2008年12月16日火曜日

経営はAccounting的

昨日のFinancial Accountingの試験をもって、1学期終了です。その前日は、朝から晩まで、ひたすらAccountingを勉強していて、学生の頃の「詰め込む」感覚を思い出します。頭に詰め込んだ知識を、「こぼれないように、こぼれないように」しながら朝学校に向かう感覚。なんだか懐かしい気もします。

Accountingは、Corporate Financeのように、いくつかの少数の数学的な法則に還元されていくような学問ではありません。少数の法則はあるものの、それらは、数式というよりは、言語された原理原則です。たとえば、「売上は、売り上げられ、かつその額が測定可能なときをもって、認識する」などといったRevenue Recognitionに関する原則があります。

しかし、実際の適用の段階には、数式を展開するというよりは、その原理原則から一歩、突っ込んで、実際のいくつかの適用のパターンも、きわめて大事な知識として、覚えておかないとできないわけです。たとえば、雑誌購読のように、1年一括で前払いする際にはこのように会計処理するとか、ワインの醸造のように、製造に10年架かる場合のコストの計上の仕方などは、パターンとして知っておかないといけないと、実際の問題は解けません。

したがって、原理原則から、一歩深く、より具体的な適用の方法論、考え方までを、ひとつひとつ個別に、覚えないとといけないので、Corporate Financeより試験対策に時間がかかるわけです。Corporate Financeの試験は、いくつかの学問的な数学的な法則をマスターして、それらを自在に操れるように、練習しておけばOKなのに対して、とても対照的に思えます。

私は、理系育ちで、物理や化学、大学院のときには、統計の美しい理論体系に惹かれたたちですので、Corporate Finance的な学問の方が昔だったら好きだと思います。

しかし、ビジネスでは、このAccounting的なアプローチがきわめて有効だと思います。すなわち、大きな原理原則と、実際の事例の、ちょうど間にある、「具体的な方法論、適用の方法」を積み上げていくアプローチです。というか、こちらのアプローチでないと、対応できないはずです。

私が、以前の大学院で所属していた研究室は、統計解析をひとつの専門としていましたが、もう一つ力を入れていたのは、「言語された知識の再利用化」でした。私はTotal Quality Management(TQM)の研究室にいたので、その研究室として扱っていたのが、製品設計や製造工程設計、工程管理周りのテーマで、扱う知識としては、それらの失敗を未然に防ぐノウハウでした。担当の飯塚教授がよくおっしゃっていたのが、すべての技術的な失敗は、結局「F=MA違反に起因するんだけど、それでは全く意味がないんだ」というもの。F=MAというのは、物理の基本法則のひとつ。

この意味するところは、今でも、本当に大事なことだと思っています。F=MAは、広範な物理的な運動を予測はするけれども、じつはそれでは現実には役に立たないというもの。技術者は、みんなF=MAくらいは知っているし、当然それ以上の技術レベルを持ちあわせている。しかし、失敗は起きてしまう。なぜか?F=MAをより一歩、その当該領域に適用させたときの「コトバで語られる適用のノウハウ」が不足しているからだ、というのが「F=MA違反に起因するんだけど、それでは全く意味がないんだ」のココロです。

実際問題、品質管理上の不具合では、同じ原理にもとづく失敗は繰り返し起きています。なぜかといえば、その失敗固有の知識が上手に共有されていなくて、技術者がその知識を使えていないことでした。もちろん、その知識のさらに上流にある、F=MAのような法則、みな知っているわけですが、適用する段階での留意点―これはおもにコトバで語られるモですが―がすっぽり抜けてしまうわけです。

マネジメントやビジネスでも全く同じことがいえると思います。

実際の経営の現場で使われるのは、コトバで語られます。経営会議や、ひごろのビジネス遂行する上でもコトバがとても大事です。また、ビジネスの現場で、マイケルポーターの諸原理が、「直接」役に立つこともありません。数式されることのない、かつ、原理原則からもう一歩具体化したところでのナレッジをどのように蓄積し、活用できるかどうかが、最大のキーポイントになります。じつは、このあたりは、常に経営では比較的属人的に行われてきたように思います。一方で、ナレッジマネジメントははやりましたが、ITツールとしての位置づけで終わってしまいました。アカデミアは、どちらかというと、原理原則を希求したがります。

このあたり、もう少し科学的な方法論こそが、今求められてくるのではないかと思っています。すなわち、大きな原理原則と、実際の事例の、ちょうど間にある、「具体的な方法論、適用の方法、ノウハウ、留意点」のマネジメント方法です。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

飯塚教授、官公庁の標準化戦略関連の仕事で少しだけご一緒させていただいたことがあります。面白い人だよねー。
てゆうかマルタ島ですか。うらやましい!Have a Happy Holiday!!