2009年9月19日土曜日

マーケティング理論が企業変革に使える本質

マーケティングも、企業変革も、結局は「人の行動を変える」ということ。マーケティングは、消費者に自社の商品を買ってもらうための一連の企業活動のことですから、言い換えれば、買うという行動を引き起こすこと、と言えます。

ターゲティング、セグメンテーション、ポジショニングや、各種のコミュニケーションなどは、行き着くところ、顧客に商品を買ってもらう、その行動をとってもらうため、といえるわけです。

企業変革はどうでしょうか?環境が変化して、企業のビジネスモデルを抜本的に変えなければいけない。そういう状況下で、社員には今までとは違うことをしてもらわないといけない。すなわち、社員が行動を変えていく必要があるわけです。

マーケティングもより多くの人を動かしたらカチ。企業変革も一部の社員だけが新しい戦略に即して行動を変えるだけでは全く話しにならなくて、全社一丸となった行動の変更が必要になってくるという意味でも本質は全く同じです。

という本質的な共通点に気付くと、マーケティングの考え方も企業の変革に大いに役に立つといえます。

British AirwaysのSimon Talling-Smith氏は、LBSでのスピーチで、まさにこの点について具体的に触れていました。彼は、イギリスのフラッグシップキャリアである巨艦British Airwaysで、“e化”を成功裏に進めた人物。

インターネットを通じたチケットの申し込み率100%というチャレンジングな目標を掲げ、官僚制の権化のような会社で、多くの抵抗に合いながらも、e化の取り組みを進めていきました。

そのときに、Simon Talling-Smith氏が肌身をもって感じたのが、マーケティングで有名な“イノベーションの理論”だというのです。

イノベーションの理論とは:
http://www.jmrlsi.co.jp/mdb/yougo/my02/my0219.htmlより)

イノベーター理論とは1962年に米・スタンフォード大学の社会学者、エベレット・M・ロジャース教授(Everett M. Rogers)が提唱したイノベーション普及に関する理論で、商品購入の態度を新商品購入の早い順に五つに分類したものです。

イノベーター(Innovators:革新者):
冒険心にあふれ、新しいものを進んで採用する人。市場全体の2.5%。

アーリーアダプター(Early Adopters:初期採用者):
流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断する人。他の消費層への影響力が大きく、オピニオンリーダーとも呼ばれる。市場全体の13.5%。

アーリーマジョリティ(Early Majority:前期追随者):
比較的慎重派な人。平均より早くに新しいものを取り入れる。ブリッジピープルとも呼ばれる。市場全体の34.0%。

レイトマジョリティ(Late Majority:後期追随者):
比較的懐疑的な人。周囲の大多数が試している場面を見てから同じ選択をする。フォロワーズとも呼ばれる。市場全体の34.0%。

ラガード(Laggards:遅滞者):
最も保守的な人。流行や世の中の動きに関心が薄い。イノベーションが伝統になるまで採用しない。伝統主義者とも訳される。市場全体の16.0%。


イノベーションの理論で、アーリーアダプターを重視する考え方があります。というのも、彼らを取り込むことによって、そして彼らが商品に満足してくれたならば、彼らが他の消費者に影響力を行使して、さらに商品の普及が進むから。

Simon Talling-Smith氏が言うには、これはまさに変革するときにも忘れてはいけないというのです。

  • 企業変革の際、社員の巻き込みは必須。そのときに、アーリーアダプターをまず巻き込め。アーリーアダプターを味方につけることができたら、彼らは周りの社員ももっと巻き込んでくれる
  • ダメなのは、すでに変革を十分に理解してくれているイノベーターに働きかけてしまうこと。彼らと話すのは心地よいが、もうすでに理解してくれているのだから、働きかけるだけ労力のムダ
  • もう一つ犯してしまう失敗は、抵抗してくる社員を説得するのに、必要以上に労力を割いてしまうケース。彼らは、イノベーション理論でいうところの、ラガードで、変革の初期のときに説得しようとしても難しい。

これは、重要なことを言っていますよね。まさにその通りで、コンサルティングの実際においても、一体だれを巻き込んでいくか、そしてそのシンパをどのように増やしていくか、これが肝だったりするわけです。

マーケティングも企業変革も「人」を扱うことには変わりはないということがよく分かります。MBA的な科目は、マーケティング、リーダーシップ、ファイナンス、などと縦割りで教えていきます。しかし、その科目たちの底流にある、有機的なつながりこそに、本来のマネジメントの本質があるように思います。そのつながりは、私たち自身が自分なりに抽出し、身につけていかなければいけない、そんな風に思います。

2 件のコメント:

tsutsumim さんのコメント...

面白いですね。確かにアーリーアダプターを取り込んでティッピングポイントまで持って行くとおおきなうねりになる気がします。

また、抵抗についても、「タイミング」はかなり重要だと思います。話を聞く用意ができていないヒトに話をしても聞いてもらえないですからね。

ちなみに抵抗といっても3つの抵抗があるそうです。
・政治的抵抗(うちの部長が変革には反対だし・・・)
・感情的抵抗(このやり方は僕が作ったもので、愛着が有るし・・・)
・合理的抵抗(変わりたいけど、どう変わっていいかわからないんだよな・・・)

抵抗の種類がどこから来ているのかを判断し、それぞれ対応して行く必要があるそうです。

twk さんのコメント...

tsutsumiさん

コメントありがとうございます。

抵抗にも様々なタイプがありますね。初めに激しく抵抗していた人が、変革がその人にとって腑に落ちた瞬間、変革のものすごいサポーターになったりします。

だからこそ、どういう抵抗なのか、どのタイミングでどういうメッセージを発するべきか、などをきちんと考えぬかいないとダメなんでしょうね。