2009年1月4日日曜日

EasyCafeに学ぶプライシング術

年末から年始にかけて、インターネットにつながらず、浦島太郎状態でした。いまだに自宅のネット環境は復帰しないままなのですが、今日はイギリスの北部、スコットランドの首都エディンバラにきまして、ようやくホテルのネットにようやくつなげた、というわけです。たかだか、何日かですが、ネットにつながらないと不安に思うのは病気でしょうか。

さて、今日はすこしプライシングについて。

経済学の授業で取り上げられたケースで、easyEverythingがあります。イギリスに本社のあるインターネットカフェチェーン店です。ライアンエアーとシェアを競っている格安航空会社easyJetのグループ会社でもあります。もともとは、供給曲線についての理解を深めるケースなのですが、プライシングの点においても、学ぶべきところがあると思います。

ここのインターネットカフェの一時間あたりの料金は、その店のお客さんの埋まり具合、すなわち、占有率に応じて決まってきます。埋まり具合が少なければ、料金は破格の値段ですむし、混み出すと、料金が上がっていくのです。それも、可変ポイントをたくさんもっていて、ほぼ連続的を価格を動かしています。真夜中は、限りなく安く、昼間それも昼休みや夕方は価格が高くなっていくわけです。



店のキャパシティが一杯に近づくにつれ、すなわち占有率が1に近づくにつれ、価格が急激に高騰していくのも、まさに供給曲線にならっています。これは、資源価格などがある段階まで高騰すると、それ以降、急激に高騰していくのと同じ原理ですね。これは資源には限りがある(という前提が機能している)からこそ、乱高下しているのです。


おお、すごい!これで、売上げアップで、利益を押し上げる!というと、そう単純でもないのがこのハナシの面白いところです。占有率が低いときには、価格を落とすわけで、結局売上げが落ち込み、結局利益上昇にはそんなにつながらないというのが、easyCafeのマネージャーのはなしなのです。なんだ、やる意味がないではないか。

じつは、ライアンエアーがやっているような、可変型プライシングとは少し事情が違うところがあります。航空会社の座席は、同じ商品(同じ時間の同じ便)であって、申し込み時期によって、もしくは顧客セグメントによってプライシングを変えられます。すなわち、同じ商品に対して、価格の差別化ができます。航空券は、かなり前段階で予約すれば安く買えるし、日程が近づくにつれて価格はあがり、最後余った席は、空気を運ぶよりましということで、また安くなるといった感じです。

一方で、このインターネットカフェの場合、その時間帯のすべての席の価格を動かさなければいけないのです。言い換えれば、Price Discrimination(価格の差別化)ができにくいんです。たとえば、真夜中でガラガラのネットカフェで、もっと値段を払ってもいいという人がいたとしても、その人は破格の値段を払うわけで、本来とりえる利益もすべて吹っ飛ばすわけです。

では、そうだと知りつつ、easyCafeはなぜ、こうしたプライシングをしているのか?

その答えは、占有率が高いことに別の価値をもたせているからです。これは学びになります。PCを立ち上げたときに、いろいろなさまざまなバナーが出るようになっていたり、店内が広告スペースになっていたりします。価格をダイナミックに変えることで常に占有率をある程度高くしておくこと可能で、その結果として、広告収入が増えるという仕掛け。占有率が高いということが、また別の価値を生んでいるのです。ここをとりにいくために、可変型プライシングを取り入れているということでしょう。

単純化してまとめると、
 価格の差別化ができないときに、単に可変型プライシングをやってもだめ。
 価格の差別化ができるならば、積極的に可変型プライシングを検討してみる価値あり。
ということになりましょうか。

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コンサルティングで、プライシングのお手伝いをするときによくクライアントから出る声として、こんなのがあります。価格は、需要と供給で決められるから動かせないとか、商品の開発にコストにこれだけかかっていて、社内ルールで利益率がこれこれで定められているので、価格はこうでなければいけない、といった声が聞かれます。一言でいえば、プライシングに工夫の余地はないと暗に言いたいのだと思います。

しかし、上に書いたように、可変型のプライシングなどはまだその一端ですが、プライシングは、その他にももっともっと工夫の余地があります。たとえば、アンバンダルといって、今まで一体でうっていたモノをバラバラにして、一見安く見えるようにしつつも、じつはまとめて買えば、今まで以上の額になるといった方法もあります。

プライシングはかなり企業側の「色」を出せる奥の深いマーケティング上の重要な施策だと思います。

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