2009年1月14日水曜日

London Business Schoolの成功要因は何か?

London Business Schoolは他のビジネススクールと比べると若い学校ですが、その短い歴史の中で目を見張る躍進を遂げてきました、とウェブサイトで紹介されているとおり、じつは最近できた学校なのです。

“London Business School is young compared to its competitors, but it has accomplished a phenomenal amount in its short history. The School has achieved praise for its rigorous and influential academic work, while being rated as one of the world's top business schools for its degree and non-degree programmes.”
http://www.london.edu/theschool/keyfacts/history.html

その設立は、1965年。まずはエグゼクティブ向けのプログラムなどから始まり、フルタイムのMBAプログラムを開始したのはわずか1987年からでした。そして、その後あっという間に、トップスクールの仲間入りを果たすことになるのです。

ビジネススクールは、いつも変化するビジネスに合わせて進化を遂げなければいけませんが、このわずか短い歴史の中で、ここまで成果を出せたのはなぜなのでしょうか?じつに、不思議なことだと思います。その成功要因はどこにあるのでしょうか?

秀逸なプログラムでしょうか?キャリア支援サービスでしょうか?これらは、ビジネススクールの間で多少の差こそあれど、他社を圧倒的に出し抜くほどの差別化要因にはならないでしょう。教授陣でしょうか?たしかにトップクラスの教授はいるのですが、むしろトップスクールになったからトップクラスの教授陣が集まってきたのでしょう。因果関係が逆です。

ロケーション?ロンドンという地の利が、ランキングを底上げしたのでしょうか?たしかに、ロンドンは最高のロケーションですが、であるならば、ロンドンにある他のビジネススクールとの差をどのように説明すればいいのでしょうか?

周到に計算された戦略?崇高なビジョン?ロンドンビジネススクールのビジョンは、Becoming the pre-eminent global business schoolというもので、まあフツーでしょう。

もしくは、そのDiverse Student bodyでしょうか。マジョリティがいない、マイノリティだけのクラス環境が差別化要因になったのでしょうか。たしかに、強烈なセリングポイントなのですが、欧州系のビジネス・スクール全般のセリングポイントでもあります。

では何がカギだったのでしょうか?

私はそのネーミングにカギがあるのではないかと思っています。

“London Business School”

そう、このネーミングです。

Londonという言葉が内在的にもっている「意味」をまさに、学校のブランディングにレバレッジさせたことが最大のgood pointなのではないかと思います。

ロンドンと聞いた瞬間に人は何を思い浮かべるでしょうか。

サッチャー政権によって、ウィンブルドン現象とも揶揄された、シティやカナリーウォーフに代表される、トップバンク・投資銀行がひしめく金融街が何よりも有名です。また、なんといっても、移民を受け入れまくり、ロンドンはイギリスではない、とも言われるまで、多国籍都市になりました。

そして、美術館、博物館、演劇、音楽などのさまざまな豊かな文化・エンターテイメントの発信の地でもあります。さらには、Londonのもつ、他の都市とは違った、どこか憂い気で独特な意味深い雰囲気。

ロンドンのもつ言葉のパワーを、London Business Schoolと命名することで、拝借したのです。

そして、ここが上手だったのですが、このロンドンのイメージぴったりに、実際に学校をポジショニングしにいったことです。まずは、シティのイメージよろしく、Finance志向の学校としてのブランディングを初期のころは行いましたし、多様なバックグラウンドをもつ学生も売りにしました。もちろん、学生ですから、エンターテイメントも充実しているLondonの価値を売りにしました。なんといっても、キャッチコピーが、”London Experience, World Impact”ですから。いや、なんとも言い当てて妙なり。

たとえば、ケンブリッジやオクスフォードといったイギリスの超名門大学はいったいどれだけの長い歳月をかけて、その名を世界に轟かせることに成功したか。それはそれは長い年月です。また、ハーバード、スタンフォードといった大学も、その大学としての長い歴史を通して、その名前としてのブランド価値を高めていき、今日のパーセプションが築かれていると思うのです。

他の名門大学が何百年とかけて築いたブランド力を、Londonというフレーズを学校の名前に取り入れたことで、一夜のうちに、手に入れたといってもいいかもしれません。

London Business School. 秀逸なネーミングこそが、これだけ短期間のうちにトップスクールの仲間入りをした起爆剤になったのです。Londonのコトバのもつ意味を名前に取り込み、実際にそのコトバのもつ方向性で学校をつくっていたことが、結果として、良質な教授陣および優秀な学生などなどを集めることに成功しているのではないかと思うわけです。

たかがコトバ、されどコトバ。企業のブランディングや商品のネーミングにすぐに応用可能な学びではないでしょうか。

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