2009年9月4日金曜日

企業変革の被害者からの視点

Managing Changeの授業もそろそろ、終盤戦。今までの必修科目に比べて、選択科目のクラスの雰囲気はガラッと変わり、それそれは新鮮です。

というのも、このクラス、MBA2年生に加えて、Executive MBAの学生、さらに四分の一くらいが交換留学生が交じっているため、一段と議論が活発、面白いものになっていると感じます。とくに、Managing Changeのようにヒト系の科目の場合、シニアなExecutive MBA生がいるというのは、きわめてプラスに働いていると思います。

この授業は、Changeについて、トップによる変革、ミドルからの変革、大企業における変革などさまざまな角度からChangeについて理解を深めていきます。

その中で、とくに面白いのは、変革を受け手からみる視点。 正直、これはスゴイ視点です。

変化、変革というと、多くの場合、どう組織を変えるか、どう業績を上向かせるか、どうリストラをするか、という変化を「起す」側からの論考が多い。でも、誰もが経験するように、じつは、変革の受け手、被害者になることも、多い。というか、こちらの方が個人へのインパクトとしては大きい。

たとえば、リストラされるとか、政治闘争に負けたとか、事業が売却されそう、とか左遷されそう、など変化に伴うことによって、個人がウケル影響は決して小さくないし、さまざまなケースで起こりえます。リーマンショック以降の今、そしてアメリカの失業率が10%に届きそうな今、スペインの失業率が20%な今、普通なことです。

さて、そんな変化を受ける側の視点について、まとめているのが、ハーバード・ビジネス・スクールのTodd D. Jick教授。

Note on the Recipients of Change
Professor Todd D. Jick

http://harvardbusiness.org/product/note-on-the-recipients-of-change/an/491039-PDF-ENG

ひとことでいえば、「変化を受け入れるのには時間が必要」ということ。変化に対するリアクションは、いくつかの段階を経るのだと指摘しています。いくつかのフレームワークが紹介されています。

たとえば、

1.終了フェーズ
2.中立フェーズ
3.開始フェーズ

とか、

1.ショック
2.保身
3.承認
4.適合と変化


といったもの。私たちは、「さあ、変わってください」といって、「はい、分かりました、変わります」とは絶対にはならない。そこには、まずショックがあり、そして、ディフェンシブになり、ときには抵抗したり、もがき苦しみながら、ようやく状況を飲み込んでいって、新しい世界を模索するようになるというものです。

これは、よく分かります。自分自身も、所属しているコンサルティングファームが買収されて、新しい会社に変わったときも、新しいカルチャーになじむのに、というよりは、受け入れるのに「ある時間」が必要でした。今から考えると、何でもないのですが、なぜかそのときは時間が必要でした。

企業変革のコンサルティングをしているときもしかり。クライアント側のトップが合意したとしても、チーム、組織の従業員が理解してもらうためには、ある一定の時間-これは、ときには大きな抵抗勢力にあったり、なだめたり、話しを聴いたりと大変ですが-が必要です。

逆に、もし変革を起すといって、「抵抗」が何もなければ、それは本当に変革なのか?と疑わなければいけないとも、教授は指摘しています。

こうした人間の心理的変化を踏まえて、マネージャーとして何をしなければいけないのか?この記事では、

Rethinking Resistance-抵抗を考え直す

ことを対処策としています。抵抗というのは、自然なこと、抵抗というのは変化に対する原動力になること、抵抗というのはエネルギーの源泉になること、変化に必要なこととしています。

何もこの考え方は、企業の変革に影響を受けるケースだけでなく、キャリア変化、転職、昇進などそんな場合にもあてはまると思います。

MBA2年間のプログラムは、はじめのタームが極めて忙しくストレスフルと言われます。これは、上記のモデルに照らし合わせれば、全く新しい環境に適合するための移行期であるが故に、そう感じるのかも知れません。

変化の受け手側を深く理解することによって、自分がその立場に立たされたとき、また自分が変革を主導するとき、そのどちらのときも、より効果的に動けるようになるのだと思います。

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