2009年2月8日日曜日

浅田真央は不調なのか?

4大陸選手権でSP6位、フリーで挽回して総合でかろうじて3位で表彰台に登ることができた浅田真央。少し前の、「滑れば1位」という状況ではないようで、確実に王者としてのキレがなくなってきています。これは、滑りを見れば、素人でも一発で分かります。ここで多くの人が思うことは、「ああ王者の地位をキープするのは大変だ、スランプ時期に入ってしまったのね」ではないでしょうか。

浅田真央は不調なのでしょうか?

妻は大のフィギュアスケートファンで、妻の話によると、彼女は「今は不調で当然」ということでした。なんで?と聞くと、こんな答えが返ってきました。

“真央ちゃんのジャンプだけど、今は苦手分野を克服しようとしていて、ジャンプするときのエッジの向きを内側から外側に変えているのよ。これは採点で減点されないように。今の採点ルールだと外側じゃないと減点されてしまうわけ。それから、真央ちゃんはサルコ(ジャンプの種類)なんだけど、今それに挑戦しているの。これはずっと今までやってこなかったから慣れてないジャンプね。”

“ジャンプ以外でも、どんどん高度な技を入れてきている。今まで真央ちゃんにとって、ジャンプ以外の時間は彼女にとって「お休み」の時間で、だいたいレベル1の技しか入れてなかったんだけど、今はレベル4の技をどんどん入れてきている。スパイラル(足をあげながら滑る技)とか、ステップシークエンスなんかは格段によくなってきている”

というわけでして、ジャンプもさることながら、ジャンプ以外についても、まさにすべての滑りの大改革を断行している最中ということがよく分かります。今までの成功体験を捨て去って、今までの滑りのパターンを捨て去って、より将来に成長できるように、滑りのリストラクチャリングをこの時期に着々を行っているのです。それも、一個ずつ直していくというより、一気呵成にすべてのパーツを同時並行的に直しているのもチャレンジングだと思います。

こうしたリスクのある取り組みは、オリンピックシーズンではできないから、その前のいまのこの時期にやっているという戦略と見て取れます。「不調」にも二種類あって、単に今までのやり方が通用しなくなっているから「不調」なのか、それとも、将来向けた変革をしているから一時的に「不調」になっているのか。この二つの違いはとても大きいように感じます。

さて、一方の現在の王者、韓国のヨナキムはどちらというと、妻の言葉を借りると、現在の滑りの完成度を上げる、すなわち滑りに磨きをかけているようです。改革を進めている浅田真央と、改善を積み上げているヨナキム。単純に二人を比べることはできないことがよく分かります。

この話しが面白いと思うのは、企業経営にも全くあてはまると思うからです。

単に、パフォーマンスの善し悪しだけを見ていてはダメ。黒字化した、赤字になってしまった、株価があがった、下がった、だけではダメ。そうしたパフォーマンスに影響を及ぼしている、その企業の持っているファンダメンタルの力と、将来に向けた種まきがどうなっているのかどうか、そこに対する考察をゆめゆめ忘れてはいけないことを再確認できます。

とくに今は、どの企業をみても真っ赤っか。でも、その中でも、ちゃんとした企業は今のこの時期を利用して、筋肉質な財務体質の作り込みをしたり、将来の芽を余ったリソースを使って仕込んだり、この株価が安いときに必要なリソースを買収したりと、ひっそりと取り組みを進めていることでしょう。同じ赤字企業でも、業績を不況のせいにするか、将来のための改革の時期とするかは、全くもって大きな分かれ道です。

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