2008年10月27日月曜日

学長が語るLBSの戦略:若手優秀人材の争奪戦




「我々にはスケールが足りない」

LBSの学長Robinは、先日のSchool Strategyのプレゼンで語っていました。Robinは、マッキンゼー、ベインといった経営コンサルティング会社を30年も経験したのちに、昨年にLBSのDeanに就任という経歴の持ち主。副学長は、Strategyの教授であり、かつ戦略担当としてマッキンゼー出身者を最近採用したようで、学校にしてはめずらしく、Strategist色のとても強いマネジメントチームが出来上がっています。

Robinが言うには、LBSは、学生の多様性においてはずば抜けていて、Global Business Schoolとしの強みをいかんなく発揮しているとのこと。これは大いに同感できます。私のStream Dは、およそ40カ国、80人の学生で、今授業を受けています。みなMinorityという環境でディスカッションするのも、よく考えると、本当に貴重な経験だと思います。「ブラジルではこう」とか、「ペルーではこう」といった、各国の生の事情を聞けるのが楽しい。

その一方で、LBSは、「規模」が弱みになっているとのこと。たしかに、MBAの学生はひと学年320人ですので、小規模校に位置づけられるでしょう。では、なぜスケールが必要なのか?学長は2つの点を指摘していました。まず、第一に、規模を大きくしないと教授の数を増やせないのです。教授の数を今よりも増やすことで、より専門領域を充実させることができる点を強調していました。もう一つは、卒業生ネットワークの規模。各都市に300人いないと卒業生がうまく組織化できず、いくつかの都市はこのクリティカル・マスを超えてないそうで、ここを早急にクリアしたいとのことでした。

したがって、ここ最近の動きをみていると、急拡大の方向に舵を切っています。来年から、MBAはもうストリーム80人増やします。エグゼクティブMBAも毎年25%で拡大中。ドバイで行っているMBAプログラムも1ストリーム増やすとのこと。そして、ここ最近物議をかもしているのが、新しい学位 Master in Managementの立ち上げです。学卒、もしくは就業経験が1年未満の22歳前後の若手人材向けの新しいマネジメントプログラムを提供するというのです。

驚くべきことに、Robinが言うには、この22歳ビジネス教育マーケットが、今爆発的に増えているそうなのです。MBAマーケットがグローバルで見れば、飽和してきているのに対して、少し年齢を落とした22歳マーケットは拡大中。さらに、40歳以上を対象にしたエグゼクティブ・MBAマーケットは、米国では減少中だそうです。今後、みなが注目しているのが22歳!なわけです。 実際、この手のプログラムの出願に必要な試験GMAT-共通一次のようなもの―の受験者数をみると、22歳前後は増え続ける一方、30歳以上はほとんど変化がない、もしくは減少しているのだそうです。

そして、最近のMBAの平均年齢が減少している背景には、この22歳マーケットの急拡大があるのです。彼らは、早く昇進し、早く金を儲けようという意識が高く、昔に比べると、MBAのような学位を早くほしがるようになってきている、そんな大きな変化があるように感じられます。企業サイドとしても、学卒で、ビジネスがなんだかまったくわからないよりも、基本的なビジネス・マインド、ビジネス・コンセプト、マインドを身につけている学生をとった方が効率的、そしてなによりも若いのでまだ安くすむというのもあるでしょう。いまや、若手人材の争奪戦が始まっているということです。

したがって、ビジネススクールのMBAプログラムでは最近は、大学卒の学生をそのままクラスに受け入れることもしばしばです。ただ、LBSはそれをしてこなかった-個人的にはいいことだと思います―ですので、平均年齢が29歳と昨今のMBAにしては、高め。これは私のようなやや年寄りにはうれしいことです。だから、今までこの急増する22歳マーケットを取り込めなかったわけで、そこをMBAではない、別の学位、Master in Managementを立ち上げるということにしたというのです。これは、いいことだと思います。それによって、職歴がほとんどない人と、そこそこある人を明確に線引きできるわけですから。

Master in Managementのメリットとしては、これにより、教授の数を増やせること、さらには、若手教授のトレーニングの場として、このプログラムが使えることが挙げられるでしょう。一方で、学生から上がっているデメリットというか、懸念としては、Master in Financeや、35歳+を対象にしたSloan Programmeといった学位とのすみわけをどうするかです。

いずれにしても、私が思うのは、日本の22歳はのんびりしすぎていないか?という懸念です。遊び呆けて終わってしまう大学。一方世界の優秀な若者は、そのころからMaster in Managementや、MBAを検討して、戦闘態勢を整えているわけで、その差に愕然としてしまいます。世界は、若手人材の争奪戦が、ビジネススクールでも、企業でも、加熱してきているのを実感した、Deanのスピーチでした。

日本も大学卒業した直後に入学できる、1年制のビジネスの基礎、コミュニケーション、問題解決能力を叩き込む学位を真剣に検討してもいいと思います。

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