2008年11月16日日曜日

マッキンゼー:Strategy Classのケースより

今週のStrategy Classのケースは、経営コンサルティングのマッキンゼーでした。テーマは、組織の成長について。クラスの後半は、マッキンゼーのコンサルタントによるプロジェクト紹介。個人的には、自分の関心にもマッチして、とても面白いセッションでした-一方で、今回のクラスは、とてもつまらない、といっていたクラスメイトもけっこういたので、やはり人は多様だと思わされます。何が面白かったかといえば、

1. 組織の成長という個人的にも関心のあるテーマだった
2. ケースにあるナレッジ・マネジメントに関する議論が面白かった
3. マッキンゼーのプロジェクト紹介がインサイトに満ちあふれていた

ということでしょうか。


組織の成長という面白いテーマ!

クラスを通じて、教授が伝えたかったのは、

・企業の競争優位を決定づける能力を獲得するには時間がかかる-そして、時間がかかるからこそ、競争優位になり得る
・そうした能力を生み出す、組織に関わる構成要素として、“人”、“組織構造”、“インセンティブ”、“カルチャー”がある
・これらの組織に関わる構成要素が戦略とマッチすることで、そこから生み出されるリソースが、企業成長へのドライバーとなり得る

といったあたりでしょうか。要するに、

企業の戦略、組織に関わる構成要素、競争優位となりうる能力・資源の間で、整合性をとることが大事ですよ、ということでした。

マッキンゼーという、ある意味で、“くせ”のある、人、組織構造、インセンティブ、カルチャーをもつプロフェッショナル・ファームが生み出す、ナレッジが、競争優位を生み出す資源になるというもの。ごもっともです。

ケースにあるナレッジ・マネジメントに関する議論が面白い!

さらに、あまりクラスでは議論になっていなかったのですが、ケースでは、このナレッジをどう取り扱うか、でマッキンゼー社内では、ひとつ課題になっているという記述が面白かった。要は、ナレッジをレバレッジしまくってクライアントの問題解決をするのか、もう一方の議論として、もっとゼロベースで、クライントの問題解決にあたるべきではないか、どちらに舵を切ればいいのか、がissueになっていました。ナレッジの整備は大事なんだけど、あまりそれに頼りすぎると、クライアント特有の悩みにゼロベースで取り扱えなくなり、tailor-madeソリューションではなくなってしまうのではないか、という危惧があるのでした。

これは、個人的には、結論は明快で、ナレッジをレバレッジして、クライアントの問題解決にあたるべし!だと思います。そして、「Client Interest First 顧客の利益をまず第一に考える」価値観があれば、ソリューションありきの解決策を押しつけることにもならないと思います。

第一に、ナレッジを活用することは、クライアントの課題のうち、コンサルタントが、もっとも難しい部分にフォーカスできることを意味します。というのも、ベーシックな課題のところは、既存の知識やノウハウで処理をして、そのクライント固有で、前例がないような課題、そこにわれわれのリソースをフォーカスできるわけです。クライントの課題のうち、共通性が高いところと、固有性の高いところを切り分け、後者にプロジェクトの時間を多く割くことができます。

トヨタをはじめとした、日本の製造業では、「改善」がすごい!と世界的に注目を浴びていますが、あの「改善」がすごい一つの理由は、「標準化」がすすんでいるからだと思うのです。「標準化」というと、マニュアル化ととらえられ、よりよくするとは全く対極に写りますが、日本の製造業が、この「改善」と「標準化」を両立できているのはなぜでしょうか?

それは、「標準化」という土台があるからこそ、その先の未解決の領域に取り組むことができるからです。じつは、「改善」と「標準化」は対立する概念ではなく、「標準化」があるからこそ、その「改善」ができるのであって、両方とも補完する概念なのですが、そのあたりの誤解は、まだまだこの世の中多いなあというのは感じるところ。私が思うに、「標準化」という言葉が悪いんですよね。

第二に、ナレッジを活用する文化は、結局は、みなが先進的なナレッジを生みだすことにつながります。ナレッジを活用して、効率的に問題解決をすると、ナレッジの重要性と有効性に気づきます。さらに、課題の中でももっとも難しい部分にコンサルタントが取り組むことで、そこから生まれる知見も、かなり希少なものになるはずです。ナレッジを活用する文化があるとすれば、同じような課題に遭遇したコンサルタントが、そうした知見を誰かが求めてくることになります。そこで、ナレッジの移転が起きるわけです。その際、クライアントの事例をそのまま語ってもだめなわけで、ある程度抽象化したナレッジとして共有することになり、クラインアントの抱える課題に関して、より一段上のレベルから俯瞰できるようになってくると思うのです。

そういうわけで、ナレッジの活用は、コンサルティング会社では大いに奨励した方がいいというのが私の持論です。

マッキンゼーのプロジェクト紹介がインサイトフル

クラスの後半は、実際の経営コンサルタントによるプロジェクト紹介でした。実際のゲストスピーカーをクラスに呼ぶことで、よりpracticalなトピックを学生に提供すると同時に、ゲストスピーカーを出す会社としては、自社のプロモーションにもつながり、win-winの関係ができています。

このプロジェクトの解決のアプローチがかなり鮮やかで、いわゆる、経営コンサルティング的な知的好奇心が大いに満たされたものでした。「そんなの当たり前じゃん」というひややかなクラスメイトもいたのですが、私は、同業者として、その鋭い切り口に至る紆余曲折が肌で分かる分、より楽しめたのかもしれません。

プロジェクトは、停滞しているコングロマリット企業の成長戦略というもの。100以上の事業をもっている企業で、あまりにも多種多様な商品をもっているため、この数年間どう、成長の切り口を見いだせばいいか分からないというのが依頼のテーマ。どの事業部も自分たちの事業部の大切さを説く中で、どのようなロジックで事業ポートフォリオを再整理すればいいのか、かなり迷走していたとのこと。

ゲストスピーカーがとったアプローチは、そのコングロマリット企業が展開している事業を、「マーケット側から再整理する」というものでした。すなわち、ある事業部は、じつは複数のマーケットに商品を提供しているので、事業部=マーケットではないのです。ひとつひとつの事業がどのマーケットセグメントに商品を提供しているかを分析した結果、100以上の事業部があるにも関わらず、そして多様な商品展開をしていると思われるものの、じつは、大部分があるひとつのマーケットセグメントにしか商品を提供していないことが分かっり、しかもそのセグメントは他のセグメントに比べて、マーケットサイズが急激に落ちているというものでした-だから、会社全体として停滞している!ということでした。

要は、利益の源泉は、マーケットセグメントの選択にあったわけです。どっぷりと事業サイドからみるクセがついているクラインアントとしては、このキードライバーが見えなくなっていたわけです。

この会社の場合は、マーケットセグメントの選択が、キードライバーだったわけですが、他の会社、インダストリーでは違うかもしれないということも、注意を促していました。たとえば、鉄鋼の場合は、どのマーケットセグメントもにたようなもの。むしろ、内部の業務プロセスにキードライバーがあるという事例を話されていましたが、同感。

ビジネススクールのいいところの一つは、自分の知的関心にあわせて、様々な知的好奇心のネタを与えてくれるところだと思います。他にもいろいろなケースから、面白い学びがあるので、自分の記録のためにも、少しずつアップしたいなとおもっとります

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