2009年2月25日水曜日

Mr Drunk Minister 中川昭一にみる「組織行動論」

椅子から転げ落ちるかと思ったほど「驚愕」したのが、Mr drunk Ministerこと中川昭一氏。



小泉純一郎氏の最近のコメントではないが、「笑っちゃうよ」という感じでもあり、ここ海外にいると、もう恥ずかしいから「勘弁してよ」です。

それにしても、最近の政治家の議論のレベルの低さには、ほとほとうんざりさせられます。政治のニュースといえば、郵政分社化がよかったのかどうか、はたまた、かんぽの宿の譲渡先がどうのとか、直近の深刻の経済状況の対処からすれば、全くといいほど関係ないポリティクスに時間を使っていて、あきれるばかりと思っているのは私だけではないと思います。

そして、麻生首相がオバマ大統領と会談し、オバマ大統領に「内需拡大よろしく!」と頼まれれば、ポンと、30兆円のバラマキ政策が出てくる。そして、みんなその利権にたかってくるという始末で、本当に経済を活性化させる気があるのかどうか。

さて、話しは戻って、私がなぜThe Drunk Ministerに驚愕したのは、そのYoutubeでの衝撃的な映像もさることながら、なぜ明らかに泥酔しきった中川財務大臣がだれも会見を中止したり、代理人をたてることもなく、実施されてしまったのか、ということです。

想像してみてください。たとえば、隣に座っていた白川日銀総裁は、記者会見の前に、絶対、「この男、ちゃんとしゃべれるのか?」と思ったことでしょう。目が朦朧としていて、ろれつが回らない、そして、酒臭い。側近もそうした中川氏をもろに間近で見ているのにもかかわらず、誰も止めることができない。

少しスマートであれば、その酔っぱらい大臣の映像が全世界に放映されて、そのイメージダウンのインパクトの重さを容易に想像できるだろうに、それができなかった。

そのひとつの答えが、2003年2月1日のスペースシャトルコロンビア号の空中分解事故に見ることができるように思います。

チャレンジャーに続く、コロンビアの事故は、米国民にショックを与えた事故。事故までの経緯を組織行動学な見地から、分析しているのが、”The Wisdom of Crowds – Why the many are smarter than the few”の第九章。Organisational Behaviorのサイドリーディングです。ちなみに、日本では、なぜか、『「みんなの意見」は案外正しい』というオチャラけた題名になってしまっていますが、詳細なファクトに基づいたけっこうシリアスな本。

この章で語られているのは、少人数チームによる意志決定の危険性。ただ単に多くの意見を集めた方がいいよね、という短絡的な議論ではなく、少数人数がゆえの組織バイアスの働き方に言及しています。

コロンビア号の事故は、地球を脱出する際に、小さな破片がシャトルを傷つけていて、大気圏に再突入する際に、その傷口から熱が入り、最終的には爆発してしまうというもの。

地上部隊は、その破片による傷のリスクを詳細にシミュレーションしているものの、そのトピックをシャトルに乗っているManagement Mission Team(MMT)と交信する際、極めて奇異なやり取りをすることになってしまったのです。

地上部隊:もちろん、深刻なダメージがある可能性はあるが、温度分析によると、破片が貫通しているほどではない。もちろん、破片の大きさや、それがどこにぶつかったかなど不確実な要素があり、なんともいえないののだが

MITのリーダー:貫通していないということは、ひどいダメージはないということだね。

このやりとりがきっかけで、その後は、”この破片は深刻なダメージをもたらしていない”というムードのもと、最後まで会話が進む。

著者が指摘するのは、明らかにさまざまな前提の上でのはじめの地上部隊からの発言なのだが、MITリーダーが、「大丈夫なんだね」という言葉を発した瞬間、だれもそれに疑いの余地を挟むことはしなかったというもの。

これが、著者の言う、少人数グループの意志決定の弊害というわけです。少人数グループの議論の特徴がいくつか、述べられています。


-少人数グループは、意見の相違より一致を大事にする
-初期の影響力のあるグループメンバーの発言がきわめてグループの意志決定に影響を与える
-そうした意志決定後は、いくら新しい情報が入ってきたとしても、その結論をサポートする情報にしか目がいかなくなる

ここでの問題の構造が、今回の酔っぱらい会見をだれも制することなく、世界中に露呈した問題の構造と似ているのではないかと思うわけです。

おそらく、中川氏とその側近と何人かのグループで、移動しているわけですが、そこに少人数グループによる誤った意志決定メカニズムが働いたというのが一説となり得るのではないでしょうか。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

当初は泥酔などと報道していた新聞もありましたが、酔っ払ってたというよりも風邪薬を所定の量よりも多く飲んだ上での少量の飲酒(しかもワイン)が原因だったと聞いてます。

意思決定の話についてはおっしゃるとおりですね。無理矢理に意味のない会見を開かないで簡単な報告だけにすれば良かった。
(情報公開としての意味のなさではなく、マスコミの質問のような低レベルな質問に対しては文書で発表しても同じ、という意味で)

中国にも指摘されましたが、本来なら日本を共に盛り上げていくはずの他党から、ここまで足を引っ張られるのは末期なんでしょうか・・・