2009年2月13日金曜日

LBSのPrivate Equity Conference

今日は、ロンドンビジネススクールのPrivate Equity Clubが主催するConference
http://conference.london-pec.org/2009/index.html
私は、PEが企業を買収したあとの、実際のターンアラウンドや成長に向けたお手伝いを何件か長期でコンサルティングでやっていたので、興味をもって参加。

テーマは、”A Time to Evolve”というもので、プライベイトエクイティの今と将来について、現場で活躍しているビジネスパーソンを呼んで、ディスカッションするというもの。三本のキーノートスピーチと、4つのパネルディスカッションで構成されています。キーノートプレゼンテンターは以下のとおり。

Anne Glover, Co-founder and Chief Executive, Amadeus Capital
Conor Kehoe, Director McKinsey & Company's London office
Dwight Poler, Managing Director, Bain Capital.
Many other prominent speakers from companies including 3i, Lone Star and Actis will be present during the event.

大きなメッセージとして伝わってきたのは、大きな潮流として、PEの利益の源泉は、いわゆる金融エンジニアリングから、買収企業の価値の創出に移ってきているということだと思う。

資本構成を変えたりといった金融的なテクニックで瞬時に利益を生みだせる機会は減ってきていて、逆に、本当の意味で、コストを削減をしたり、売上げを増やしていくようなことを着実にやっていかなければいけないというもの。

上のメッセージの方が、リスナーには「ウケ」が今のご時世、いいというのもあるでしょう。というのも、金融発の大不況ということで、世論は、金融で儲けるなんてけしからんという方向に過度にふれていますから。

いずれにしても、企業のビジネス的な価値を産み出すことが大事というのは、金融経済から実体経済への回帰という、これから5年から10年ほど続くであろうトレンドに即したものだと思います。

マッキンゼーとLBSが協同でPE業界を調査した研究成果も発表されたのですが、これがなかなか面白い。いくつかメッセージを紹介してみましょう。

PEファームによるリターン底上げ効果の約半分弱がビジネス改善によるもの
トップ四分の一のPEファームのリターンは、35.1%。業界的には3割を越えないとダメですから、こんなものでしょう。ただ面白いのは、トップ四分の一で、のリターン。業界全部でやると、インデックスより収益が落ちるので、そもそも分析の対象外にしている。PEというのは力があるところだけがPEファームなのです。

その35.1%の構成はどうなっているかというと、そもそも買収する前で16.6%のリターンがあり、ビジネス改善が8.9%、金融エンジニアリングが10.4%の底上げ効果が平均してあるという結果が出ています。ざっくりビジネス改善が9、金融エンジニアリングが10という感じです。ビジネス改善効果も、無視だけないね、というお話。とはいえ、レバレッジなどの金融パートで10も改善できるんだから、そうはいっても、まだまだこの領域も大事なのも分かります。

ビジネス改善効果が高いケースでは、PEのビジネス側面への関与度が高い
なにを当たり前な!と思うかもしれませんが、何となく分かる気がします。実力のあるPEだと、買収企業に効果的に入り込むことができる。逆も真だと思うのです。ある意味で部外者が入ってくるわけですから、それ相応のビジネスセンス、力量、度胸などがないと、そう簡単に企業に入り込んで、意志決定に影響を及ぼすのはなかなか難しい。実際PEの人間と、事業会社の人間は、インセンティブのかかり方も、キャラクターも全く違うので、協調して働くとなるには越えなければいけないハードルがあります。

ちなみに、ビジネス関与度が高いというのは、ここでのプレゼンによれば、PEファームサイドから、CEOへのコンタクトの頻度やemailのやりとりの頻度が多いとか、外部の支援を適切に使いながらビジネスを進められるかとか、経営陣を取り替えられるかどうかなどを指しています。

PEの非常勤取締役は、非常勤取締役の新しい形態になる
じつは、PE(トップ4/1)の買収企業は、他の公開企業より、リターンが高いのですが、その理由のひとつに、非常勤取締役の役割の違いがあるのではないか、というもの。通常の非常勤取締役の役目というは、リスク管理、コンプライアンス遵守、社長継承プランへの関与、戦略の確認といった、どちらかといって、チェック役、番人役的な役割。

一方で、PEによる非常勤取締役の役割というのは、企業価値の創出、成長戦略の作成リード、出口戦略づくり、といったように、リターンをまさにドライブしていく要素ばかりにトッププライオリティをおいていて、フツーの非常勤取締役とは、まったくもって行動様式が違うという指摘です。

金融テクニックによる利益創出とともに、実際にビジネスをよくしていくことがPEの世界では求められるということです。実際、こちらのPE人材の採用動向をみると、戦略コンサルタントやインダストリーからの採用が多いようですね。

実際にビジネスをよくするという側面でも、私の経験からすると、PEによってかなりスタンスが分かれています。コスト削減にフォーカスするところ、コスト削減は全く手をつけず、純粋に売上げ増加を目指そうとするところ、産業再編を視野に入れたリストラクチャリングを行うところ、などなど。

ブログ書きはこれくらいにして、試験勉強、試験勉強!イヤなことに、明日はCorporate Financeの試験です。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

なかなか興味深いですね。

悩ましいのは、PEファームとしては入札に勝てないとディールができず、そのため好況期には買収価格が上振れ/不況期には下振れし、その買った/売ったタイミングでリターンの大部分が影響されてしまうということでしょうね。

リターンの源泉の構成は、サンプルの期間の取り方で全然変わってきますから。06-07ヴィンテージの案件はどれだけ経営改善しようとも投資案件としては壊滅的なリターンしかでないはず。

おっしゃる通り、経営改善が大事だよ、というメッセージは今の世相を反映した若干window dressingなメッセージのように感じます。

とはいえ、中長期的に生き残るのは経営改善(ハンズオンであれ、経営者を入れ替えるタイプであれ)ができるファームだけかなとも思いますけど。日本でもそこそこ名の知れたファンドが活動停止し始めているフェーズに入ってきていますし。

3iのように、イギリスのPEはアメリカと違ってdevelopment capitalを入れることが多いなど産業育成に貢献してきたという評価もあるのは事実なので、色々と勉強したいところではあります。

twk さんのコメント...

AKさん

コメントどうもありがとうございます。さすが業界内部をみているだけあって、面白いコメントありがとうございます。今度PEについて色々と教えてください。