これは、私がロンドンにきて、ヨーロッパ人に何度か聞かれた質問です。
日本人は何でアメリカ人と仲がいいの?
その心は、本来、アメリカと仲良くできるはずがないのに、何で仲がいいのか、おかしいではいか、です。第二次世界大戦の終盤に、原子力爆弾を2度も落とされた上、かつその後はアメリカの支配下におかれたのにも関わらず、なぜあんなにベッタリな関係なのかと。
ときには、聞いてはいけない質問を聞くような雰囲気で、「もし答えたくなかったら答えなくてもいいよ」という前置きをしながら、慎重に聞いてくる人もいます。
私個人としても全くといいほど、アメリカには反米感情を持ち合わせていなくて、たしかにどうしてか、と改めて考えてみて、じつは私自身よく分かっていないのですが、次の2点を、答えるようにしています。
1. 徹底的な親米教育が施されている
やはり教育の威力は計り知れない。私たちは、文部科学省の指導要領の下、徹底的な親米教育を施されていることを認めなくてはいけないでしょう。
戦後すぐに、教科書で、米国に不利になるような記述はすべて削除。私も小学校、中学、高校と、アメリカについて、歴史の授業で、ネガティブなことは一切教えられていないことに気付かされます。原爆は、悲惨な結果を生みだしましたが、その悲しみの矛先は、アメリカには向けられず、戦争そのものに向けられました(向けさせられました?)。原爆ドームといえば、反戦活動の象徴ですから。
逆に、アメリカは「自由を求めた国」として、ポジティブな描写がされているわけで、アメリカに対する憬れ心をくすぐっています。日米関係の悪いことは教えられず、アメリカに対するいい面は教えられた人が、どうして反米感情をもてようか、という論です。
2. 領土への侵略がなかった
アメリカは戦後、日本の国家中枢に入り込み、ありとあらゆる制度設計に関与しましたが、ひとつしなかったことがあります。それは、日本領土への物理的な進出です。
ナショナリズムを煽るような侵略は、いつだって、領土奪回がその根底にありますが、日本の場合は、じつは領土そのものが奪われた経験はないのは大きいと思います。
いまも世界におきている民族紛争のほとんどは、領土が確実に絡んできています。いわば、領土=アイデンティティのようなところがある中で、幸い日本は、領土奪われることによるアイデンティティ危機を経験していないわけです。領土という、民族にとってきわめて神聖な領域にアメリカが戦後、タッチしなかったことも、反米感情を日本人に抱かせなかったひとつの理由ではないかと思うわけです。
***
歴史が国民感情に及ぼす禍根については、日本人は激しき脳天気ですが、その一方で、ヨーロッパは奪い、そして奪い返す略奪の歴史。私たち日本人が、あまり反米感情を抱かないことに疑問をもつヨーロッパ人をみていると、ああ、やはりヨーロッパには、日本人には推し量ることができない複雑な感情が底辺に横たわっているんだなあと感じます。
2009年5月13日水曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
3 件のコメント:
若杉さん、いつもためになるブログをありがとうございます。
ところで、今回のお題については、「沖縄」をうっかりお忘れでないかなと、思いました。
沖縄は、日本に復帰するまでアメリカに占領されていました。
しかし、基地に対する反対は根強いですが、さて、アメリカ人に対しては反感が根強いかというと、そうでもないように見えます。
とても不思議な気がしています。
(え)
若杉さん、いつもためになるブログをありがとうございます。
ところで、今回のお題については、「沖縄」をうっかりお忘れでないかなと、思いました。
沖縄は、日本に復帰するまでアメリカに占領されていました。
しかし、基地に対する反対は根強いですが、さて、アメリカ人に対しては反感が根強いかというと、そうでもないように見えます。
とても不思議な気がしています。
(え)
どろろさん
おっしゃるとおりです。沖縄はご指摘のとおりですね。
領土侵略はなかったというのは正しくなく、領土の大半が侵略されたことはなかった、といわなければいけませんね。
そうですか、沖縄の方々も反感はそれほど根強くないのですね。
コメントを投稿