのです。

なぜでしょうか?

それは、クライントがおおよそ、偏った情報のインプットをもとに、偏った世界観を形成し、その中で解決策を考えようとしているからです。

したがって、その偏りをきちんと、見抜いてあげて、よりバランスのとれた情報を集めるのがコツ。たとえば、

<領域の拡大>

・ある組織だけでなく、組織横断的に情報収集
(例)マーケティング立案だったしても、技術部、営業、総務部などからもきちんと話を聞く

・組織階層の一部だけでなく、上から下まで情報収集
(例)マーケティング本部長だけの話を聞くのでなく、現場の人にもきちんと話を聞く

・顧客層を拡大して情報収集
(例)じつは、クライアントは、自分の顧客を知らないことが多い。今までよりもスコープを広げて、マーケティング調査や、グループ・インタビューを実施する

・有識者・エキスパートから情報収集
(例)海外のエキスパートにヒアリング

<深さの拡大>

・社員の行動を詳細に調査
(例)業務改善プロジェクトであれば、業務執行者に1日べったり張り付いて行動を観察する

・顧客の行動・言動を詳細に調査
(例)クライントは意外と競合の顧客を知らないもの。競合のサービスを使っている人をみつけて、2,3時間徹底的に、なぜクライアントのサービスを使わないのかなどを徹底的にヒアリング

などなど、あげればきりがないのですが、要するに、バランスよく情報収集を行い、より適切な世界観を自分の頭に作る努力をするのが大事だと思います。そして、みんなの情報インプットの偏りに気づくことも重要です。

人間は、断片的な情報から、勝手にある世界を作り上げてしまうのだから、それを逆に利用してあげるのです。正しい世界観から、問題を俯瞰すれば、問題の真因や、解決策はとても簡単に思いつくことができるはずです。

クライント企業の人々が頭に描いている世界観とは違う、よりバランスのとれた世界観さえ、自分の中にもてれば、これはしめたものだと思います。

他人と差別化できるような、情報のインプットを設計するのが、いい仮説を思いつくひとつの方法だと思います。気づいたら長くなってしまいましたので、2番目の「素直に考える」はまた今度、書きたいと思います。

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