2009年5月30日土曜日

「おばけ いしゃ」から学ぶターゲティング

息子が気に入っている本で、「おばけいしゃ」というのがあります。ご存じでしょうか?もしかしたら、子供の頃に読まれた人もいるかもしれません。こんな物語です。

閑古鳥が鳴いているあるお医者さんが、一つ目小僧の目を直してあげたのをきっかけに、おばけからの評判がぐんとアップしたのです。そこで、おばけ専門の、「おばけ医者」と名乗るようにして、次から次へのとおばけの患者さんが集まってきて、めでたしめでたし、というお話。


これぞ、マーケティングで言うところの、顧客のターゲティングの神髄を言い表しているといえます。マーケティングでは、まず、マーケットを顧客のニーズが同質ないくつかのセグメントに分割し、そのうち、どのセグメントを狙うか、選択する必要があり、この選択を、ターゲティングとよく読んでいます。

しかし、面白いことに、コンサルティングの中で、「御社のターゲットセグメントは誰ですか?」と聞くと、歯切れの悪い答えが返ってくるケースが多いように思います。

“うちはマスをとりにいこうとしているから、どこっていうわけじゃない”
“お客さんで多いのは、○○な人ですね、ただうちはそういう人に限っているわけではないから”


その根底には、マーケットを分割して、そのうちの1つを選ぶなどという作業をしたら、狙える顧客の数が減って、売上げが経ちにくくナルじゃないか!という潜在的な恐怖心が働いているように思います。絞りたくないという感情です。

それはそうです、顧客のをセグメントをして、1つを選ぶということは、その残りをばっさりと「捨てる」ことになるわけですから、なんとももったいないことをするもんだという気持ちにもなります。

特に、日本の大企業は、一億層中流の経済発展の中で成長してきているので、誰もが均質で、誰もが同じようなニーズを持っているという価値観を今だにひきづっているのかもしれません。

ここで、指摘したいのは、マーケティングでサラっと語られるセグメンテーション、ターゲティングを断固として実施するにあたって、それを拒否する「感情」を克服しないと、じつは前に進めない企業、部門、企画担当者もいるということです。

そこで、この「感情」を克服するのに、冒頭で紹介した絵本「おばけいしゃ」はとても有効なのではないかと思うわけです。そう!おばけに顧客を絞ることで、逆に商売繁盛という理屈を小さい頃からすり込めば、まずはマーケティングの第一歩をクリア。

顧客を絞ることでなぜ商売繁盛になるのか?

それは、顧客を絞ることで、その商品が誰のためかが分かりやすくなるというのがまず第一。たとえば、単純な話しで、新聞の折り込みチラシの内容は、ほとんどのみなさんは見たとしても、覚えていないでしょう。ただ、そのチラシに「30代独身男性限定!」と書いてあったらどうでしょうか。少なくともそのセグメントは、何らかの注意をひくはずです。

要は、顧客を特定してあげることで、その人向けにコミュニケーションが行えて、結果的に、その特定の顧客には認知してもらえやすくなる、という原理です。

もうひとつは、こちらの方が大事かもしれませんが、顧客を絞ることで、その顧客のニーズに即した商品開発ができるという点。百貨店が衰退する一方で、ZARAが繁盛する原理です。みんなにフィットする商品はダメで、あるセグメントの固有のニーズにフィットする商品だけが、生き残れる時代になってきたともいえます。

そして、なんと言っても、ターゲットセグメントを絞ることで、社内の求心力が高まることは見逃せません。ありとあらゆるリソースがそのセグメント一本に向けられるのですから、今までよりも確実にいいものができないわけがありません。

息子の絵本に見る、きわめてパワフルでシンプルだけど、じつは実践が難しいマーケティングのベーシックスでした。

教訓:絞るからこそ、繁盛する。

Crossroad Arts~アート展覧会の作品たち(その2)

今回、プロのアーティストに参加しただくこともできました。Wayne Chisnall氏です。アマチュアとプロのごちゃ混ぜ展覧会でしたので、本来ならば大変失礼にあたるところを、快く出品いただいたことに感謝したいと思います。








2009年5月29日金曜日

オープニングは、Classical Recital

芸術だけでなく、音楽、それもクラシカルなものをLBSにもってこようではないか、そんな発想からはじまって、このアート展覧会のオープニングイベントとして、小さなリサイタルをチームで企画しました。

突然雨が降り出すロンドンの天気ですが、少々リスキーでしたが、LBSの中庭にグランドピアノを持ち込みました。これは、結構インパクトが大きかったようです。


そして、まずは、我らのクラスメイトにして、プロのピアニストによるピアノ演奏で、静かに幕開けです。



そして、Deanによるスピーチで開幕し、続いてこの不況下に関わらず、スポンサーしてくれたNOMURA(野村證券)の挨拶。


その後は、Royal Music of Academyによる演奏。ピアノ、フルート、バイオリンの音色が美しい。 その一人は、日本人!1日15時間練習するという彼らの演奏は、やはり聞いていて心地よい。風が強く、また途中小雨がぱらつくという悪環境のもと、よく演奏をしてくれました。


ビール200瓶、ワイン50本、ソフトドリンク100本、おつまみ200人分がみんなの胃袋へと消えていきました。計200人ほどがリサイタルに集まってくれました。

LBSは、Finance、戦略、アントレがウリのビジネススクールで、その上、他のロンドン大学との連携もそれほど強くないため、とてもビジネス色が強いのです。だからこそ、こうした音楽、それもクラシカルな音楽をもってくることで、LBSに新たな「花」を添えられればと願います。

2009年5月28日木曜日

Crossroad Arts~アート展覧会の作品たち

無事、展覧会を今週開幕させることができました。
今年は小さな一歩ですが、来年はもう少し大きくしたいなと思います。
40作品の中から私の気に入ったものをいくつか!



釘箱

字の大きさは、LBSのWebに出てくる単語の頻度!

なんというか、間近でみると独特のテクニックがスゴイ

巨大な力作-思わず吸い込まれそう

2009年5月24日日曜日

We are the STREAM D !

太陽の下でのBRAZILIAN BBQ


BRAZILIAN BBQ-ブラジルクラブ主催ラテンアメリカ勢はいつだって、元気。パーティやら、ゲストスピーカーイベントやら、サッカーイベントやら。彼らは、単に騒ぐだけでなくて絶え間なくイベントを企画し続けているのです。ラテンパワーには関心することしきりです。

今日は、天気は最高。燦々と降り注ぐ日差し。汗ばむ陽気。夏がやってきた!誰もがコートを脱ぎ捨て、Tシャツや半袖になって、日差しと戯れていました。バーベキューを食べつつ、芝生に寝転がったり、子供と追いかけっこをしたり、またはバレーボールを楽しんだり。



それにしても、5時間近く肉を食べ続けることになるとは!妻から「ヤバい」と言われつつ、赤みの牛肉をたらふく頬張る休日の午後となりました。ブラジルの肉は、基本、「赤身」。日本で言う霜降りと違って、肉は真っ赤。そう、油分が少ない分、恐ろしいほどガツガツと食べられてしまうのです。赤い汁がにじみ出しながらかぶりつく赤身の肉はジューシーで旨い!

2009年5月23日土曜日

“Dreamy LBS”

Exhibition の準備中に、ふと目にとまった絵がこれ。ポストイットで、手書きの殴り書きで、”Dreamy LBS”とタイトルが書かれていました。






プロではないので、ちょっとあどけなさが残る絵ですが、何とも色彩豊かなLondon Business Schoolの建物が描かれているではないですか。

薄紅の空を背景に描かれるLBSの裏側の校舎を描写しています。まだ早朝の朝焼けなのか、それとも夕暮れ時なのか。ある窓には灯がともっているので、おそらく夕暮れか。

日の落ちてゆく中、白亜の建物という無地のキャンバスが、見事なまでに彩られています。青、黄、緑、オレンジ、と多彩な校舎は、やはり、こうした人のぬくもり感のあるレンズを通さないと、出てこない。

Dreamy LBSに対する、Real LBSが次の一枚。なんという違い。 人の「見方」「見え方」の威力。



このアーティストが、LBSで過ごした万華鏡のような日々が、この色彩豊かなDreamy LBSとして表出してきているように思えてなりません。さらに、この夕暮れは、もうMBA 2年が終わり、修了へと向かう哀愁感を描いているのでしょうか。

自分の今LBSで過ごしている経験と、このアーティストのLBSに対する想いが、この絵を通して、交叉するようで、何とも心地よい気分にさせてくれる絵です。

素敵な絵画に出会いました。

LBS ART展覧会迫る


芸術心を養おう!芸術心を取り戻そう!

来週は、いよいよLBS芸術展覧会です。アートも30作品ほど集まり、なかなか見所満載です。プロのアーティストから学内のセミプロまで幅広く集まりました。今日、会場のFairbairnで、ほぼほぼアートの配置を終えてきたところです。

来週の火曜日17:30から、音楽を交えたオープニングイベントを開催します。Deanのオープニングスピーチを皮切りに、Royal Music of Academyによる野外演奏を聞ける予定!もちろん、飲み物と軽食も出ます。学校とNomuraがスポンサーしてくれたおかげで、無料です。

ロンドンの夕方、少し空気が涼しくなった夕刻、うららかで過ごしやすい天気の下、ビール、ワインを片手にクラシック音楽に耳を傾けるなんとも贅沢な時間を過ごせそうです。-天気がいいことを祈りましょう!


"水タバコ"と"アラビアンナイト"

シーシャをご存じでしょうか。シーシャとは、水タバコのこと。かなり前にエジプト人のカップルを家にお招きして食事をしたときに、エジプトでは、カフェ感覚で、水タバコをのむんだといっていたのを聞いて以来、いつか試してみようと思っていたのです。そんな水タバコを今晩は同期の、ロシア人と、香港系イギリス人と楽しんできたという、他愛のない話しです。

やはりロンドンは多民族都市なだけあって、ロンドンにはEdgware Roadとよばれるアラブ通りがあります。London Business SchoolからBaker Street駅から一駅、学校からは歩いていけるところです。そして、この通りの先は、あのOxford Streetに直結しているという、まさにロンドンのど真ん中にその通りはあります。

いわゆるChina Townに入ると、太字の漢字やら、赤い門やらに囲まれて、お、これぞ中華!と感じるのと同じようなインパクト、いや、でも中華街とは違ったテイストなのがEdgware Roadです。あらゆるところに、魔術的なアラビック文字が並び、多くの人はもちろんアラブ系民族がいる。そして、もちろん、その通りにあるレストランやら、喫茶店の多くで、水タバコが楽しめます。

軽く、アラビアンな夕飯を、食べるつもりが、巨大なラムにやや圧倒されつつ、格闘しながら、食べる。彼らは、きわめて大食いなのだろうか、いやものすごい量がくること。メインしか頼まなかったけれど、これで前菜やら、なんやら、デザートやらを食べたら、いったいどうなることやら。うれしいことに、価格はリーズナブル。


そのあとは、プカプカと水タバコを満喫してみる。私は実は仕組みはよく分かっていないのですが、高さでいえば50センチくらいの器具を使って、なにやらフレーバーのついたたばこを、炭でいぶって、それを水に通して、吸うというしろもの。友達や恋人としゃべりながら、はたまた一人で思索にふけりながら、ゆっくりと時間を過ごすわけで、まるで喫茶店で珈琲を飲むような感覚。



フレーバーは、リンゴ、グレープ、ミントなどさまざまなで、甘いフルーツ系が多いようです。ですので、この通りは、ぷかぷかとみな水たばこをやっているおかげで、歩いていると、どことなく甘い香りが漂ってくるのです。

友人は、これはニコチンが入ってないから健康に害はないんだ、と主張していましたが、果たして、ほんとうなのか?明らかにニコチンが入っているような気がしたのは気のせいでしょうか。その上、へたをすると、ずーっと1時間も2時間も吸い続けていることになるので、その間に吸引する煙の量は一体どれくらいになることやら。さらに、機器の性能なのか、かなり激しく「ぐーーーっと」吸い込まないと、煙が這い上がってこないので、その結果、一度に大量の煙を吸うことになる。

少しロジカルシンキングをしてみよう。

摂取するニコチンの量=①一回当りのニコチンの量×②一回当りの吸う総量×③吸う回数

だとすると、通常の喫煙に比べると、②はおそらく2から3倍、③は低く見積もって1時間吸うとすると、普通のたばこ1本の10倍?、①はよく分かりませんが、半分としても、トータルで、水たばこ一回は、たばこ15本くらいの計算になる?のでしょうか。ちょっと不健康的?

***

ロンドンのど真ん中で満喫したアラビアンナイトでした。

2009年5月22日金曜日

葡萄とチーズのハーモニーを楽しもう

ヨーロッパ人は、チーズを大量に食べます。日本人はその一方で、日常必需品のような感じでは、チーズを食べません。とくに、ヤギのチーズなど、少し強いチーズは、比較的敬遠されるのではないでしょうか。


先日、同じフラットに済んでいる家族で、夕飯をごちそうになったときもそんな話題になりました。この家族は、旦那さんがスペイン人、奥さんがフランス人で、子供が2歳半で男の子。子供がうちの子と近いので、同じような苦しみ、悩みを抱えていて、共通の話題が多くて、急速に仲良くなりました。


私も、チーズは嫌いなわけではないのですが、彼らのようにドカドカと食べるほどではない。そこで、この夫婦がおすすめしてくれたのが、葡萄と一緒に食べる方法。そう、早速そのときに試してみたら、これが素晴らしいハーモニーなのです。


このチーズ、ちょっときついなあ、と思っていても、はじめに葡萄を口に含んだあとに、チーズを食べると、なんと不思議、葡萄のさわやかさと、チーズの濃厚さが、見事な調和を見せてくれるのです。これは大発見でした。思わず、食後なのにも関わらず、ドカドカとチーズと葡萄をたらふく食べてしまった次第です。


そしてそして、これまた先日、クラスメイトに夜の授業の後に夕食に自宅に誘ってもらった際、前菜がなんと、葡萄とチーズを使った一品でした。この前菜は、さらに、はちみつとバルサミコ酢がまぶしてあって、なかなかの逸品に仕上がっていました。


細長くスライスしたチーズの上に葡萄がきれいに並ぶ

こんな身近なもの同士のコンビネーションが、新しい味の世界観を創り出すとは!もしかしたら、ビジネスアイディアも、身近なところにあるのかもしれない、そう改めて感じさせる夕べでした。

もともと、チーズはワインと食べるもの。チーズとフレッシュな葡萄も合わないわけがありません。あまりにも簡単に見事なハーモニーを楽しめるので、とても得した気分、そして人生が少し豊かになった気がしています(^^)

Asia Business Forum 2009



LBSのAsia Club主催によるAsia Business Forumに、最後のパネルディスカッションだけ参加。テーマは、"Asian Economy: Life after Crisis" でした。

メッセージとしては:
  • 危機のあとの回復フェーズでは、アジアの成長は他の国よりも高いだろう
  • 中国は、輸出型から内需牽引型への経済へと転換をはかりつつある

あたりでしょうか。

フロアはかなりの割合は、やはりアジアビジネスフォーラムだけあって、アジア人、それもおそらく中国人、香港人が多かったような気がします。

フロアから多かった質問は、主に、内需牽引型へ移行する際や、他地域を凌駕するような成長する際に乗り越えなければいけない壁は何か、といった内容でした。

みな、自分たちが岐路にたっているのは分かっているのですが、では果たして今後どう舵をとるべきか、そのあたりはまだまだアジア人自身、明確になっていないようです。

中国への関心度がきわめて高いと感じると同時に、中国単体をどうするか?という議論に終始しているのは気になります。

日本との関係、アジアのとの関係、世界との関係の中で中国の今後を議論する視点を忘れてはいけないのではないでしょうか。または、アジアという経済圏が今後、どう繁栄していくか、そんな観点も必要だと思います。

2009年5月20日水曜日

子供の学習法 vs. オトナの学習法

どうやらうちの3歳の息子は、先生のしゃべる英語が大体分かるようになってきました。まだべらべらしゃべるところは至らないのですが、まったく英語を教わらず、文法も誰も教えることもなく、5ヶ月間、英語の環境にさらされるだけで、ここまでくるとは、何とも羨ましすぎます。

彼の頭の中は、一体になにがおきて、そうなっているのか、明らかにオトナの学びの方法とは全く異なる次元のことがおきているのは間違いないといえます。じつは、うちの子は少し遅いくらいで、女の子はさらに早く英語を身につけてしまう。

それこそ、風呂の栓がきちっとしまっていて、耳から入ってきたことを片っ端から吸収している何ともすさまじい情報処理を頭で行っているに違いありません。子供の可能性というのは、やはり果てしないものがあると実感。

それに対して、オトナになってしまった私は、ぼーっとしていると、穴が空いたバケツのように、全く知識が貯まらない!

でも!オトナはオトナの学習法があります。そう、子供のような、受動的な学びのプロセスではダメで、きわめて能動的に「しかけて」いかないと身につかないのがオトナの学習法です。

新しい知を学んだならば、それを事例や過去の自分の経験と交信させることで、他人とは違う形で、自分なりにその知の意味づけをすることができる。自分の経験や知っている事例は、人によって千差万別だからこそ、この知の意味づけの仕方も人それぞれ、多様性がでてくるはずで、それがまた知の発展に貢献することでしょう。

さらには、自分なりに意味づけされた知は、進化された知であって、それを適用することで、今までは実現できなかったことが実現できるかもしれない。

そう、オトナの学習は、子供のように、バケツを水にためる方法ではなく、知の進化のプロセスであって、きわめて能動的で、知的好奇心の伴う素晴らしい営みなんだと、思って自分を慰めたいと思います。

2009年5月19日火曜日

プレゼンテーションのコツ~伝えたいことを聞いてもらう方法

実は戦略コンサルタントは、それほどプレゼンが上手ではありません。私が思うに、全般的にみて下手ということではないですが、だからといって、ジェスチャーを交えて、淀みなくかっこいい!これぞプレゼン!という感じのプレゼンテンターはそんなにいないのが実情です。というのが私の感触です。

プレゼン上手ということでいえば、むしろビジネススクールの教授の方がうまいかもしれない。学生にツマラナイと言われず、かつ斜に構えた質問を裁く中で、エンターテイメント性のあるプレゼンスキルが鍛えられるから、というのが私の見方です。

実際、たとえば、授業の後に、戦略コンサルタントがゲストスピーカーとして来たりすると、トーンとしてはパワーダウンするなあ、と感じることもしばしばです。もちろん、メッセージの内容は別の話しです。実務では、華麗なプレゼンが重視されるというよりは、伝えるべきメッセージをいかにきちんと理解してもらえるか、という方に力点が置かれていると、思うのです。

さて、そんな伝えたいことをきちんと伝えるための、プレゼンのコツとは何でしょうか。私も華麗なプレゼンができるタイプでは決してないのですが、職業柄多くのプレゼンを経験してきた中で、いくつかのコツを見いだしました。そのひとつが、これです。

プレゼンのイントロで、これから行うプレゼンの内容の中から、最も衝撃的で、かつ具体的なファクトをまずしゃべる

たとえば:

当初設定したターゲットセグメントでのシェアは5%なのに対し、ターゲットセグメントでないXXの層のシェアはなんと、20%あります。その理由について触れたいと思います。

作業の40%を占めるXXというプロセスでは、ほぼ半分の案件で手戻りが発生することが分かり、その結果として、およそXX円のコスト増になっているんです。


などです。

これがなぜいいかというと、その後のプレゼンにぐっと興味をもってもらえるからです。聴衆は、なるほど、この手の具体性があり、衝撃的な話しがこのプレゼンには入っている、と思ってもらえる効果があります。

よく見られるパターンは、そうした最も大事なファクトを出し惜しみして、言わないというやつです。言ったとしても抽象的に話してしまう。この話しはとてもインパクトがあるので、プレゼンの中で取っておこう、そんな心理でしょうか。でも、出し惜しみせずに、最初にしゃべっても、全く大丈夫です。一度しゃべったからといって、プレゼンの中でもう一度しゃべっても、二度しゃべっても、衝撃的、かつ具体的であれば、全く問題ありませんというのが個人的な経験です。

たとえば、テレビのCMはまさにこの手法です。その商品のもっとも際立つ特徴を、ありとあらゆるCGを駆使して、浮き彫りにすることで、顧客の注目を獲得しているわけです。「油汚れにJoy」で有名な台所用洗剤は、油が一瞬にして逃げる映像を使っていますが、あれはこの商品の一番衝撃的、かつ具体的なメリットを描写しています。この商品の最もいいところを知ったからといって、実際に商品を買ったあとにがっかりするかというと、そんなことはありません。これと同じ原理です。

プレゼンのイントロで、これから行うプレゼンの内容の中から、最も衝撃的で、かつ具体的なファクトをまずしゃべる。これはテクニックのようでいて、じつはプレゼンのエッセンスに関わっています。

まず、衝撃的であるためには、そのクライアントの最も大きな関心時、困っていること、気にしていることに刺さるメッセージでなくてはいけない。次に、具体的であるためには、ただの概念論ではなくて、地べたをハッて情報を収拾し、インパクトのあるファクトをあぶり出さなければいけない。

このプレゼンのコツは、単なるテクニックではあるのですが、これを実施しようとすると、上記のように、コンサルティングとしては本質的なことを考え抜かなくてはいけない、という意味において、なかなか重宝するのではないかと思っているわけです。

2009年5月16日土曜日

Tuckman Model チーミングの5つのステージ

コンサルティングをするとき、クライアントの期待値をコントロールするのが難しい時期が何カ所かあります。そのひとつは、コンサルティングを開始した直後から数週間ほど。なぜでしょうか?

クライアントはすぐに成果物を求める傾向にあるのに対して、既成商品をもたないわれわれとしては、その期待にはすぐには応えられないことになるからです。

プロジェクトの開始時期には、クライアント側には独特の雰囲気が醸成されているのが普通です。何かすぐに魔法の杖を出してくれるに違いないと思うクライアントとの期待。また、社内に大旋風を起こしてくれるのではないかという期待。社長直轄プロジェクトチームを編成して、プロジェクトチームメンバーの高揚感。

それに対して、われわれサイドは、プロジェクト開始時期、それとあわせて、いくつかのクイックヒットの提案、ワークショップの実施、社内クイックサーベイなどの共有などいくつかのアクションを取っていきます。また、プロジェクト初期の仮説構築が欠かせません。

とはいえ、この期待値ギャップには、もっと本質的な理由があることにあるとき気付かされました。

あるプロジェクトで、上司がこの理由を、クライアントに見事に説明したのが今でも印象的です。

リストラクチャリングのプロジェクトで、組織のサイズを四分の三にせざるを得ないという、トピックがトピックだけに、クライアントの従業員とは緊張感が走るプロジェクトでした。社長からは、この難題に取り組む割には、プロジェクトチームはちょっと静かすぎやしないか、とのお言葉。まさに、先の期待値ギャップが露呈した格好です。

この問いに対して、その上司は、ある組織行動のフレームワークを使ってその理由を説明したのです。そのフレームワークとは、Tuckman Model チーミングの5つのステージと言われるもので、ここロンドンビジネススクールの授業で再会を果たし、昔の旧友にあったかのような気持ちになったのでした。

このModelの5つのステージとは:

Forming(まずはチームの形成が大事)
Storming(変革を起こす)
Norming(新しい状態への定着化がおきる)
Performing(新しい状態で業績を出しはじめる)
Adjourning(ラップアップ)


“プロジェクトの成功には、チームのフォーミングの時期が必要。今はその時期なのだ。大きなStormingを起こすためには、欠かせない準備期間だ。”

まさにそのとおりで、コンサルタントと、クライアントとのメンバーとの結束というか、一体感がないまま、見切り発車したところで、途中でコンフリクトが大きくなってしまうだけ。期待値ギャップの本質的なところでは、チーム形成がまだできていない、と思うのです。そういった意味で、継続プロジェクトの場合は、この手の問題は経験しなくて済みます。すでに一度プロジェクトをやったことがあるわけで、お互い勝手が知れています。

さて、このきわめて重要なチーム形成の時期の典型的な失敗として、次の二つが指摘されています。

1.信頼感の不在
「時間を無駄にしない」という理由で、プロジェクトメンバー間の信頼感を築けないまま,ガンガンと、プロジェクトを見切り発車させてしまう失敗。

2.不明確な役割分担
“Formal roles are prescribed to members and are critical to the effective organization and potential effectiveness of a team” (Marbry and Barnes, 1980)

こうした課題を克服し、各メンバーのコミットメントを獲得するのが、このプロジェクトチーム運営の最初の目標、というのが理論です。

実際の、コンサルティングプロジェクトでは、チームチャーター(憲章)という形で、(われわれではなく)クライントチーム自ら、チームのゴール、マイルストン、役割分担、スケジュール、タスクなどをA4一枚にまとめてもらい、経営陣に発表してもらうこともあります。コミットメントの確立です。

このTuckman Modelの5つのフェーズをみると、リストラクチャリングプロジェクトを思い出すと同時に、クラインアントの期待値コントロールについて考えさせられます。思い出深いフレームワークのひとつです。

同僚と話す内容の60%もがただの繰り返し!

LBSのLynda Gratton教授がフィールドリサーチの結果、なかなかショッキングな発見しています。それは、いつも仕事をしている同僚との会話のなんと60%!がそれまでに話した内容だというのです。毎日毎日、同僚と、顔を合わせて、そして、同じ仕事をしていると、やはりどうしても会話も同じ内容になってくる、もしくは、互いの主義主張を確認しあうというのはよくある話しです。それをこの6割という数値が物語っています。

これでは、イノベーションは生まれにくいよね、だから、いかに境界を越えてStrangerと出会うかが肝になるというのが、Gratton教授の指摘。逆に、イノベーションは、よく信頼できて、気心もしれた仲間とのディカッションから生まれるのではないか、という仮説は、実証的に支持されていないそうで、過去のイノベーションをみても、適度にStrangerとの遭遇をいかに作るかがカギというわけです。

コンサルティング会社のように、プロジェクトベースでの仕事の進め方は、Strangerとの遭遇がある程度担保されます。コンサルティング会社の場合、プロジェクト毎に、メンバーが入れ替わります。また、クライントも変るとなると、ほぼ働くメンバー全員がかわるということもよくあります。じつは、これはこれで、初めのチームの立ち上げがけっこうチャレンジングなのですが、チャレンジングだからこそ、新しい刺激が生まれるのも事実です。

一方で、長期にわたってプロジェクトが続く場合、お互いの気心が知れてくるので、恐ろしくチームの生産性が上がってきますが、それと同時に、脳への刺激、クリエイティビティが落ちてきます。やはり、何事もバランスが大事です。

また、留学する前のいくつかのプロジェクトは、どれも外部のエキスパートとの協同作業でした。外部の人材を取り入れたバーチャルなチームで働いていたのですが、これもまた、Strangerとの遭遇に有効です。外部パートナーは、自分たちがもっていないナレッジをもっているので、こちらとしても大きな学びになりますし、その学びから大きく発想が広がることもあります。

その他にも、Strangerとの遭遇を創り出す方法は、いかようにもあると思います。

その昔、日本の製造業が強い!と言われていた80年代は、QCサークルが盛んで、部門横断的に問題解決にあたっていました。さらには、業界を越えた問題解決が盛んだったと聞きます。今でいう異業種交流会なのでしょうが、各企業が現場の製造現場の問題をもちよって、問題解決をしていました。これは、最強でしょう。自社だけに限らず、他の企業、産業のノウハウも借りながら、問題解決してしまうのですから。

Strangerとの遭遇は、つくりだすのは難しくはないのですが、人間どうしても居心地がいいところを求めてしまうもの。何もしていないとStrangerとの遭遇度は落ちてきてしまう。企業も、チームも、個人も、定期的なStrangerとの遭遇度のチェックが欠かせないなと思います。

2009年5月14日木曜日

アジアビジネスフォーラムに日本がいない?

最近は、各リージョンをテーマにした、カンファレンスが軒並み開催されています。このあいだは、インドをテーマにしたカンファレンスがありました。

Annual India Business Forum Conference“I N N O V A T I V E I N D I A: CREATING VALUE & OPPORTUNITIES”

また、今週の土曜日は、アフリカ、来週はアジア、再来週は、ラテンアメリカというように、ここ最近ホットな地域をテーマにしたイベントが目白押しです。

Annual Latin American Business Forum
“Continued Growth in Turbulent Times”

Africa Day Conference
"Investment Climate in Africa: Navigating the Global Downturn."

The Asia Business Forum
"Inside Asia: Prospects & Challenges"


ところが、アジアビジネスフォーラムに日本企業が参加してないではないですか!Asia Clubがおそらくメインになって主催しているカンファレンスだと思いますが、このクラブに属していなかったこともあって、ノーマークでした。ちょっと反省。

中国、マレーシア、タイ、バングラデュ、シンガポールなどなどの会社からスピーカーがくるようです。

アジアでは、群を抜いて存在感があるはずの(と思っているだけ?)日本企業は、このフォーラムに出てもいいのではないか、というか、出ておくべきなのではないかと思います。「日本企業から誰かでれない?スポンサーシップとれない?」という話しがあってもよさそうですが、あまり存在感がないということでしょうか?

早速、Organising Committeeと話して、来年は、「ぜひJapanも巻き込もうよ」と話すものの、ふと思うのが、こういう場に、誰が呼べるのかとふと疑問がわいてくるのも事実。

英語でディスカッションがガンガンできて、かつ少なくともロンドンにこのタイミングでいらっしゃるグローバル企業のエグゼクティブというと、かなり限られるなあというのが率直な印象なわけです。 以前は、LBSには、グロービスの堀義人氏がいらっしゃっているようです。ぜひもう一度きていただけないものかと思います。

2009年5月13日水曜日

FAQ; 何で君たちはアメリカ人と仲がいいの?

これは、私がロンドンにきて、ヨーロッパ人に何度か聞かれた質問です。

日本人は何でアメリカ人と仲がいいの?

その心は、本来、アメリカと仲良くできるはずがないのに、何で仲がいいのか、おかしいではいか、です。第二次世界大戦の終盤に、原子力爆弾を2度も落とされた上、かつその後はアメリカの支配下におかれたのにも関わらず、なぜあんなにベッタリな関係なのかと。

ときには、聞いてはいけない質問を聞くような雰囲気で、「もし答えたくなかったら答えなくてもいいよ」という前置きをしながら、慎重に聞いてくる人もいます。

私個人としても全くといいほど、アメリカには反米感情を持ち合わせていなくて、たしかにどうしてか、と改めて考えてみて、じつは私自身よく分かっていないのですが、次の2点を、答えるようにしています。

1. 徹底的な親米教育が施されている
やはり教育の威力は計り知れない。私たちは、文部科学省の指導要領の下、徹底的な親米教育を施されていることを認めなくてはいけないでしょう。

戦後すぐに、教科書で、米国に不利になるような記述はすべて削除。私も小学校、中学、高校と、アメリカについて、歴史の授業で、ネガティブなことは一切教えられていないことに気付かされます。原爆は、悲惨な結果を生みだしましたが、その悲しみの矛先は、アメリカには向けられず、戦争そのものに向けられました(向けさせられました?)。原爆ドームといえば、反戦活動の象徴ですから。

逆に、アメリカは「自由を求めた国」として、ポジティブな描写がされているわけで、アメリカに対する憬れ心をくすぐっています。日米関係の悪いことは教えられず、アメリカに対するいい面は教えられた人が、どうして反米感情をもてようか、という論です。

2. 領土への侵略がなかった
アメリカは戦後、日本の国家中枢に入り込み、ありとあらゆる制度設計に関与しましたが、ひとつしなかったことがあります。それは、日本領土への物理的な進出です。

ナショナリズムを煽るような侵略は、いつだって、領土奪回がその根底にありますが、日本の場合は、じつは領土そのものが奪われた経験はないのは大きいと思います。

いまも世界におきている民族紛争のほとんどは、領土が確実に絡んできています。いわば、領土=アイデンティティのようなところがある中で、幸い日本は、領土奪われることによるアイデンティティ危機を経験していないわけです。領土という、民族にとってきわめて神聖な領域にアメリカが戦後、タッチしなかったことも、反米感情を日本人に抱かせなかったひとつの理由ではないかと思うわけです。

***

歴史が国民感情に及ぼす禍根については、日本人は激しき脳天気ですが、その一方で、ヨーロッパは奪い、そして奪い返す略奪の歴史。私たち日本人が、あまり反米感情を抱かないことに疑問をもつヨーロッパ人をみていると、ああ、やはりヨーロッパには、日本人には推し量ることができない複雑な感情が底辺に横たわっているんだなあと感じます。

2009年5月12日火曜日

MBAディレクター、顧客の声を聞く

ビジネススクールの学生は、2つのとらえ方がよくされます。ひとつは、原材料というとらえ方。ビジネススクールは、ある意味で工場であって、良質な材料(=学生)を調達し、それに付加価値(MBAの経験)をつけて、市場(=ジョブマーケット)に売っています。もうひとつは、顧客というとらえ方。学生は、1,000万円近い莫大な授業料を払っているお客様という考え方です。

私が通っていた日本での大学院と比べると、ここでは、学生を顧客と捉えている姿勢が感じられます。顧客の声を聞くことには大変熱心で、授業ごと、イベントごと、カリキュラムごとに、サーベイ、サーベイ、サーベイの依頼のあらしで、少し辟易するのですが、その中でもひときわ存在感を放っているのが、Stream Meetingなるものです。

Stream Meetingは、簡単に言えば、MBAプラグラムのディレクター(統括責任者)と、キャリアサービスのヘッドが、クラスにやってきて、学生の意見を聞くという顧客とのダイレクトな接点の場。このセッションは、各学期に数回くらいで、毎回1時間半の設定ですが、必ずといって良いほど、時間をオーバー!しています。

というのも、意見を聞くといっても、人間とは不思議なもので、ここは良かった!という声は、大体そこそこで終わり、むしろ、学生の間に貯まっていた不満、または、こうした方がいいという声が、ドーッと噴出し、MBAディレクターはそれを裁いているうちに、あっという間に時間が過ぎるというパターンです。

何がディスカッションされるのでしょうか?

1. 学校イベントのアップデータ
校舎の改装工事の行方、新しい学位プログラムの動向、ランキングに関する動向、などなど最近の学校行事がアップデートされます。

それから、今までのStream Meetingで出てきた改善要望について、どういうアクションをとっていて、それがどこまで進捗しているか、そのアップデートもされます。たとえば、今年はStrategic Problem Solvingという問題解決のコースが不評だったので、教授を変えました、こういう風にカリキュラムを変えました、といったことが共有。

2. キャリアサービス
とくに、今年はジョブマーケットがタフで試練を迎えているのが、キャリアサービス(日本でいえば、就職課?)。そこのヘッド、ダイアンからのアップデート。

キャリアサービスがとってきた求人数は、昨年比で、なんだかんだといって、6割増しということで、この大変なときに大した門だなあと関心。サマーインターンのポジションがとれなくて、感情的になる学生もいるので、このあたりはコミュニケーションが欠かせないでしょう。

また、かなり些細な注文も学生からつく。キャリアサービスニューズレターなるものが毎週発行されているのですが、それが読みにくい!とか。細かい。

3. アカデミック
一番時間がかかるのは、MBAの授業に対するフィードバック。学生の間になんというんでしょう、クオリティスタンダードのようなものがあり、それを下回ると、一気に不満が噴出するという感じです。たとえば、出た意見は、たとえば、Operationsの工場見学。なんで工場見学は発電プラントなのか、と。機械をみるだけで、全然つまらんじゃないかと。案の定という感じです。または、あの教授はここがダメ、いやいや、けっこういいぞ、などと、教授の評価も意見交換される。

多くの場合、改善要望は、すぐに改善できることは多くはなく、翌年に持ち越しになってしまうわけです。では、意味はないかというとそうではないと思っていて、「顧客の声」をじっくりと聞いている感が出る、または「ガス抜き?」という意味で、組織行動論的な効果があります。また、プログラムディレクター自身が、4クラスすべてに接するのは、多くの時間を割かれるでしょうが、生の声を吸収することができて、いいことだと思います。

いまや、このセッションも当たり前になってしまいましたが、初回のときは、「こういうことやるんだ」とちょっと新鮮だったのを思い出しました。

2009年5月9日土曜日

3歳児はインターネットがお好き



我が子は、3歳児にして、パソコンが大好き。自分で起動したり、終了したりすることもできます。Youtubeで、いつの間にか動画などを自分で探し出して、ブツブツいいながら、ずっと見続けています。ABCの歌や、トーマス機関車がお気に入り。

特に、教えたわけでもなく、オトナの仕草をみたり、ただひたすら、トライアルアンドエラーを繰り返したりしながら、習得する子供の学習能力はたいしたものだと、舌を巻いています(ただの親バカ?)。

子供の将来の可能性を育むため、少しの時間の間、好きにパソコンを遊ばせています(言い訳か?)。

「ハイコンセプト」を書いたダニエルピンク氏は、その書籍で、コンセプチュアル・シンキングの重要性を説いています。要は、新しいコンセプトを考える力、右脳の力がこれからの時代には必要だと主張しています。

そのダニエルピンク氏に、「小さな子供がいるのだが、どうやって育てたらいいか?」と質問し、答えてもらったことがありました。

その答えは、子供の可能性を阻害してはいけない、子供の将来を決めつけてはいけない、というメッセージでした。ただあるのは、親は子供を後押しすること、なのです。

こんなメッセージをさすが、コンセプチュアル・シンキングを提唱しているだけあり、見事な比喩で説明してくれました。たしか、こんな回答だったと思います。

今はSEOエンジニア(当該ウェブサイトを検索した結果上位に表示させるための技術)は花形な仕事だけど、果たして、あなたが子供だった頃、そう20年前に、いや、10年前にも、この仕事の存在すらなかったに違いない。

あなたの子供が将来就く職業は、今は姿形もないかもしれないのだから、今からこの子は、弁護士だとか、なんとかに向いているなどと決めつけるのは愚の骨頂です。


オトナの想像力をかけ離れて、時代は変化していくのを「ガツんと」再認識させられたと同時に、このメッセージは、確実に、私の子育て観に影響を与えてくれました。

B-Schoolは、リーダー“教育”というよりリーダー“支援”

ビジネススクールは、リーダーを育成するのが役目と標榜していますが、実際のところどうなのでしょうか?私は、LBSの経験から、ビジネススクールの役目は、“リーダー教育”というよりは、むしろ、“リーダー支援”だなと最近思っています。

リーダーに成りたい人がビジネススクールに通い、リーダーが育成されるのではないという、なんだか当たり前の話しなのですが、逆にリーダーとして活躍するためのリソースはいくらでもあるというのが、ビジネススクールだと思います。

そもそも、ビジネススクールへの選抜のプロセスを見れば明らかで、その選抜の最も重要なクライテリアが、「リーダーとしての素質」が挙げられています。最近のビジネスウィークの記事「Make Your Leadership Case for B-School Admission」でも、More than ever, business schools want applicants with leadership skillsとあります。

入学のためのエッセイでは、過去にどういうリーダーシップを発揮したか、ビジネススクールに入学したとしたらどういうリーダーシップを取りたいと考えているか、将来はどのようなビジネスリーダーになるか、を書くことで、アドミッションにリーダーシップポテンシャルがあることを示すことになります。

リーダーとして、こう活躍したい!だからこういう経験を磨きたい、こういうスキルを磨きたい、というのがないと、いくらでも漫然と過ごせるのがビジネススクール。一方で、たとえば、不動産界でリーダーを目指している私のクラスメイトは、「ロンドンビジネススクールは今までのところ、得たいと思っているものをすべて与えてくれているんだ」と言っています。

リーダー“支援”の具体的な中身はというと、次の4つです。そこから何を得るかは自分次第。これをどう活用するかは、自分次第。私も残りの期間をムダにしないように、自戒をこめてしっかりと日々を過ごしたいと思います。

1.アカデミックを通したスキル習得。戦略、マーケティング、組織行動、ファイナンス、などなどのビジネススキルの習得。

2.課外活動による関心領域の深掘。さまざまなクラブ活動をオーガナイズしたり、イベントを企画したりしながら、リーダーシップやチームワークを練習。

3.キャリア支援。リーダートラックにのるためのキャリアスキルの習得、ジョブ・ポジションの獲得

4.人的ネットワーク構築。いわゆる人脈の獲得。卒業生のネットワークへの生涯を通じたアクセス。クラスメイト、インターンシップのときの付き合い、教授陣とのコネクションなど。

リーダーに成りたい人がビジネススクールに通い、リーダーが育成されるのではなく、もともとリーダーのポテンシャルがある学生を選抜し、いくらかの武器をあたえて、またジョブマーケットに放出しているのが、ビジネススクール、と感じています。そういう意味で、ビジネススクールは、リーダー支援というわけです。

2009年5月7日木曜日

Youtubeが授業を変える

マーケティングの世界を大きく賑わせているYoutube。教育にも大きなインパクトを与えています。

ビジネススクールの教室は、Lecture Theatreといって、文字通り訳せば、”講義用劇場”になっています。円形に学生の机が配置され、その中心で講師がレクチャーをする。そして背後には、2つの大きなスクリーン、および可動式のホワイトボードがあります。



私が体験した今までの講義の中で、ビジネススクールのレクチャーの違いのひとつは、「動画」の多用です。全面にある二つのスクリーンを使用して、どのクラスでも,必ずといっていいほど、動画がレクチャーの中で使われます。

そして、その動画のネタとして、多く活用されているのが、Youtubeの動画です。Youtubeのインパクトは、こんな教育の現場にも広がっているのです。もちろん、DVDや、ケースに付随する動画を見ることがありますが、多くの場合、教授はYoutubeの動画を見せてくれます。

たとえば、イノベーティブなアイディアを発想する会社として、有名な会社としてIDEO社がありますが、そこでの発想法を知るには、百聞は一見に如かずなわけです。そう、Youtube上にのっかっている動画をみるのが手っ取り早い。次の動画は、スーパーのカートをリデザインしようというプロジェクトから



その動画、どういう風に使うのか?

というのも、下手をすると、ああ面白いドラマをみた、というだけで、確かに面白いのですが、教育上の効果はないかもしれない。エンターテイメントと教育の狭間に揺れるのが動画の活用につきまとう課題です。

さて、レクチャー時間内で動画を使う場合、次の3つの使い方があります。

導入。ケースの主人公への感情移入をもたらすために動画を活用する。たとえば、ビジネスモデルをより深く理解したり主人公のキャラを理解したり。ケースの前提条件や舞台設定をリアルに把握するために、図表や文章だけでは表現できない部分を動画で理解を深める

深堀。ディスカッションが架橋に入ってきた段階で、また新たな視点を提供するために、動画を見せる。たとえば、まったく違う意見をもつ人のインタビューを聞いてみたり、何らかさらなる議論の刺激になるような動画を見せるというもの。長引く議論のまったり感をリフレッシュさせる効果もあるかもしれない

シメ。授業のKey Take Away=学びをより印象づけるような動画を最後に流す。たとえば、有名なリーダーのコメントや映画の一こまが考えられます。先生がまとめをするというより、右脳に働きかける動画にそのシメをしてもらう

また、これからは、ケースを読ませる代わりに、動画ケースを使うのもあるかもしれない。何らか、ドキュメンタリーを見てもらった上で、授業でディスカッションをしたりと、動画を使った授業のバリエーションはいくらでも考えられます。

スピーカー:IMFが解説する金融危機と景気回復

"Crisis and Recovery: Lessons from the IMF World Economic Outlook"と題するゲストスピーカー・イベントに参加しました。

The Economics Subject Area, in cooperation with the Global Crisis Group of the International Growth Centre, are delighted to invite you to an event with the IMF to present their latest World Economic Outlook. Their presentation will focus on how economies normally recover from downturns, how this is influenced by financial factors, and how the financial problems in the OECD nations are transmitted to emerging markets. Ravi Balakrishnan and Prakash Khannan will base their presentation on Chapters 3 and 4 of this report. Lucrezia Reichlin and Hélène Rey will act as discussants, and the meeting will be chaired by Richard Portes.

Timings are as follows:

12.00 – Registration in RCOG foyer
12.30 – Presentation with Q&A
13.30 – Event ends

***

ひとつ。わずか1時間のイベントでしたが、その進め方が二重丸。まず、IMFによる解説、それに対抗する形でLBSの教授がショートプレゼンをするというサイクルを、テーマを代えて2回回すというもの。

テーマを明確にした上で、解説→それに対する突っ込みという流れなので、パネルディスカッションのように、議論があっちやこっちや、行かずにとても分かりやすい、かつ、知的応酬を見ることができるわけです。

内容としては、何となくそうだよね、と思っていることを、きわめて定量的、実証的に証明してみせてくれたというもの。検証しているメッセージとしては、たとえば:

-今回の危機は、金融危機と世界同時不況という2重のインパクトがあるため、一段と深刻である
-このような危機は、回復に通常の経済不況より時間がかかる

などなど。まあ、そうだよね、というものですが、過去の経済不況数百件を丹念に紐解いた分析結果が紹介されています。

そのほかに、面白いファインディングスとしては:

-金融危機に端を発する特別な不況の場合、財政政策は有効だが、金融政策は有効ではない
-一般的に経済不況の際には、金融政策は有効だが、財政政策は有効ではない

もし、これが真だとすると、今回は、財政政策はいいが、金利を下げるといった金融政策は全くもって有効でないということになります。

日本の例で考えても、90年代終わりから、量的緩和政策をとりつづけたものの、なかなか貸し渋りが治らなかったことから考えても、この話は整合します。

日本人の海外MBA留学動向から何が見えるか?

アゴス・ジャパンは、おそらく日本の機関でもっとも、MBA留学動向に詳しいと思います。各種ビジネススクールの説明会にトップ自ら出席し、地道に最新動向を集めている姿勢は、大変好感がもてます。

Youtubeで検索をしていたら、アゴス会長の横山氏のこんなメッセージを発見。私たちの代の留学生動向について、簡単にサマリーしていますが、これを聞くと、「大丈夫か、ニッポン」とまたしても思わざるを得ません。



-ハーバード、スタンフォードなどの上位20校への出願者数、入学者数ともに25%前後減少
-上位校への2007年入学者が170名ほど、2008年入学者が140名ほど -やはり減少
-出願者のボリュームと合格者のボリュームはほぼ比例する
-インド人の出願者数は日本の10倍、中国は日本の4,5倍
-この比率を考えると、日本は、出願さえすれば、合格率が高いグループ
-出願者が減って、合格率が下がった理由は:
その1.1年スクールへのシフト2年生が多いトップスクールへの出願者が減少
その2.日本人にとって難易度が増したTOEFLへの英語対策に時間がかかっている
その3.就職に通用する英語力が求められて庵、日本人に不利になってきている


経済大国2位の国にしたら、なんとも少ない。インドは、日本の10倍出願しているんです。さらに恐るべきコトに、日本独特の企業派遣という大きなバックアップがあっての話しでることは忘れてはいけません。もし、このバックアップがなかったとしてら、ますますもって、日本人は、外に出て行っていないことが分かります。(なお、2009年出願者については、2008年とあまり変らないとか)

よく、MBAはそもそもあまり役に立たないからいいではないか、という声もたしかにあります。そんな2年も仕事をしないで、どうすんの、という声もあります。いまや差別化しづらいMBAをとらなくてもいいんじゃないの?という声もあります。

しかし、私が気にするのは、これは、MBAの価値を見抜いて、日本人の留学生が減っているのではなく、ましてや少子化の影響でもないと思うからです。

単純に、すなわち、グローバル志向度が、他国に比べて明らかに低くなっているシグナルだと思うからなんです。

一方で、なんだかんだといいつつ、グローバルに対する憧憬は、いまだにもちあわせていて、たとえば、最近の書籍大前研一氏の「グローバルリーダーの条件」という本が出ると、さっとアマゾンの上位に食い込む。

別にMBA云々ではなく、グローバル志向度が落ちているというシグナルだとすると、ますます世界中の若者は世界を舞台に戦っているのにどうするというのだろうと、自戒の念をこめて思います。

最近思うのは、MBAの善し悪しの議論はとりあえず、置いておいて、世界の人と交流し、日本を外側から客観視するという、その理由だけにおいて、さっさとMBA取得を奨励するのはどうだろうかと思うことがあります。なんだかんだいって、安全な環境下で、グローバルな世界を垣間見る機会がMBAですから。

2009年5月5日火曜日

おすすめの選択科目;Shadowing Project

Shadowing Projectという、マネージャー/リーダーに朝から晩まで張り付いて、リーダーシップについて考察する選択科目があります。素晴らしい選択科目です。

~パンフレットより~
The shadowing project is one of the most valuable learning experiences on the MBA. Students will spend up to one week observing a manager at work. By drawing on past research and logging behavioural data, they will attempt to build an objective profile of the manager’s style. With data in hand, their end goal is to write a report about the shadowed manager.

と謳われているように、別にレクチャーもなければ、感動的なオチもない科目で、一見つまんなさそうですが、リーダーシップという極めて抽象的で曖昧なスキルに対して、あるリーダーの一挙手一投足を追うことで具体的なリアルな事例に基づいて、内省できるという意味で、とてもオススメです。

~パンフレットより~
The Benefits To Students
The shadowing project allows students to:
1 Observe the challenges faced by contemporary managers
2 Appreciate the real world of managerial work by testing academic theories against observed data
3 Develop a deeper understanding of the relationship between managerial style and organisational context
4 Reflect on leadership values

The Benefits To Managers
The shadowing project is an opportunity for managers to:
1 Learn about their own management style in the context of the organisation
2 Develop an understanding of their communication and networking skills
3Work on their personal development plan
4 Reflect on their effectiveness as a manager and a leader

上記の追加で、学校へのベネフィットとしては、ロンドンビジネススクールの宣伝に自動的になるという隠れた恩恵があります。数年前までは、この科目、必修科目だったので、毎年、300人以上の学生が各企業のトップ、エグゼクティブに「私はロンドンビジネススクールの学生です。しかじかこういう理由でシャドイングさせてください」といえば、これぞ、立派なFace to Faceの広告というものです。

さて、私は、ロンドンビジネススクールのプログラムを統括しているバーキンシャー教授をただいまシャドー中です。なぜ、彼をシャドーすることになったかというと、いくつかの理由があります。

まずビジネススクールのマネジメントは、多様なステークホルダーがいて、企業以上に難しいだろうと思ったこと。その困難さを垣間見たかったこと。ビジネススクールには、生徒、教授、企業、アルムナイなどさまざまなステークホルダーがいます。さらに、企業のように、組織系統が明確ではなく、実行がきわめて難しいのが大学組織の特徴です。

また、人材育成に興味をもっているので、ビジネススクールとしては、どんな形で企業、もしくはビジネスパーソンに価値提供しているのか、内部の視点からみてみたかったこと。

それから、単純に、バーキンシャー教授の研究分野が面白いと思ったこと。彼は、マネジメントのイノベーションについて研究を進めていて、Management2.0などのコピーを使いながら、啓蒙活動、研究活動、教育活動をしています。

実際、マネージャーやリーダーの動きは断片的には見てはいても、朝から晩まで、そして、一件一件処理するメールまで見ていく経験はそんなにできることではなく、個人的には多くの発見があります。

たとえば、やはりWebのリーダーシップやマネジメントスタイルに影響を与える度合いは計り知れなく、古典的なリーダーシップ論では、全くカバーされていません。簡単な例をあげれば、eメールです。

ほとんどのマネージャー/リーダーは、21世紀の今、メールを使って多くのマネジメントを行っています。プラン作り、モニタリング、動機付けなどなど、その範囲たるや、すごいものがあります。

しかし、ここで問いです。果たしてその使い方は、最適化されているでしょうか?ミーティング、電話、立ち話などなどいろいろなメディアがある中でメールの使い方は、最適活用されているでしょうか?-このあたりのトピックは、また別稿で。

Shadowing Projectは、良いところも悪いところも含めて、「人の振りを見て我がふり直せ」がコンセプトの風変わりだけれども、実りのある科目です。

2009年5月4日月曜日

海外旅行;ホテルではなくアパートメントのススメ

最近、海外旅行に行くときは、ホテルではなく、アパートメントを予約することがあります。アパートメントは、普通のフラットを短期の滞在者用に貸し出してくれるというもの。

基本的にフラットなので、ホテルみたいに手狭感はなく、広々としていて、キッチンや洗濯機なども備わっていて、じつに重宝しています。

うちみたいに、小さな子供がいると、何かと小回りが利いて便利です。急に子供が「おなかすいたー」と騒ぎ出しても、近くのスーパーでパスタや冷凍食品を買っておけば、レンジでチンしてすぐに出してあげることができる。

アパートメントのメリット
1. そこに住んでいる錯覚を味わえる
2. ホテルに比べて、部屋が広い
3. 現地のスーパーで買い物をして(これもひとつの体験!)、アパートで料理ができる
4. お金がかからず洗濯もできる

アパートメントのデメリット
1.ルームサービスはない(ことが多い)
2.部屋の掃除、タオルの交換もない(もしくは少ない)
3.フロントの営業時間が短い(ことが多い)
4.もちろん、スパやジムなどはない(ことが多い)

今回、クラクフで泊まったアパートメント- Antique Apartment- は、素敵でした。外見は、まるで表参道の同潤会青山アパートのよう。色褪せた鼠色なコンクリート壁に植物が張り付くなんとも渋い味わい。



エレベーターは、手で外扉と内扉を開けたり閉めたりするもので、薄い暗闇の中をガタガタといいながら昇降するのです。オペラ座の怪人の地下回廊に向かうようで、ゾクゾクとする。こういうのもいいなあ。


部屋の中は、扉を開いた瞬間に時空を越えた感覚を覚えるほど、近代的に改装されていて、明るく快適そのもの。換気がイマイチなところもありますが、サンルーフが備わって朝などは燦々と太陽が降り注ぎ、「ああこのままずっとここに居たい」と思わせるアパートメントでした。



さて、気になる料金ですが、ややよいホテルとそれほど変わりません。 一泊一部屋1万5000円弱?

そういうわけで、総合的に見れば、アパートメントは、大いに今後も利用していきたいと思っています。

びっくり!どこの国が日本を旅行してくれてるか?

そもそも、どこの国の人が日本を訪れにきているのだろうか?少し興味本位でグーグル検索をして、以下の円グラフを発見。


<主要国の訪日旅行者の割合>


http://www.geocities.jp/nezimaki_tokyo/kankou/kuni.html

なんと、訪日旅行者のじつに3割が韓国から、続いて2割が台湾、1割が中国、5%が香港というなんとも偏った分布になっています。要は、韓国30%、中国35%でこの2カ国でもって、65%も占めているのです。

なぜかと考えてみると、韓国も中国も、日本の若者文化がわれわれが想像する以上に浸透していて、若者を中心に日本へのアコガレのようなものがあり、それがこれだけの吸引力に結びついている。

若者文化というとかっこいいですが、ぶっちゃけていえば、マンガ、ドラマ、J-Popのこの三つの神器が普及しています。

たとえば、中国では、日本のドラマは、即座に中国版Youtubeもどき上で、アップされます。それも、中国語字幕付き。ボランティアグループがわんさかいて、すぐに字幕をつけてくれる。なんと、東京ラブストーリーは、中国では、まさにラブロマンスのバイブルとして語り継がれているそうです(中国人の友人談)

Japan Tripに参加した中国人女性は、藤原紀香のファンで、神戸をみんなで訪れたときは、ひとり別行動をし、わざわざ藤原紀香が結婚式をあげた生田神社に参拝にでかけるほど熱の入れよう。

台湾も同様で、このあいだ、台湾人が「これ貸してあげる、すごい泣けるから」といわれて、貸してくれたDVDは、キムタク主演のHeroでした。


そんなわけで、政治的には、小競り合いが絶えない韓国と中国ですが、若者の文化という意味では、しっかりと日本は彼らのハートをつかんでいることがよく分かります。この世代がビジネスリーダー、政治リーダーになった暁には、また日中、日韓、日台関係は、またあらたな展開を見せることでしょう。

馴染みの薄い国ポーランドはどんな国?

今回週末に訪れたポーランド。その首都ワルシャワは、日本人ならば、ワルシャワ条約機構という歴史用語によって、誰もが知っていますが、意外と日本人そして日本とは馴染みの薄い国です。

たとえば、日本人の旅行先ランキングでは、地球の歩き方の調査によると、30位以内には出てきません。日本からだと直行便もない上、ヨーロッパに行くならば、イタリア、フランス、オーストリア、イギリスなど軒並み魅力的な国が周りに多ため、旅行先のショートリストにのってこない。

ジェトロ発表のポーランドの輸出額によれば、2007年には 1,396億5,413万ドル。一方、日本への輸出額はそのウチ、わずか3億ドル。その逆も似たようなもので、日本との経済的交流はまだまだという感じです。

とはいえ、この経済不況で一時的にダメージを受けていますが、この数年の急進はまさに目を見張るものがありました。GDPは安定的に6%成長、失業率も2005年の頃には20%に迫るほど高かったですが、金融危機前で8%ほどまでに減少。

やはり、2005年にEUに加盟し、名実と共に、旧共産圏が脱し、西側諸国のひとつになったことが大きな分水嶺でした。もともと、産業基盤があったポーランドに、自動車メーカーを中心に、多くの企業が積極的に投資し、職にあぶれた人を吸収していきました。

今回は、クラクフしか訪れなかったのですが、そこで感じることは、みな若い!ということ。さすが、35歳以下の人口が全体の50%(日本は38%)、25歳以下が全体の35%(日本は24%)の国です。若さが漲る感を肌で感じ取ることができます。

さらに、その1週間前に訪れたローマとの比較でいえば、圧倒的に英語をみな話せるのも見逃せません。普通にレストランのウェイトレスまで英語をちゃんと話すのですから。教育レベルは高いと聞いていたポーランドですが、こんな英語レベルにもその一端を垣間見ることができます。そして、もてなし感というか、誠実さ度合いも高い。

これからのチャレンジは、揺れ動く自動車業界に大きく依存するポーランドがその影響をどう受けるか。また、ユーロへの移行をスムーズに行えるかでしょう。

とはいえ、豊富なハイレベルな若者人材を抱え、そこそこの産業基盤があるポーランドは、大きな国としての方向性を見誤らず、EUの中でのポジショニングを確立しつづけることができれば当面心配なさそうです。

2009年5月2日土曜日

悲愴;アウシュビッツで感じる歴史の重み



「働けば自由になる」と書かれたアウシュビッツ収容所入り口。その空虚な言葉にとらわれの身となり、恐怖におびえる日々を送っていた人々は何と思っていたのだろうか。

死の壁-銃殺に日々使われていた壁。文字通りこの壁の前で、何千人以上の人が命を落としている。どこか、ここの空気は冷やかで、ピンと張り詰めたものがあるのは気のせいであろうか。うちの子供は、展示場には入らず、外を歩いているだけであったが、めずらしく「おウチかえりたーい」と連発していたのは、何かを感じていたのだろうか。


青空と新緑の中に、周囲ののどかな風景とは裏腹に、無機質に点在する収容所群。ここだけは、観光客の表情は、口を結んだままけわしい。だれもが、みな55年前のあまりにも壮絶な出来事に思いを馳せているようだ。ここは、負の世界遺産に登録されている、やはり特別な場所なのだ。


ここは、アウシュビッツから数キロ離れた第二収容所地帯。アウシュビッツでは足りなくなり、ここにさら広大な死の工場がどこまでも建設された。

この「死の門」をくぐる行き着く先は?その中でも、生き延びた人達もいる。彼らの特徴を抽出した研究があるそうだ。その特性とは、「愛」「美」「夢」を持ち続けた人なのだそうだ(Wikipedia アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所の項を参照)。とても印象に残ったので、ここに転載しておくことにする。

人間の特性を探る研究に、アウシュヴィッツという過酷な状況のなかで「愛」「美」「夢」のいずれかを持続した人が生き残った、と結論付けるものがある。以下は、その研究を紹介した佐久間章行著『人類の滅亡と文明の崩壊の回避』p.218-219からの引用。


第二次大戦の勝利者である連合軍は、あの過酷なアウシュビッツの環境で最後まで生を維持させた人間の特性に興味を抱き調査団を組織した。その報告が正確であるならば、生命の維持力と身体的な強靭さの間には何の関係も見出せなかった。そして生命を最後まで維持させた人々の特性は次の3種類に分類された。第1の分類には、過酷な環境にあっても「愛」を実践した人々が属した。アウシュビッツの全員が飢えに苦しんでいる環境で、自分の乏しい食料を病人のために与えることを躊躇しないような人類愛に生きた人々が最後まで生存した。第2の分類には、絶望的な環境にあっても「美」を意識できた人々が属した。鉄格子の窓から見る若葉の芽生えや、軒を伝わる雨だれや、落葉の動きなどを美しいと感じる心を残していた人々が最後まで生存した。第3の分類には「夢」を捨てない人々が属した。戦争が終結したならばベルリンの目抜き通りにベーカリーを再開してドイツで一番に旨いパンを売ってやろう、この収容所を出られたならばカーネギーホールの舞台でショパンを演奏して観客の拍手を浴びたい、などの夢を抱くことができた人々が最後まで生存した。

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破壊から生き残った街:ポーランドのクラクフ

第二次大戦でドイツに徹底的に破壊されたポーランド

その破壊から奇跡的に難を逃れたのが、旧ポーランド王国の首都クラクフ
中央市場広場
快晴に恵まれ、歩くと汗ばんでくる夏の陽気
観光客も賑わう市場で、観光シーズンの到来を感じる
バベル城の廻りをゆく
目を離したスキに立ち入り禁止区域に
芝生を独占して優雅に走る・・・
誰かとめてくれー
時代を渡って増築を繰り返しつつ
多くの建築様式の複合体となったバベル城大聖堂
でもどこか調和していて、それがこの建築の一番の魅力
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