2009年12月5日土曜日

ビジネススクールからみた日本(その2)

World Economyの授業で、日本はどう紹介されたか?の続編です。前回はこちら

当日は、Tokeo Hoshi教授 (University of California)もクラスにコール・インをして、1時間ほどレクチャーをしていただきました。

なぜ、日本はこんなに停滞が長引いているのか?二つの考え方が示されました。

一つ目は、基本的に次の3つの失敗によるというもの。
1. 財政政策の失敗
2. 金融政策の失敗
3. 不良債権処理の失敗

財政政策に関しては、景気がまだよくなっていない97年の時点で緊縮財政路線に少し切ったのが失敗だったというもの。金融政策も同じようなロジックで、まだ回復していない段階で、金利を少しあげたのがダメだったというもの。不良債権処理は着手が遅すぎたというもの。

もう一つ、紹介されたのは、東大のHayashi教授の考え方。Total Factor Productivity(TFP、生産性)が落ちているという考え方。

経済の成長には、資本、労働、TFP(技術など)が必要ですが、日本はこのTFPがずっと低下してきている、ということです。そもそも、生産性が低い、すなわち金融の問題ではなくて、構造的な問題を抱えているという指摘です。

たとえば、銀行システムが機能していなくて、いまだにゾンビ企業に融資しているとか、労働の流動性がないために、なかなか新しい産業に人がいかないとか、そういう話しです。しかし、これらの改革は遅々として進んでいないというのがもっぱらの見方です。

明らかに二つの理由のうち、後者が本質的な理由だと思いますが、マクロ経済の弱いところは、問題解決の段階になると、急激に無力化するというか、具体論にかけるというか、そんな印象をもちます。

そして、こんな講義資料にはこんなコメントも:
“Amazing that a country that in many ways remains at the frontier of new technology has struggled so much in achieving productivity growth”

技術立国の日本が技術や生産性で悩む何て、不思議だねぇ、という指摘。やはり、ここはミステリアスであるようです。前回の冒頭の話しに戻りますが、ここに成熟社会の難しさの本質がある見え隠れします。

3 件のコメント:

Makko さんのコメント...

日本に関する内容、とても面白かったです。日本に対する関心が少ないのは、残念です。

また、東大の林先生は、経済学の分野でとても優れていると知りました。

実は、この林先生は一橋ICSの夜間の金融コースの方に今年、東大から移籍されました。いろいろニュースやなぜ移籍をしたのかについて、憶測がたちました。

twk さんのコメント...

Makkoさん

コメントありがとうございます。

日本への政治・経済的な関心はここあまりパットしませんが、一方で文化的なこと、具体的な企業(トヨタ、ソニーなど)となると、きらりと光るものがあるようで、関心は高いです。

そちら米国ではいかがでしょうか?

林先生は、計量マクロで私も学生時代に教わっていたことがありました。日本でもめずらしく英語で授業を展開していました。

そうでしたか、一橋に移籍されたのですね。

sum さんのコメント...

久しぶりに立ち寄りました。
日本は立ち上がれそうにみえません。今回の選挙でも何が起こるのかと海外からは読めないでしょうね。
思うことは多いので、毎日何かをつぶやき、ブログにも記事を載せています。

最近の報道によると、外国留学をしたくないという人が多いようです。事実、ハーバードでの日本人留学生が少ないので、国としても何とかした方がよいとハーバードの担当者が文部省を訪問していた。

国立大学への政府予算が削減されたことも大きな問題です。
東大総長がHPでそれに危惧を表明しました。関係の無いことですが、この総長は私の家内のいとこです。貧乏くじを引いたのかもしれません。