2009年12月12日土曜日

「ジョージ・ソロス VS アカデミックの世界」から見えてくることとは?

イングランド銀行に対しポンドを空売りし、ポンドを暴落させたとして名を馳せたジョージ・ソロス。そして、ソロスファンドは、数千%の利回りをたたき出していく。

そのジョージ・ソロスと、ロンドンビジネススクールの教授陣Sir Andrew Likierman (chair), Julian Franks, Richard Portes, Lakshmanan Shivakumarがパネルディスカッションを展開しました。

独自の視点で世の中を見ているジョージ・ソロスと、ファイナンスの理論を通して世の中を見ている教授陣の対立が透けて見えるようで、面白かった。

じつは、私はソロスの思想には明るくないのですが、表面上は(?)教授陣は、ソロス氏の主張に賛同していましたが、おそらく根本的な思想の違いがあることがディスカッションから伝わってきてのが印象的。かつ、それは、私たちにとって、重要な示唆を含んでいます。

それはどういう対立軸か?

ファイナンスの世界には、効率的市場仮説という考え方があって、ファイナンスを少しでもかじれば、すぐに出てくる考え方です。

それは、おおやけ情報に基づいて株を買ったとしても、平均的な儲け以上よりは儲けられないというもの。この基本的な考え方からは、アカデミックの世界は様々なメッセージを紡ぎ出してきました。

パネルのJulian Franks教授によれば:

ハイリスク・ハイリターンの考え方
投資分散によるリスク低減の考え方
正味現在価値の考え方

が挙げていました。で、ソロス氏は、この効率的市場仮説を真っ向から否定する立場をとっています。この仮説を否定するということは、そう、上記3つの考えもたちどころに崩れることになるというわけです。

Franks教授曰く、「これらの一連の美しい体系が崩れ去るので、だから効率性市場仮説にこだわらざるを得ないのだ」と。

さらに、若きホープ的な教授であるShivakumar教授は、明確に「効率性市場仮説は、使えるのだ。どんな理論にでも限界はある。限界があるところは、他の理論で補っていけばいいのである」という主張。また、「それらの限界や、ソロス氏の主張についてはアカデミックの世界では今研究している」ともいう。

ソロス氏が大もうけした最大の秘訣は、ハーがリー生まれのユダヤ人であった彼が、ナチスの迫害から逃れながら、さらにはハンガリーのハイパーインフレを間近に見ながら、独自の視点でマーケットを見ることができたことだと思うのです。

効率性市場仮説の限界については、ソロス氏も教授陣も認めるところ。ここは両者とも賛成しているのでしょう。しかし、その仮説をなんとか維持して、よく言えば発展させよう、悪く言えば、つじつまを合わせようとするアカデミックの世界に対して、自分独自のモノの見方をした結果、その仮説を否定するソロス氏。

ここには大きな違いがあり、その違いこそが、ソロス氏の大もうけの秘訣なのではないかと思ったパネルディスカッションでした。

既存の見方を通して物事を整理しようとするか?
ありのままの事実を自ら咀嚼しようとするか?

みなさんはどちらのタイプですか?

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