MBAの授業の多くでは、いくつかの再度リーディングを課されていきます。
その授業で扱うケースを補完したり、新しい視点を提示するために使ったりと、その目的はさまざまですが、教授が厳選しているだけあって、このサイドリーディング、けっこういい記事が含まれているのです。 また、色々と調べ物をする中で、いい記事に出会ったりもします。
というわけで、個人的に面白いと思った記事で、紹介に値すると思ったものを、このブログでもたまに取り上げていこうかと思います。
Tipping Point Leadership
By W. Chan Kim and Renee Mauborgne
http://harvardbusiness.org/product/tipping-point-leadership/an/R0304D-PDF-ENG
あのブルーオーシャン戦略を世に送り出したW. Chan Kimによるチェンジマネジメント論。この論考が鋭いのは、やはりTipping Point、すなわち“臨界点”という概念に注目したことでしょう。
企業は変わろうと思ってもなかなか変わらない、だれもがそう思うのですが、あるクリティカルマスを越える人間が本気になった途端、まるでウィルスが伝染するかのように、企業はあっという間に変わる、そのことを書いています。
“In any organization, once the beliefs and energies of a critical mass of people are engaged, conversion to a new idea will spread like an epidemic”
これは、まさにその通りで、私もいくつもの変革プロジェクトでこれを経験しました。そうなのです、はじめは様々な抵抗に会うのですが、改革派のシンパがある水準に達すると、組織が動きだす。そうなれば、もうコンサルタントは不要です。逆に、いつまでも改革の実行フェーズでも、多くのコンサルタントを投入せざるを得ないのは、このTipping Pointなる概念を理解していないということになります。
誰もがなんとなくそうだよね、と思っていることをTipping Pointという一言にのせて世に問うているところが、Chan Kim氏の凄いところでしょう。ブルーオーション戦略という言葉しかり。
途方もなく大変に見える改革であっても、いくつかの急所を押さえて、ある臨界点を越えさせることが、リーダーの仕事というのです。
著者らが、提案しているその急所というのは、次の4つです。この4つを乗り越えることで、Tipping Pointを越えることができるというのです。これら4つの考えを、この記事では、治安が悪化したニューヨークを転換させた、当時のニューヨーク市警長官William brattonの実例を使って、鮮やかに描きだしています。
Cognitive Hurdle(認識の壁)
経営幹部を問題に向き合わせることで、問題を心底理解してもらう。問題を説明するのではなく、問題を体験させる
例:幹部の車での通勤を廃止。みな、危険なニューヨークの地下鉄を利用させる。身をもって治安の悪さを実感する
Resource Hurdle(リソースの壁)
本当の問題にフォーカスすることで、リソースを捻出する
例:ニューヨーク市民はたまにおきる暗殺といった大きな事件ではなく、もっと些細だけど頻繁に起こっている強盗などにおびえている。そうした些細だけど頻繁に起こる事件にリソースをあてる
Motivational Hurdle(モチベーションの壁)
キーパーソンにスポットライトをあてる。モチベーションの問題だからといって、すぐにインセンティブ制度を変えようなどと思ってはいけない。それは途方もなく時間がかかり、結局意味をなさない
例:ニューヨーク市警の地区長に全員の前で何がうまくいって、何がうまくいってないかを発表させることに。うまくいっている地区長は、スポットライトを浴びる!
Political Hurdle(政治の壁)
やはり、政治はいつでも必要。政治力学を上手に活用せよ
例:些細だけど頻繁に起こる事件を取り上げるのに反対していたのは、裁判所。なぜなら、さばく事件の数が莫大に増えるから。ニューヨーク市長を見方につけて、裁判所を動かした
企業変革の際、もしくは部署の方針を変える際、この「臨界点」を意識することで、大きなヒントを得られるのではないでしょうか。
2009年9月4日金曜日
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