2008年12月8日月曜日

コンサルティング業界の見通し:Kennedy Information Consultingのハナシを聞いて

"An inside perspective on the consulting industry"

と題したスピーチがあったので、聞いてきました。現在Kennedy Information Consultingに勤務している元アルムナイがスピーカーです。Kennedy Information Consultingは、コンサルティング業界に特化したリサーチ、ヘッドハンティング会社で、経営コンサルティング会社だけでなく、人事、IT、ファイナンス・アドバイザリーなどコンサルティング/ファーム全般をカバーしています。
http://www.kennedyinfo.com/

プレゼンテンターは、今後コンサルティング業界は、今までほどには伸びず、また今までほど激しくアップダウンもなく、安定した成熟業界になるだろうと予測していました。その最大の根拠は、企業とコンサルティング会社との情報格差がなくなってきているから。たとえば、1970年代は、戦略立案そのものが爆発的に売れたのは、企業が、戦略を科学的に立案する手法を知らなかったから。そして、1980年代から90年代にかけて、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)やTQMといったプロセス型のコンサルティングが売れたのは、やはり企業がその方法を知らなかったから。1990年代は、ERPやY2K(200年問題)関連が売れたのは、やはりその解決策を企業が知らなかったから。

しかし、今や、数多くのビジネススクールが、こうした方法論・手法を、エグゼクティブMBAや、MBAプログラムを通じて、幹部や幹部候補に教えているし、本やその他の情報ソースからカンタンに上記の方法論・手法が分かるようになってきたので、昔のような情報格差を使ったビジネスはできなくなりつつあるというのが、スピーカーの主張でした。また、たとえば、BPRに匹敵するような一大ブームを巻き起こすような新しい経営コンセプトが、今後起きる可能性はきわめて低いのではないのかともコメントされていました。

私は、このような考え方に違和感をもちました。というのも、コンサルティング会社が、ある種イノベーティブな商品を提供することで、マーケットのパイを広げるという、そんな立派なことはしていないと思うからです。iPodのように、新商品をポンと出して爆発的に売れる、そんな類の業界ではありません。単純に、景気のサイクルにあわせて、コンサルティング業界の変動も規定されてきているというだけの話しだと思います。たまたま、その時代時代に応じて、比較的よくクライアントに売れたテーマが、70年代は戦略立案、80年代はプロセス改革系、90年代はITがらみだっただけの話しではないでしょうか。コンサルティングフィーは、企業にとっては調査費。企業にしてみれば、いともカンタンに削れるコスト項目なのです。ですので、Kennedyの調査のような、情報格差云々という理論を持ち出すまでもなく、企業の財布の懐の大きさ次第で、コンサルティング業界の大きさが変ってきているわけです。

むしろ、着目すべきは、コンサルティング会社を雇う雇わないの意志決定者がこの10年ほどで大きく変ってきたことでしょう。企業がその意志決定をすることに加えて、その企業のファイナンシャル・パートナー、たとえば、プライベイト・エクイティ、銀行、政府などが、この意志決定に加わり始めた動きは大きいと思います。たとえば、プライベイト・エクイティが企業買収し、そのターンアラウンドをする必要があれば、その再生におけるビジネス面をコンサルティングファームにみてもらおうということになるわけです。

その他にも、企業の買収をすべきかどうかのデューデリジェンスや、もっと広く、どのような業界のどのような企業を買収すべきか、という投資アドバイザリーといったコンサルティングプロジェクトも増えてきたわけで、ある意味で、収入のソースがひとつ増えたということになると思います。また、こうしたファイナンシャル・パートナーが持ち込んでくる案件には、今まではコンサルティングフィーをあまり払い切れなかったような、中堅企業も含まれていることも多く、コンサルティングファームのクライアントのすそのは広がってきたといえます。

世界的に今後コンサルティング業界がどうなるか、ですが、キーワードは、一言で言えば「企業再生」になると思います。この金融危機の影響を受けて、企業は、資金面でのショートに加え、雇用不安・将来不安からくる消費意欲の減退にも直面し、多くの大企業が大変な事態に陥ることが想定されます。実際、すでに米国のビッグスリーなどはその先行事例だと思います。そして、あまりにも大きくて、名の通った企業だと、政府が大胆にも支援するわけです。こうした案件には、その再生の中立性を担保する上でも、ビジネス面のサポートとして、コンサルティング会社が入りやすいのです。

じつは、日本も全く同じ過程をたどりました。日本の場合は、産業再生機構という、公的な再生ファンドを立ち上げて、ダイエーをはじめ多くの有名企業の支援に乗り出しました。おそらく、世界的にも、これと同じような動きが出てくることでしょう。立ちゆく成った大企業、もしくは名の通った企業、歴史的な企業を、公的、もしくは準公的な機関主導で、再生するシナリオです。この再生案件に、多くのコンサルティングファームが何らかの形関与することになると思います。

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